
社会の闇の中で、もがきながら必死で生きるワルたちの悲喜劇
Amazon Prime ビデオにて、映画「悪い夏」観賞。染井為人による同名のミステリ小説(第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作)の映画化だそうです。
市役所の生活福祉課に務める、真面目で気弱な佐々木守(北村匠海)が、ふとしたきっかけから生活保護受給者のシングルマザーと関わりを持ち、闇落ちしていくストーリーです。原作は「戦慄のノワールサスペンス」と銘打っているのですが、映画の印象は、生活保護制度の矛盾やシングルマザーの困窮といった社会問題をからめつつも、その語り口は決して重苦しくなく、ところどころでクスリと笑える、言わば社会風刺エンタメに仕上がっていて、こういったテーマを扱う日本映画では珍しいタイプの作品かな……と思います。(ヲタクは原作未読なんで、比較はできないんですけど^^;)
★ざっくりあらすじ
市役所の社会福祉課に勤務するマジメ一方で気弱な青年佐々木守(北村匠海)は、生活保護受給者の訪問が何よりニガテ。今日も、腰痛を偽っていつまでも働かない元タクシー運転手・山田(竹原ピストル)を訪問し、いいようにあしらわれています(^_^;)じつはこの山田、裏社会に顔が利くキャバクラの店長・金本(窪田正孝)の手下で、タダで酒を飲ませてもらう代わりに、生活保護の一部をピンハネされているのでした。
そんなある日佐々木は、職場の先輩・高野(毎熊克哉)が、その立場を利用して生活保護受給者のシングルマザーに肉体関係を強要しているらしい……と同僚の宮田(伊藤万理華)から相談を受け、「一緒に真相を究明して欲しい」と頼まれます。宮田のゴリゴリの正義感に戸惑いつつも佐々木は、高野の相手だという女性、愛美(河合優美)のもとを訪ねます。愛美は育児放棄寸前で、なぜか娘の美空(佐藤恋和)に懐かれてしまった佐々木は、時折愛美母娘と一緒に過ごすようになります。
そんな3人の関係に目をつけた金本は愛人の莉華(箭内夢菜)と共に佐々木を利用したある犯罪計画を思いつき、愛美に「脅迫の材料にするから、佐々木を誘惑してその現場を隠し撮りしろ」と迫ります。
佐々木にとって史上最悪の夏が始まろうとしていました……❗️
★出てくるのはみんなワルだらけ。だけど……
なんか全員憎めないんですよね(笑)どうにもならない社会制度の矛盾や運命のイタズラに翻弄されて、それでも「生きてやろうやないかい❗️」ってパワーを持っていて、なんだか愛しい気持ちになる。ワルだらけの登場人物の中で、唯一善良な市民とも言える、貧困にあえぐシングルマザー(木南晴夏)が、どんどん追い詰められていくのが、社会の縮図を見せられているようで胸が痛みましたが…。
★輝いてた主役2人
佐々木が、娘の美空にDV寸前の愛美を見て、「もっと愛情を持って接してあげないと…」って彼女に思わず言っちゃうんだけど、「じゃあ、(あんたが)助けてよ❗️」って反発されてションボリしちゃう……その時の北村匠海の表現が上手い、上手すぎる(笑)佐々木との触れ合いによって、次第に娘・美空への愛に目覚めていく愛美役の河合優美も良かったよねぇ……。無口で、周囲からも「何考えているかわからない」って言われてる愛美、難役だったと思いますが、ふとした表情に哀感が漂って、日本的な情緒が体現できる女優さんだと思うので、これからが楽しみです。
★脇役もくせつよ揃いで魅力爆発❗️
不正を働く先輩をすっぽんみたいに追い詰める宮田(伊藤万理華)。「宮田さんのその正義感はどこから来るんですか❓️」って佐々木は思わず聞くんだけど、返ってきたのはナゾの微笑み(笑)でもって最後に思わずヲタクは
えーっ❗️❓️彼女の正義感ってそこ❓️
って思わず絶叫しちゃったわ(笑)いやー、つゆとも考えつかなかったわー、いやほんと。みんな絶叫すると思う(笑)
でもって、金本役の窪田正孝❗️憎めなくって、ちょっとトボケてて、魅力的な小悪党。サイコな役も似合うけど、こういう軽妙な演技もハマってる😍
★ラストは原作とかなり違うらしい
原作はかなり救いようのない結末らしい(^_^;)けど、映画のほうは、クライマックスの愛美の家になぜか登場人物が全員集合❓️して嵐の中血塗られた惨劇(キャッチコピーが「クズとワルしか出てこない❗️狂乱のサスペンスエンターテイメント」なんですが、まさにこの嵐の夜、クズとワルが大集合しちゃうんですよ 笑)となり、しかしその嵐も過ぎて、仄かに明るい未来を予想させる印象的なシーンで終わります。
ヲタクは映画の終わり方のほうがいいなぁ……。やっぱり人生、捨てる神あれば拾う神あり、過ちを冒してもやり直すことはできる……って信じていたいじゃない❓️