オタクの迷宮

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主役2人の繊細な演技に注目★Netflix「ONE DAY/ワン・デイ」


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 Netflixでリミテッド・シリーズ「ONE DAY/ワン・デイ」鑑賞。

 

 1988年、7月15日スコットランドエディンバラ。卒業式の夜の大学構内は、学生たちが飲めや歌えの大騒ぎ。英文科の最優秀生エマ・モーリー(アンビカ・モッド)は、大学一の遊び人、デックス・メイヒュー(レオ・ウッドール)から声をかけられます。「一緒に飲まない?」「……別に構わないけど?」涼しい顔をして答えたエマでしたが、内心はドキドキ。デックスは実は4年間ずっとエマにとって密かな憧れの人だったから。デックスにとっては一夜限りの恋でも、エマにとっては重大事件(^_^;)ルームメイトのティリーの後押しもあり、すっかり舞い上がったエマは、キスされそうになれば「歯、磨いてくる❗️」と部屋を飛び出し、ベッドに押し倒されれば「ちょっと待って❗️音楽かけてから」とカセットを引っ張り出す始末(笑)初めは呆れたデックスでしたが、一晩中一緒にいてベッドで何もせずお互いについて語り合うという初めての体験❓️と、自分や周囲の人間にはないエマの誠実さは、彼の心深く残ったようで、この一夜をきっかけに、2人の、友情とも恋愛とも形容し難い不思議な交流は、20年の長きに渡って続いていくこととなります。


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※何もいたさず❓️卒業パーティーの一夜を過ごしたあと、翌朝大学近くの丘「アーサー王玉座」にピクニックに来た2人。性格も生き方も取り巻く環境も全く違うのに、なぜか互いに強烈に惹かれ合うのでしたが…。

 

 ドラマは、1988年7月15日を皮切りに、第2話では1989年、第3話では1990年…と、毎年7月15日に彼らがどう過ごしたかを描き、その描写を20年に渡り丁寧に紡いでいきます。エマとデックスの恋愛模様と同時に、その時代時代の英国の社会事情や、人々の価値観の変化が同時に浮き彫りにされていくのも興味深いですが、何と言っても見どころは、主役2人の繊細な演技❗️


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※2人の紆余曲折の恋が始まるスコットランドの古都、エディンバラ。(From Pixabay)

 

 エマとデックスって、上手くいくかと思いきや、なかなかそうならないんですね〜(^_^;)特に、互いにギリシャでバカンスを過ごす第4話、エマが勇気を振り絞って「大学時代ずっと好きだった」と告白したのに対して、「ボクだって君のこと好きだったよ」と、満面の笑顔で答えるデックス。ああ、その時のエマの嬉しそうな顔。でも次の瞬間、デックスの「大抵の女の子のことは好きになっちゃうんだけどさ」という返事を聞いた時エマの表情は一瞬にして曇って…😢(また、プライドの高い彼女は「傷ついた」と素直に口に出せない)またね、それを見たデックスの(あれ❓️俺またなんかやらかしちゃった❓️彼女のこと傷つけた❓️)って、叱られた子どもみたいにションボリしちゃう様子が、何だか憎めなくて、愛おしくて。……でも、このギリシャのバカンスをきっかけに、交わりかけていた2人の運命は、再び遠く離れていくことになります。

 

 原作は、英国の作家デヴィッド・ニコルズの「ワン・デイ」。アン・ハサウェイ主演で映画化もされましたが(2011年「ワンデイ〜23年のラブストーリー」)、ヒロインは小説も映画も白人女性。Netflixのドラマ版では、インド系英国人のアンビカ・モッドをあえて起用することで、デックスのキャラ設定……軽薄な享楽主義者に見えてそのじつ、人を決して差別観で見ず、優しさとある種の脆さを併せ持っている…をより説得力のあるものにしていたと思います。だからこそ、彼の軽はずみな失言に度々怒りながらも、どうしても彼に対する想いを捨てきれないエマの心情も、私たちはより深く理解できるしくみ。

 
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※ヒロイン・エマを演じるのは、アンビカ・モッド(左)。この方、リミテッド・シリーズ「産婦人科アダムの赤裸々日記」で、主人公アダム(ベン・ウィショー)の後輩研修医役を演じてましたね。

 

 

 「ワン・デイ」とは、文字通り「ある1日」(ドラマの中では、毎年来る7月15日)を指しますが、一方で「(将来)いつか」という意味もあります。初めて共に過ごした夜、享楽的で計画性がないデックスに対し、生真面目なエマは「それで将来はどう考えているの❓️」と何度も問いかけます。……しかしそのずっと後人生の半ばにおいて、誰よりも人生設計を真面目に考えてきたはずのエマを襲う、「想定外の」悲劇。人生とは、なんと皮肉なものでしょうか。もはや老境に差し掛かったヲタクにとって、これまで(……何事も、思い通りにはいかないものだ。これが人生なんだ)と無理やり自分自身に言い聞かせたことは何度もあったけれど、まだまだ人生半ばだった若いエマにこんな悲運が降りかかるなんて…😭


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 しかし人は、何があっても、命ある限りは、その生を全うしなくてはならない。2人を見舞う悲劇と、それに続く絶望と再生の物語は、観ている私たちに、そんな人生の真実を静かに語りかけている気がします。