早速引き続きの順位発表です❗️
★第5位 Netflix「Outfit アウトフィット」
1950年代のアメリカ、シカゴ。小さな紳士服の仕立屋を営むレオナルド(マーク・ライランス)。彼は英国人で、サヴィル・ロウ(メイフェアにある有名紳士服店が居並ぶ通り)で腕を磨いた「裁断師」。彼は「ある事件」をきっかけに妻と娘を亡くし、ロンドンから逃げてきたという哀しい過去を抱えていました。彼は自身の卓越した技術にプライドを持っていましたが、哀しいかな当時のシカゴでは、決して安いとは言えないオーダーメイドの紳士服を買いに来る顧客はダーティマネーで稼ぐギャングばかり。そんな彼がある夜、マフィアの抗争に巻き込まれ⋯❗️
全編小さな紳士服店が舞台のワンショット映画です。数少ない登場人物が腹を探り合い、疑惑が疑惑を呼び、密室での息づまる心理戦を経た後に、あっと驚くどんでん返し。まるで上質な舞台劇を観ているかのような味わい。マフィアの抗争がテーマだというのに、最後まで派手なシーンは殆ど無く、会話だけで最後まで緊迫感を持続できたのも、主役のマーク・ライランスをはじめとして、シェイクスピアの舞台で鍛え抜かれたサー・サイモン・ラッセル・ビール、ジョニー・フリン等、英国の芸達者たちが勢揃いしたためでしょう。
一時の勢いは減速気味とはいえ、9位の「El Conde 伯爵」と共に、Netflixの底力を改めて見せつけられた作品。
★第4位 「墓泥棒と失われた女神」
1980年代のイタリア・トスカーナ地方。刑務所から出所したばかり(らしい)イギリス男アーサー(ジョシュ・オコナー)が列車に揺られ、山の中腹を不法占拠している自宅のバラックに戻ろうとしているところからストーリーは始まります。彼は木の枝を動かして遺跡を掘り当てるというダウジングの名手で、その異能を使ってワル仲間たちと古代エトルリア人の墓を次々と暴き、闇で売り捌いて小銭稼ぎをしていたようです。彼はどうしてそんな境遇に身を置いたのか❓️
恋人の死をきっかけに、古代の墓を暴いて次々と副葬品を奪うという、神をも恐れぬ所業を重ねていくアーサー。1度は慈悲深い神の御業に縋るかと思われた彼ですが、彼が求めているのは、生の歓びに溢れた世界ではなかった。果たして、彼の探す「失われたもの」とは……❓
目にしみるように美しいトスカーナの自然と眩しすぎる陽光。それと、アーサーの心の闇・魂の暗黒の対比が凄まじい。ひょっとして彼は、愛するエウリュディケを探しに禁断の黄泉の国に足を踏み入れたオルフェウスなのか❓アーサー演じるジョシュ・オコナーの、いつも何かに戸惑っているような表情と、目に見える事象のその先を見つめている虚無的なblank eyesが印象的です。
アーサーと共に、観ている私たちも生と死の世界を行きつ戻りつする、摩訶不思議な魅力を持つ作品。
★第3位 「チャレンジャーズ」
「恋愛」を描いたら右に出る者はいない、名手ルカ・グァダニーノ監督の最新作。ケガの為にテニスの世界チャンピオンの座を諦めなくてはいけなかった野心家の女(ゼンデイヤ)。彼女は自らの野望の為に夫(マイク・ファイスト)をマニュピレートし、夫の試合の相手となった元カレ(ジョシュ・オコナー)とも再び関係を持つが……。
出演者の1人、ヲタク激推しマイク・ファイストがいみじくも「ルカが興味を持っているのは肉体と汗だけ」と語った通り、恋愛覇者となるためには上っ面の優しさや思い遣り、社会通念なんてクソくらえ、強靭な肉体と相手を打ちのめすほどの汗まみれのエネルギーが必要なんだ……と言わんばかりのグァダニーノ監督の単純すぎる、しかし強烈な論理に打ちのめされます。
映画の半分はライバルの男2人のテニス試合。緊張感を否が応でも高めるのが、鬼才トレント・レズナー&アッティカス・ロスのテクノサウンド。現在、アカデミー賞(受賞式は2025年3月)作曲賞にノミネートされています。
マイク・ファイスト推しとしては、モノホンのテニス選手さながらに鍛え上げたギリシャ彫刻のような肉体で、テニスコートを縦横無尽に駆け回る姿と流れ落ちる汗を拝めるだけでも10回はリピする価値アリ(笑)
★第2位 「フォールガイ」
これはもう、作品の出来不出来とかカンケイなく、個人的に大・大・大好きな映画❗️
コルト・シーバース(ライアン・ゴズリング)は、当代きっての人気アクションスター、トム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)のスタントを長年務めるベテランのフォールガイ。しかし長年のスタント歴を通じて初めて冒したミスで、彼は大けがを負ってしまいます。プロのフォールガイとしてそれを恥じた彼は1度は引退を決意しますが、元カノのジョディ(エミリー・ブラント)が長年の念願叶ってアクション映画の監督デビューを飾ると知り、少しでも彼女の助けになりたいとアクション界に復帰しますが…。
※アクションの出来ないアクションスターの設定なのに、なぜかシックス⋯もとい、エイトパックを見せつけてくるアーロン・テイラー=ジョンソン。いやその、個人的には大歓迎だけど(笑)
コルトをはじめ、登場人物がみな愛すべき映画バカなのがイイ❗️(ハリウッドの「蒲田行進曲」だ 笑)顔も出ないのに映画のために命を張るフォールガイたちへの愛とリスペクトに溢れた作品。(監督のデヴィッド・リーチはスタントマン出身)そしてそして、全編を彩る懐メロの数々〜「ラヴィン・ユー・ベイビー」(キッス)、「見つめて欲しい」(フィル・コリンズ)〜に懐かしすぎて心抉られます😭
★第1位 「リアルペイン〜心の旅〜」
※ヲタク自身は「東京国際映画祭」で鑑賞。日本での一般公開は来年なので迷いましたが、あまりの感動に思わず⋯(笑)
ニューヨークに住むユダヤ人のデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)と、しばらく疎遠になっていた同い年の従兄弟ベンジー(キーラン・カルキン)が、最近亡くなった祖母の遺言で再会、祖母が以前住んでいたポーランドの家を訪ねるまでを描くロードムービー。
感受性が豊かで正直で、でもだからこそ様々な人生の痛み(ペイン)に対して耐性がなく、精神を病むまで追い詰められてしまうベンジーと、ストレスフルな仕事につき、家族も抱えて「生きるために」痛み(ペイン)をぎりぎりまで抑圧し、強迫神経症と不眠症に悩まされるデヴィッド。時には寄り添い、時にはどうしようもなく反発し合う複雑な関係性をユーモアを混じえて巧みに描き、また、2人の演技がもう……神がかっていました❗️2人の絶妙な掛け合いにくすくす笑い、人と人が真に理解し合うことの難しさと、わかり合えた時のかけがえない歓びに感動の涙を流す1時間半。監督・脚本・製作・主演を務めたジェシー・アイゼンバーグの才人ぶりには驚愕。
インディペンデント映画最高の賞と言われるサンダンス国際映画祭(第40回)受賞作で、日本公開は2025年1月25日と来年早々になりますが、心洗われる佳作。機会があったら是非❗️
★10位〜6位はコチラ🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻