オタクの迷宮

海外記事を元ネタにエンタメ情報を発信したり、映画・舞台・ライブの感想、推し活のつれづれなどを呟く気ままなブログ。

魅惑のロマンシス・ミュージカル〜「ウィキッド ふたりの魔女」


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 相鉄線ゆめが丘駅直結のシネコン「109シネマズゆめが丘」にて、「ウィキッド ふたりの魔女」観賞。

 

 この映画は、魔法の国オズの小人の街マンチキンに「北の国の良い魔女」グリンダ(アリアナ・グランデ)が現れ、長い間オズで権力を振るい民を苦しめていた「東の国の悪い魔女」が、人間の少女(つまり「オズの魔法使い」のヒロイン・ドロシー)からかけられた水によって溶けてしまった……と小人たちに告げる場面から始まります(エメラルドシティに向かうドロシー、カカシ、ライオン、ティンマンの後ろ姿がチラッと映り、くすぶる煙の中にぽつんと「悪い魔女」の帽子だけが残っています)。しかし、「悪い魔女」の死を喜ぶ小人たちを見守るグリンダの顔には複雑な、悲哀ともとれる表情が浮かび……。群衆の中の1人の少女から「世の中にはなぜ悪い人がいるのですか?」と問われたグリンダは急に美しい顔を曇らせ、「とても難しい問題ね……。元々悪であったのか、それとも悪へと追い詰められたのか」と答えます。実はグリンダはかつて魔法の大学「シズ」で「悪い魔女」エルファバと同窓生であり、しかも当時は親友同士だったことが明らかになります。

 

 人間と動物、魔法使いが平和に共存して暮らす国「オズ」で、特異な全身緑色という姿に生まれついてしまったエルファバは父親から疎まれ、周囲から苛められ、孤立して育ちました。が、シズ大学に入学してからは、グリンダや他国の王子フィエロ(ジョナサン・ベイリー)、マンチキン出身のボグ(イーサン・スレイター)と友情を育て、さらには魔法学の教授(ミシェル・ヨー)からその魔法の才能を見出されて生きる自信を取り戻していきます。しかしその一方でオズの国内では、動物たちの様々な権利を政府が取り締まり始めるという不穏な動きが……。そんな折も折、エメラルドシティの宮殿に住む「オズの魔法使い」(ジェフ・ゴールドブラム)からエルファバに特別な招待状が届きます。オズで絶対的権力を持つ彼は、エルファバの魔力に興味を持ったようです。付き添い役のグリンダと共に、期待に胸を膨らませて魔法使いの宮殿に向かうエルファバでしたが、そこには恐ろしい陰謀が待ち受けていて……❗️

 

 圧倒的映像美、心躍る歌とダンス…久しぶりにハリウッドらしいミュージカル超大作登場です。……とは言え、元ネタとなった「オズの魔法使い」その他、昔々のハリウッド超大作に見られる、「悪」は常人と違った醜い外見をしているというステロタイプな価値観、あるいは善悪、男女、白人と有色人種、富者と貧者……という単純な二元論的思考には強烈なアンチテーゼを叩きつけているところがミソ。そういう意味ではとても「イマドキ」な作品と言えるでしょう。


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※イーサン・スレイター(左)とジョナサン・ベイリー(右)

 

 主演のWヒロイン、アリアナ・グランデとシンシア・エリヴォの歌声と演技が甲乙つけ難く素晴らしく、一方で共演の男性陣は、「オズの魔法使い」役ジェフ・ゴールドブラムの怪演は別格として、かなり影が薄くなってます(笑)快楽主義の放蕩者かと思いきや、独自の哲学を持ち秘めた優しさがあるかに見えたフィエロを演じるジョナサン・ベイリー(Netflixドラマ「ブリジャートン家」の男爵様❗️)も出てきたかと思ったらあっという間に退場しちゃうし(笑)……まっ、これは今流行りの女性共闘アクション……いやもとい、ロマンシス映画だからしゃーないか。


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※サスガの存在感。ジェフ・ゴールドブラム(左)とミシェル・ヨー(右)

 

 冒頭、「PART 1」の表示が出たのでイヤな予感がしてましたが(笑)ハリポタやファンタビよもう一度か…。ハリポタは完結したからいいけど、ファンタビは制作中止のウワサが…。ファンタビの二の舞だけは避けてね。気持ちの持って行きどころがなくなっちゃうから(笑)

 

 監督はかつて「クレイジーリッチ❗️」で初めて全員アジア人のハリウッド映画に挑戦、高い興行収入を叩き出したジョン M チュウ。今作品同様、監督のミューズとも言えるミシェル・ヨーがオーラ出しまくりでございました。

 

★今日の小ネタ……「ウィキッド」の元ネタ「オズの魔法使い」(1939年)…ハリウッドの闇

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※「オズの魔法使い」(1939年)で「西の国の良い魔女」を演じたマーガレット・ハミルトン(上…ビジュアルが「吸血鬼ノスフェラトゥ」に似てる…^^;)、「北の国の良い魔女」(下左…ビリー・パーク)とヒロイン・ドロシー(下右…ジュディ・ガーランド

 

 主題歌の「虹の彼方に」も大ヒット、ミュージカルファンタジーの代名詞ともなった映画「オズの魔法使い」。ヒロインのドロシーを演じた子役出身のジュディ・ガーランドは愛くるしいファニーフェイスで一躍スターダムに上り詰めましたが、ヲタク的にどうしても思い出してしまうのは、ジュディが子役時代にステージママだった母親から受けた虐待(思春期特有の女性らしい身体への変化を防ぐため、母親は「ヤセ薬」と称して彼女をアンフェタミン覚醒剤)、コーヒー、タバコ漬けにした)や、ルイス B メイヤーをはじめとして当時のハリウッドの大物たちの性接待を強要されていたこと。「オズ〜」に出演していた小人役たちからもセクハラを受けていた……と、元夫がバラしたこともありました。子供たちに夢と勇気を与え続けたジュディが実は、壮絶なハラスメントの被害者だったなんて、ゾッとするような話ですが……。そんなジュディの晩年を描いた映画が、「ジュディ〜虹の彼方へ」(2019年…ルパート・グールド監督)。ジュディ役を熱演したのがレネー・ゼルウィガーで、見事その年のアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。


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※「ジュディ 虹の彼方に」のレネー・ゼルウィガー

 

 まだまだ差別観は根強いにせよ、男女、白人と有色人種、富者と貧者など、二元論的な思考から脱却しようと前進をし始めているハリウッド。そんな映画業界の「今」を、ジュディは「虹の彼方」からどんな気持ちで見つめているのでしょうか。