相鉄線ゆめが丘駅前のシネコン「109シネマズゆめが丘」にて、「ドールハウス」(監督/矢口史靖、主演/長澤まさみ)観賞。「第45回ポルト国際映画祭/ファンタスティック部門」で、Best Film Award (グランプリ)を受賞した話題作で、観る前からドキドキ、期待に心が躍ります。
〈あらすじ〉
ヒロイン・鈴木佳恵(長澤まさみ)は、過去に1人娘・芽衣を5歳の可愛い盛りに亡くす……という身を切るような悲しい経験をして以来、心に癒えることのない深い傷を抱えながら、まるで魂を喪った者のように、身を潜めるように暮らしていました。そんな彼女がある日骨董市で出逢った一体の人形。それはなんと、亡くなった最愛の娘・芽衣に生き写しだったのです。たちまちに芽衣人形に夢中になる佳恵。生きている娘にするのと同じように髪を梳き、添い寝をし、ベビーカーに入れて連れ歩く佳恵。…しかしその佳恵の人形への執着も、次女の真衣が生まれてからはすっかり晴れたかのように見えました。しかし真衣が5歳になった頃、押し入れに入っていた芽衣人形を取り出した時から、次々と恐ろしい出来事が起こり始めて……❗️
芽衣の死は友だちと自宅でかくれんぼをしていて誤って洗濯機に閉じ込められ、窒息したことが原因でした。映画は、佳恵が我が子の変わり果てた姿を発見し、悲痛な叫びを上げるところから始まります。カウンセリングで佳恵が「私がいつまでも旧い洗濯機を使っていたから……」と泣きじゃくるシーン、子どものいる人なら号泣モノ😭(実際に洗濯機に閉じ込められた幼いお子さんが亡くなった痛ましい事件が過去にありましたものね。そのニュースを聞いた時の、何とも表現し難い心の痛みをヲタク、思い出してしまいました)そして、なぜか佳恵一家に執着し、支配しようとする人形の素性を探り、その「呪い」を解くために、佳恵と夫(瀬戸康史)、さらには現代の陰陽師❓️(田中哲司)が奮闘する王道のホラー・エンターテイメントの要素と、人形の呪いの底にある怨念、哀しみ、親子愛……といった日本的な情念が上手く融合している感じ。
※「エモ重」とも評される(むろん、良い意味で)長澤まさみの演技も見どころの1つ。お子さんのいない彼女が、ここまで娘を喪った母親の慟哭を表現できるとは……。俳優さんって凄い❗️
冒頭にも書きましたように、この作品は「第45回ポルト国際映画祭」で見事グランプリを受賞したわけですが、審査員や観客の大半をヨーロッパ人が占める国際映画祭で、この映画が話題を独占したのはなぜでしょうか❓️ユーロニュース(ヨーロッパの主要放送局のテレビニュースを伝えるニュース専門放送局)は「この作品は、クラシック・ホラーのあらゆるカノンにピッタリ当てはまる」と報じ(なんてオサレな言い方なの 笑)、審査員たちは
remarkably realised, offering a poignant and unforgettable exploration of human vulnerability
極めてリアルで、人間の脆さを痛烈かつ忘れ得ぬ形で描いている
と絶賛しました。
欧米のこの手のホラーって、アナベル(「死霊館」シリーズ)やチャッキー(「チャイルドプレイ」)のように悪霊・悪魔 VS. 人間の単純な図式か、幽霊って言っても実体はなくて、「アザーズ」や「シャイニング」など、主人公の妄想を示唆するようなものが多い。アナベルもチャッキーも金太郎アメみたいにどこ切っても「邪悪」一点張りの単純構造だしさー(笑)日本のホラーのように、「親の因果が子に報い……」「この恨み、晴らさで置くべきか…」的な、様々な念(愛執、怨念、憎悪)が複雑に絡み合って霊体になる……といったストーリーは彼らにとっては目新しいんじゃないでしょうか。むろん日本には過去に「呪怨」や「リング」、「仄暗い水の底から」などの作品もありましたが、「ドールハウス」は梅雨の時期に公開するだけあって、これらの作品と比べてもかなーり湿度高め(笑)でもだからこそ、ラストの恐ろしいオチが効いてくる。人形に潜む「念」を見誤ったために、さらなる恐怖が襲いかかる……あーーっ、今思い出しても背筋が凍る(ブルブル((((;゚Д゚)))))
また作品中に登場する、陀羅尼(法華経の裏経)をあげながらの※人形供養も日本独自の儀式でしょう❓️「八百万の神々」、「モノにも命が宿る」っていうアニミズム信仰は日本人の精神の根幹をなすものだとヲタクは思っていますが、「ドールハウス」はクラシック・ホラーの王道をしっかり踏まえつつも、なんか絶妙にジメジメしてる(注・良い意味で)。ヨーロッパの審査員たちを魅了したのもそこにあるんじゃないかな。名匠溝口健二監督の「雨月物語」がベネチア国際映画祭(1953)で見事銀獅子賞を受賞したように。
※和歌山県の淡嶋神社では、映画さながらの人形供養が実際に行われているそうです。
遥か遡ること1950年代、黒澤明、小津安二郎、前述の溝口健二…と、日本の煌めく才能が海外の映画界を席巻した時期は確かにあったわけですが、「ネクストブレイクはジャパニーズ・ホラー❓️」の狼煙はひょっとして、この「ドールハウス」から始まるのではないか……と、ふとヲタクは思ったのでありました。
この映画をきっかけに、ワンチャン、日本映画ブームの再来あるかも❓️