ヒューマントラストシネマ有楽町にて、東京国際映画祭正式出品作品「雨の中の慾情」(監督・片山慎三)鑑賞。
作品の主人公は、貧乏漫画家の義男(世の趨勢に逆らって売れない漫画を描き続けている設定は、もちろん原作者であるつげ義春の投影でしょう。演じるのは、成田凌)。彼は貧しい人々の住む吹き溜まりのような「北町」の、今にも壊れそうな古ぼけた家に住んでいます。怪しさムンムンな(笑)大家の尾弥次(竹中直人)は、なぜか義男に小説家を名乗る伊守(森田剛)という男を引き合わせます。2人はある日、離婚したばかりだという福子(中村映里子)という女性の引っ越しに駆り出されます。白い胸元をちらつかせながら艶然と微笑む福子に、一瞬で義男は心を心奪われてしまいます。一方、何とか小説家として売れたい伊守は、北町のPR誌を発行して、自作の小説を掲載するという企みを思いつきます。またもやその手伝いに駆り出される義男。そんなある日、広告代理店の男に資金を持ち逃げされ、すかんぴんになった福子と伊守が義男の家に転がり込んできます。男2人、女1人の奇妙な同居生活が始まりますが……。
当初登場する地名や、どこの国とも特定できない風景、かなりぶっ飛んだ登場人物のキャラ設定や行動、脈絡のないストーリー展開からして、我々観客はおそらく主人公の妄想あるいは夢の世界の中で彷徨っているのだろう……と、最初から容易に想像はつきます。
※義男の想い人、福子(中村映里子)。妖艶な中に、どこか母性を感じさせる女性。
しかし映画の大半、「夢か現か幻か」ノスタルジックな異世界に揺蕩っていた私たちは、ラスト近く、極めて残酷で過酷な現実世界にいきなり突き落とされるのです。ヲタク的には、その衝撃があまりにも大きすぎて、上映が終了して1時間以上経った今も、かなり引き摺ってます(^_^;)てっきり、ビー・ガン監督の「凱里ブルース」や「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」みたいな作品だと思って、たまにニヤニヤしながら見ていたものだから……。(けっこう、コミカルな場面があるんですよ)まあでも、さすが「岬の兄妹」(2018)の片山慎三監督だよね。「岬の〜」の時は最初から最後まで凄惨なリアルをこれでもかと見せつけられて、しまいにはヲタク、スクリーンから目を背けたくなったけど。
ヲタクはつげ義春の原作は未読なので、片山監督が原作を忠実に具現しているのか、はたまた一つの映像作品として新たな世界を創り上げているのかはわかりませんが、現実(と覚しき)出来事の数々が、主人公の義男の夢の中でどのように歪曲されているのかを分析してみるのが、ヲタク的にはけっこう楽しかったですね。まるで、大学時代に読んだフロイトの著書「夢判断」のおさらいをしているみたいだった(笑)義男の幻想には、フロイトのリビドー説よろしく性的なイメージが繰り返されるのですが、彼の現実の姿を見た時に、初めてそのナゾが解けるしくみ。
成田凌、森田剛、中村映里子、3人の演技巧者のアンサンブルが素晴らしく、作品世界に私たち観ている者をぐいぐいと引き入れてくれました。特に成田凌はなんであんなに色っぽいんですかね。マツコ・デラックスが斎藤工を「顔面性器」って評したのは有名な話ですけど、ヲタクに言わせりゃ成田凌のほうがよっぽど…℃⇐№↸&✯☆✕@#$『(笑)