相鉄線ゆめが丘駅直結のシネコン「109シネマズゆめが丘」にて「ロングレッグス」観賞。
時は1990年代アメリカ。オレゴン州一帯で父親が娘の誕生日に家族全員を斧で惨殺するという怪事件が多発、州全体を恐怖のるつぼに陥れていました。現場には必ず、独特の奇怪な文字で書かれた暗号文が残されており、文末には「ロングレッグス」という署名が……。事件の黒幕が「ロングレッグス」という人物だとすれば、なぜ彼は自身が手を下さずして殺人を犯せるのか⁉️何らかの呪術なのか催眠術なのか、はたまた一種の洗脳か……。事件を担当するチームの一員であるFBI捜査官リー・パーカー(マイカ・モンロー)は、シリアルキラーの行動の軌跡からいとも簡単に暗号文を解読し、犯人像をプロファイリングしたことから、周囲は(もしかして彼女は特殊能力の持ち主か⁉️)と訝しがりますが、じつはリーとロングレッグスの間にはある恐るべき過去が隠されていて……❗️
とにもかくにもこの映画の見どころは、最恐のシリアルキラー「ロングレッグス」を演じるニコラス・ケイジことニコケイの怪演ぶりに尽きると思うのですが、人形師たる彼の部屋には、1970年代ブリティッシュ・グラムロックの雄、Tレックスのフロントマン、マーク・ボランのポスターが貼られています。この映画のそこかしこに散りばめられた「ヨハネ黙示録」や「金枝篇」等キリスト教的考察や悪魔崇拝のメタファーについてはネットでも盛んに語られているのでここでは触れずに、もっぱらヲタクは「ロングレッグス」キャラとマーク・ボランの関係性について語ってみたいと思います。
※見れば見るほど、キモ怖いニコケイ(笑)
「ロングレッグス」惨劇の端緒となった1970年代、まるで徒花のように短く咲き誇ったグラムロック。(当時は悪魔の音楽と呼ばれており、ヲタクもさんざん母親から「ロックを聴くのは不良だけ」と罵られたもんです 笑)映画の中でロングレッグス(ニコラス・ケイジ)は車を飛ばしながらT.レックスの「Planet Queen」の1節…「空飛ぶ円盤が私を連れ去る。お前の娘をよこせ❗️まあいいさ、愛こそお前が望むもの…」と、がなり立てていますが、少女たちを洗脳し、魂を奪い、それを人形に封じ込めようとする彼のペドフィリア的な性癖がよくわかる場面になっています。…ロングレッグスの通り名は、金持ちのイケオジが陰ながらヒロインの少女を見守り、金銭的な援助をし、ついには2人は結ばれる……というジーン・ウェブスターの小説「足長おじさん(Daddy Longlegs)」から来ているんだと思います。あの小説、ヲタクは中学生の頃読んで全くハマらなかったけど(シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンに夢中だったから 笑)、改めて考えてみると、巷間言われているようなシンデレラストーリーっていうよりむしろ、そこはかとなくロリコン&パパ活の匂いがするんだよね(^_^;)
※ロングレッグスに洗脳され、悲劇的な最期を遂げる少女キャリー・アンを演じたキーナン・シプカ。出演シーンは少ないですが、強烈な印象を残します。
そしてそして、ラストに流れるはT.レックスの「Get It On」❗️
君はエロいオレの女
やせっぽちで華奢で
歯は※ヒュドラみたいに尖ってるんだ
※ヒュドラ(ギリシャ神話の中でヘラクレスが退治した9つの頭を持つ蛇)のイメージは、映画の中でもリーの妄想の中に繰り返しフラッシュバックのように登場します。
T.レックスのフロントマン、マーク・ボランは29才の若さで事故死し、永遠の伝説になっちゃったし、頭の良いデヴィッド・ボウイはグラムロックは若い時じゃなきゃできないことは十分わかっていて、「ジギー・スターダスト」の映画を撮影後さっさとグラムロックに見切りをつけてアメリカに渡っちゃった(^_^;)じゃあ、マーク・ボランやボウイになれなかったロングレッグスは❓️……深いシワに刻まれた肌に埋め込むように白粉を塗りたくり、猫なで声で少女たちに擦り寄ってその若い純粋な魂を吸い取るしかない哀れな男。とうに過ぎ去った美しさと若さに執着してモンスター化してしまった男の醜悪さと滑稽さを、ニコケイが小憎らしいくらい見事に演じてます。(偶然にも、ニコケイ自身もまた一時期T.レックスフリークだったとか…。)
ニコケイの神演技……いやもとい、悪魔的演技を観るだけでも一見の価値ありでしょう。彼に対峙するヒロインは、「イット・フォローズ」で得体の知れない「何か」に追われる恐怖を熱演、「新・絶叫クイーン」の異名をとるマイカ・モンロー。今作では絶叫するシーンはほぼ無く、不安と恐怖を無意識に抑圧するタイプの知的で内向的な女性を巧く演じています。
★今日の小ネタ……マーク・ボラン
※ロングレッグスの部屋に貼られているのは、T.レックスの代表作「The Slider」のポスターでした。
ロングレッグス(ニコラス・ケイジ)が崇拝するヒーローはT.レックスのフロントマンだったマーク・ボラン。彼はスピリチュアルやオカルトに凝っていた人で、生前何故か「自分は30才まで生きられない気がする…」とあちこちで公言していたとか。奇しくも彼が自動車事故で急死したのは、30才の誕生日のちょうど2週間前のことでした。遺作はアルバム「You Scare Me To Death 霊魂の叫び」。彼を死ぬほど怖がらせた「You」とは一体誰だったのか。近づいてくる死神の足音……❓️今となっては全て藪の中ですが。