オタクの迷宮

海外記事を元ネタにエンタメ情報を発信したり、映画・舞台・ライブの感想、推し活のつれづれなどを呟く気ままなブログ。

ドイツ人女優レオニー・ベネシュに注目❗️〜「セプテンバー5」


f:id:rie4771:20250220162640j:image

 相鉄線ゆめが丘駅前のシネコン「109シネマズ」で「セプテンバー5」鑑賞。

 

 1972年9月5日、ミュンヘンオリンピックの只中、パレスチナ武装組織「黒い9月」のメンバー8名がイスラエル選手村を襲撃、イスラエルの選手・コーチをその場で2名射殺、9人を人質に取って籠城しました。「黒い9月」は、イスラエルや西ドイツで拘束されているパレスチナゲリラや赤軍派328名の解放を要求するも交渉は決裂、人質を連れて飛行機でエジプトへ逃亡を図ろうとした犯人側と西ドイツ警察が空港で銃撃戦となり、犯人5名、警察官1名、人質は9名全員死亡するという大惨事となりました。

 

 その最悪なテロ事件の顛末を、当時オリンピックを生中継していたアメリカABC放送のクルーたちの眼から描いた作品です。当時のことですから、情報を得る手段は固定電話とテレグラム、無線のみ。ほんの数百メートル先の選手村で起きていることが皆目わからない。真実を掴もうとあらゆる手段を尽くすクルーたちですが、情報は錯綜し、現場は大混乱に陥ります。舞台は全編、当時の放送のブースのみ。我々観客もクルーたちと共に、次々と飛び交う情報に翻弄され、胃が痛くなるような緊迫感が続きます。

 

 当時ヲタクは高校生で、何か大変な、悲惨な出来事が起きた……という、うっすらとした記憶しかないのですが、この作品を鑑賞して一気にその当時に引き戻され、事件を追体験しているような感覚に陥りました。

 

 ティム・フェールバウム監督は、「自分もメディアの一員として、ABCのTVクルーたちが報道者として真実を伝える使命感と、「人質が殺害される現場を生中継してよいのか」という倫理観に引き裂かれ、苦悩する姿に興味を持った」と語っていますが、ヲタクが個人的に強烈に惹かれたのは、アメリカ人のTVクルーたちよりもむしろ、通訳としてABCに雇われたマリアンというドイツ人女性(レオニー・ベネシュ)。

 

 ナチス・ドイツ負の遺産を払拭し、平和に貢献する「新生ドイツ」を内外に示すため、西ドイツが総力を挙げて取り組んだミュンヘンオリンピック。彼女もまた、他の国民同様、母国の明るい未来を夢見てTVクルーに加わった。しかし彼女の夢と希望はテロリストたちによって無残にも打ち砕かれます。西ドイツ側の対応の悪さと交渉の失敗が惨事の要因とされ、ミュンヘンオリンピックは、後々「史上最悪のオリンピック」という烙印を押されることになったのです。

 

 西ドイツによる人質の救出活動が後手後手に回り、最悪の結果を招いた理由の1つに、テロ対策には全く不慣れな地元警察が事件を担当せざるを得なかったことが挙げられます。こういった状況の対応に最も適していると思われるドイツ軍は、第2次世界大戦の敗戦国として、法律により出動を禁じられていた為でした。「ドイツ軍は、法律により出動を禁じられているんです……」と語る彼女の苦渋の表情、胸が痛かった😭

 

 マリアン役は、歴史ドラマシリーズ「バビロン・ベルリン」で、ナチス突撃隊の恋人に騙され、ワイマール共和国行政長官の暗殺に関与して処刑される悲運の女性グレタを演じて強烈な印象を残したレオニー・ベネシュ。(「バビロン・ベルリン」は、ドイツ本国ではなんと70%の視聴率を上げたお化け番組です^^;)今作では、恋愛依存症で男性に翻弄されるグレタとは正反対の、有能な女性キャリアを演じています。英語も凄く流暢だし、これからハリウッド進出するかもしれませんね。


f:id:rie4771:20250220184737j:image

※知的で有能なキャリア・マリアン(上)と、運命に、そして男たちに翻弄され流転の人生を歩むグレタ(下…「バビロン・ベルリン」)。対極の女性を見事に演じ分けたレオニー・ベネシュ。

 

★レオニー・ベネシュが重要な役で出演しているドイツ・ドラマシリーズ「バビロン・ベルリン」。ヨーロッパ史好きな向きにはおススメ❗️


狂乱のドイツ・ジャズエージ〜『バビロン・ベルリン』シーズン1 - オタクの迷宮


サスペンスが加速する〜『バビロン・ベルリン』シーズン2 - オタクの迷宮


迫りくる時代の足音〜『バビロン・ベルリン』シーズン3 - オタクの迷宮