「KINOシネマ横浜みなとみらい」にて、映画「グランドツァー」鑑賞。ポルトガルの鬼才ミゲル・ゴメスが、コロナ禍の渦中に制作期間4年をかけて完成させ、第77回カンヌ映画祭で監督賞を受賞した作品です。

★ざっくり、あらすじ
1918年、ビルマ(現ミャンマー)のラングーン。大英帝国大使館に勤務するエドワード(ゴンサロ・ワディントン)と結婚するため、婚約者モリー(クリスティナ・アルフィアテ)は、心ウキウキ現地を訪れますが、エドワードの住まいはもぬけの殻。なんとエドワードはマリッジブルーにかかったらしく❓️モリーの到着直前に突如姿を消してしまったのです。彼はシンガポール行きの船に乗ったらしい、と聞きつけたモリーは、早速彼を追いかけます。そして、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、日本、中国と、全アジアを股にかける壮大な追いかけっこ勃発❗️果たして彼らの行き着く先は❗️❓️
★モノクロ映像美と愛の闘争❓️
我が日本の誇る名監督、小津安二郎や溝口健二、ドイツ表現主義の巨匠F.W.ムルナウの大ファンだというゴメス監督、モノクロ映像美をとことん追求した、偉大なる先達たちへのリスペクトがそこかしこに見られます。時代設定を1918年にしたのもそんな理由かと。口コミでは、「バイクやカラオケ、果てはドンキまで登場して、時代考証が無茶苦茶すぎる」って辛口なご意見もチラホラ(^_^;)基本、モノクロ映像で進んで行きますが、たまに無作為にカラーの映像が挿入されるしね。
ーうん、みんなの気持ちもわかるわかる、でもね、これは
男と女の間にはァァァ
深くて暗い河があるゥゥゥ
誰も渡れぬ河なれどォォォ
エンヤコラ今夜も舟を出すゥゥゥ
(by 野坂昭如「黒の舟唄」)
ってなもんで、時代を超えた男女の愛の闘争を描いたしごく寓意的な作品だと思うんで、そこんとこちょっと大目に見てちょ。(各国の現代風景シーンにはエドワードやモリーは出てこないので、1918年と現代を比較対照してるーって解釈も成り立つと思うんです)
しかし結婚が怖くて逃げ回るエドワードや「我々が東洋人の思想を理解しようなどと無理なんだ。彼らは超越し過ぎている」と曰う中国の阿片中毒の英国人にしろ、男たちは皆臆病で現実逃避型なのに比べ、モリーや他の女たちは皆、違う環境に対する適応力があり、「アジアは好きよ。ここに住んでもいいわ」なんてすぐに言い出し、しかも共闘する(笑)男女で異国での旅の仕方が全く違うのも、この映画の見どころ。
★大阪、ザ・エキゾチック
冒頭でお話したように、ミャンマー、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、日本、中国……と、アジア7カ国で大規模ロケを敢行したこの作品、我が日本の代表として選ばれたのは大阪❗️「エキゾチックジャパ〜〜ン」の最たる都市として大阪を選んでくれた、このゴメス監督の感覚、東京生まれ、横須賀&横浜育ちのヲタクからしたら、「わかるわかる、そうだよね」って感じ。ヲタクはね、大阪に行って、大阪弁の音楽的な響きや猥雑な雰囲気、独特のファッションで声高に喋りまくるおばちゃんたちを見ると、日本じゃなくて、かつて訪れたことのあるフィリピンや台湾、香港の裏道に迷い込んだんじゃないか❓️って錯覚に陥るから。エドワードはその後大阪の忙しさに疲れたのか(笑)虚無僧にくっついて行って、京都あたり❓️の山寺に籠もって珍妙な禅問答を繰り広げますが(^_^;)、一方モリーはベトナムから真っ直ぐ上海入り。残念❗️彼女の大阪の感想を聞いてみたかったわ(笑)
「グランドツァー」とは、かつてイギリスの上流階級の若者が、教育の一環として世界各地を長期にわたって巡る大規模な旅行のことだそう。
アドベンチャー要素あり、ファンタジー或いは寓話的要素あり、そしてラストのあの「オチ」は一体何❓️といったミステリー要素あり-----。人によってかなり好き嫌いが真っ二つに分かれる作品だとは思いますが、少なくともヲタクはめっちゃ好き😍
……さあ、愛と絶望のカオス、迷宮の如き映像世界のグランドツァーへ出かけよう❗️
★溝口健二監督、LOVE
じつはヲタク、ゴメス監督も大ファンだという溝口健二監督フリークでありまして。以前、溝口監督のモノクロ作品について当ブログで熱く語っております。この記事を読んで、モノクロ映画に興味を持たれた方は、ぜひこちらも読んでみてネ⇩⇩⇩⇩⇩
モノクロ映画を語ろう②~溝口健二の墨絵の世界 - オタクの迷宮