オタクの迷宮

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ゴシック・ホラーを極めたロバート・エガース〜「ノスフェラトゥ」

ついに、ついに、ロバート・エガース監督の新作「ノスフェラトゥ」公開〜〜〜❗️今日は初日で、早速初回を観に行って参りましたよ、KINOシネマみなとみらい。

 

 エガース監督が、ドイツ表現主義時代の名作「ノスフェラトゥ」(監督 F.W.ムルナウ)をリメイクするというビッグニュースが飛び込んで来たのがちょうど3年前。ヲタクは元々ムルナウ版「ノスフェラトゥ」のファンだったし、「ウィッチ」(主演 アニャ・テイラー=ジョイ)、「ライトハウス」(主演 ロバート・エガース)、「ノースマン」(主演 アレクサンダー・スカルスガルド)を観てエガース作品に夢中だったから、このニュースに狂喜乱舞したことを覚えています。…で、新たな情報が入る度に興奮してブログの記事書きまくって、今数えたら、「ノスフェラトゥ」とエガース監督関連の記事だけで15もあったよ。どれだけ楽しみにしてたんだ、じぶん(笑)


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 ゴシック・ホラーの代表とも言える吸血鬼映画の魅力は「恐怖と美の融合」であり、吸血鬼にとって「血を吸う」行為は自らの命を繋ぐというよりはむしろ、求愛の表現と捉えられる……と常々ヲタクは思っているのですが、さすが「ウィッチ」や「ライトハウス」のエガース監督、それを大スクリーン上に極限まで高めてみせた❗️その証拠に、本作品は妙齢の美女(リリー・ローズ=デップ)が自ら「Come to me❗️」とノスフェラトゥ(ドイツ語で吸血鬼の意)を招き入れ、愛を交わした後に体を激しく震わせる衝撃的なシーンから始まります。つまりは、一方的に吸血鬼にストーキングされるか弱い美女であったこれまでのヒロインたちとは対極で、彼女は自ら吸血鬼の花嫁となったことが示唆されるのです。

 

 1838年、ドイツのヴィスブルグという名の架空の街。冒頭の美女の名はエレン・ハッター(リリー・ローズ=デップ)。彼女は結婚したばかりの夫トーマス(ニコラス・ホルト)と幸せに暮らしていました。ところが不動産業を営むトーマスは、カルパチア山脈(西のチェコから東のルーマニアまで連なる全長 1,500 km の山岳地帯)

にある自身の土地を売却したいという貴族オルロック伯爵(ビル・スカルスガルド)の不気味な居城に足を踏み入れた時から、2人の静かな生活は恐怖のどん底に陥れられることに…。トーマスの愛妻エレン(リリー・ローズ=デップ)は夫の留守中友人アンナ(エマ・コリン)の家に身を寄せますが、彼女は夜な夜な夢魔に苛まれるようになります。その夢は身の毛もよだつほど恐ろしいもので……。


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※英国イケメン揃い踏み❗️「妻は僕の留守を不安がっている。留守中妻を頼む」と、長年の友人フリードリヒ(アーロン・テイラー=ジョンソン…右)に最愛の妻を託すトーマス(ニコラス・ホルト…左)ですが、その後世にも恐ろしい惨劇が待ち受けていようとは…。



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ノスフェラトゥ(ビル・スカルスガルド…左)の磁力に、抵抗しながらも支配されていくエレン(リリー・ローズ=デップ)。

 

 しっかしエガース監督も「人外さん」好きだよね〜〜(^_^;)ギレルモ・デル・トロ監督とおっつかっつだわ(笑)ビル・スカルスガルドの演じるオルロック伯爵(ノスフェラトゥ)、外見は醜悪で恐ろしいのですが、何故か抗えない圧倒的なカリスマ的魅力を醸し出しており、ギレルモ・デル・トロ監督が造型した半魚人(「シェイプ・オブ・ウォーター」)やベールマン(「パンズ・ラビリンス」)と双璧をなすんじゃないか……と個人的には思いました。彼は「科学などまやかしの光に過ぎぬ。愛など、私の強大な力の前には塵同然」と、人間たちの無力さを嘲笑い、彼らの裡に潜む肥大化した欲望を餌に、次々と自らの奴隷と化していきます。ヒロインのエレンが、必死の思いで(妻会いたさに)オルロック伯爵の城から逃亡してきた夫に対して「(ノスフェラトゥのほうが)あなたより私を満足させてくれた❗️」って思わず口走るシーンには唖然としましたが…。いくらなんでもそりゃないだろ(笑)結局、エレンが最後にとった行動も、自らを犠牲にして街を救った……というよりもむしろ、自らの欲望、衝動に抗えなかったのだとヲタクは思ってる。ヲタクの読みが正しければ、エガース監督もよほどのペシミストだわ(笑)

 

 このオルロック伯爵役、最初はハリー・スタイルズがキャスティングされてたんだよね。ヲタクはその第一報を聞いた時、(どう考えてもハリーは無いだろ❗️)と内心突っ込んだんですが(笑)ビル・スカルスガルドの起用は大正解だったと思います。

 

 荒れ果てた古城、カルパチア山中でトーマスを迎えに来る無人の馬車、白い壁に映るノスフェラトゥの禍々しく黒い翳……等々、ムルナウ版をリスペクトしたかのようなシーンも多々あり、まさに美と恐怖の融合を堪能できる2時間。また、リアリズムを追求するエガース監督のこと、街を大量のネズミが走り回り(あれ、本物のネズミだったらしい。ヲタク推しのニコラスくん、ネズミの群の中歩かされてた……泣)、終息に向かいつつあるように見えて実は人々が感染の恐怖にまだ怯えていた当時の欧州の状況も克明に描かれており、歴史モノとしても興味深いです。

 
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※エガース作品らしく、キャストも超豪華。左からエガース作品常連のウィレム・デフォーアーロン・テイラー=ジョンソン、エマ・コリン、エガース監督、ヒロインのリリー・ローズ=デップ、ビル・スカルスガルド(素顔はこんなにイケメン❗️笑)、我が推しニコラス・ホルト

 

★今日の小ネタ…ロバート・エガース監督の時代考証

 エガース監督は時代考証に完璧を期す人で、「ノースマン 選ばれし復讐者」を観た時ヲタクは、古代ヴァイキングの血みどろの世界に完璧に没入した感があって目眩がしたほど。(「ノースマン」は、監修した3人の歴史家が、「これまでで一番、ヴァイキングの生活を史実に忠実に描いた映画」と太鼓判を押したほどでした。

 監督の完璧主義は「ノスフェラトゥ」でも遺憾無く発揮されており、女性のヒステリーやてんかんは「多血」のせいと診断され、大量の血を抜かれたり、痙攣を抑えるために阿片を常用、コルセットで身体を締め上げるなど、当時の非人道的な医療行為が忠実に再現されていて、なんともはや……。


「『ノスフェラトゥ』は最高に美しい物語」by ニコラス・ホルト - オタクの迷宮