オタクの迷宮

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ジム・ジャームッシュを思わせる余韻〜映画「フォーチュンクッキー」

 
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 横浜・黄金町のミニシアター「ジャック&ベティ」にて、映画「フォーチュンクッキー」観賞。

 

 「フォーチュンクッキー」って言うと、ヲタク的にはAKB の「恋するフォーチュンクッキー」がすぐ脳裏に浮かんで(^_^;)恋愛上等の若いキラキラ女子のイメージが強かったんだけど、この映画は真逆(笑)アメリカのフォーチュン・クッキー工場に勤めるアフガニスタン人女性の、哀愁とそこはかとないユーモアを混じえたロマンスを描いたもの。「恋する〜」がバリバリ総天然色なら、この映画は白黒モノカラー⋯⋯あ、実際にもモノクロ映画です(笑)

 

ざっくり、あらすじ

 カリフォルニア州フリーモント(原題はまんま「フリーモント」。フリーモントは北米最大のアフガン人コミュニティがある街)。中国人移民の夫婦が経営するフォーチュンクッキー工場(フォーチュンクッキーは主として、中華料理店で料理と共にサービスされているのです)に勤務する、アフガン人のドニヤ(アナイタ・ワリ・ザダ)。母国アフガニスタンでは米軍基地で通訳として働いていた彼女は、家族を祖国に残して命からがらヘリコプターで脱出、特別ビザを得て米国に移住したのですが、米国に住む同胞からは、「頼まれもしないのにやって来た迷惑な米軍」(劇中、実際にこのセリフが出てきます)の手先をしていたとして白眼視され、さりとて米国社会には馴染めず、不眠症に悩まされる日々を送っています。そんなある日彼女は、ふとした出来心からクッキーの中に、「どうしょうもなく、幸せになりたい」という願いと共に、自身の携帯番号を忍び込ませますが⋯⋯。

 

フォーチュンクッキーが導く思いがけない出会い

 母国ではおそらく富裕層に属し、大学でも学び、タリバン政権以前は将来を嘱望されていたであろうヒロイン・ドニヤが、亡命後はネズミの走り回るアパートに住み、メッセージの紙切れを日がな一日クッキーに挟み続ける毎日に心が痛みます😭

 

 アフガニスタン時代には米軍基地が襲撃された際戦闘を間近に見てPTSDを患い、心を閉ざし続けるドニヤが、周囲の心優しい人々〜工場の同僚でアメリカ移住後の唯一の友人であるジョアンナ(ヒルダ・シュメリング)や、工場経営者の中国人、不眠症の治療に当たるセラピスト、そしてフォーチュンクッキーが導く縁で交流を持つことになる、ドニヤと同様孤独な整備士ダニエル(ジェレミー・アン・ホワイト)〜によって、心の垣根を次第に取り払い、新たな人生を始めようと決意する姿が、素直な感動を呼ぶのです。

 

 ★ヒロイン役はアフガニスタン出身のジャーナリスト

 ヒロイン・ドニヤを演じるのは、アフガニスタン出身で国営テレビ局のジャーナリストだったという、アナイタ・ワリ・ザダ。ふとした言動に垣間見える知性、強固な意志の光を秘めた瞳が、米軍基地で通訳を務めていたドニヤというヒロインに、確かなリアリティを与えています。


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※心を硬い殻でガチガチに固めているヒロイン・ドニヤ(左⋯アナイタ・ワリ・サダ)を一瞬にして溶かしてしまう誠実なアメリカ人男性・ダニエルを演じるジェレミー・アン・ホワイト(右)

 

ジム・ジャームッシュにインスパイアされた❓️監督ババク・ジャラリ

 監督は、ロンドン・フィルム・スクールで映画制作を学んだイラン系英国人の、ババク・ジャラリ。今作は、「ジム・ジャームッシュを彷彿とさせる⋯⋯」ともっぱらの評判ですが、確かにモノクロの画面が醸し出す空気感や、移民問題やマイノリティ差別、ミソジニーなど重いテーマを独特のオフビートな空気感と苦いユーモアに包んで描き出す作風は、確かにジャームッシュっぽいかも❗️(特に「ストレンジャー・ザン・パラダイス」かな)

 

★作品を彩る名曲は⋯⋯

 ※ヴァシュティ・バニヤンの「Diamond Day」という楽曲。同僚のジョアンナが歌うこの曲に、祖国を離れて以来、感情という感情を心に押し込めて生きてきたドニヤが、初めて涙を流す場面は、作品中最も印象的なシーンだと思います。

※60年代半ばに当時ローリング・ストーンズのマネージャーだったアンドリュー・ローグ・オールダムに見出され、「母なる大地を歌うウィスパーヴォイス」と絶賛された英国人歌手。「Diamond Day」はスコットランドを旅した思い出を歌った曲。

 

 2023年・第39回インディペンデント・スピリット賞でジョン・カサベテス賞を受賞した佳作です。

 

 ギラギラした真夏の間は取り憑かれたみたいにホラー映画を観まくっていたヲタク(^_^;)。しかし、日中の暑さは変わらずとは言え、だんだん日が短くなって夜は風が涼しくなった今日この頃、なぜかロマンス映画が観たくなる(笑)映画の趣味も季節で変動があるらしい⋯⋯と、つらつら考えているヲタクです。