オタクの迷宮

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戸籍を売った若者たちの魂が叫ぶ──映画『愚か者の身分』

 相鉄線ゆめが丘駅前のシネコン「109シネマズゆめが丘」にて、映画『愚か者の身分』鑑賞。

 

 幼少期の虐待、貧困、家族の病気……様々な理由から、半グレ組織の手先になって戸籍の売買という「愚か者」の犯罪に手を染めた3人の若者たち(林裕太、北村匠海綾野剛)あ、綾野剛はもう40過ぎてるからオジサンか(笑)この3人がある事件をきっかけにして、その愚か者の世界から命を賭けて脱出しようとした顛末をサスペンスフルに描いたノワールミステリーです。


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★ざっくり、あらすじ

 作品の主人公は、マモル(弟分:林裕太)→タクヤ(兄貴分:北村匠海)→梶谷(裏社会の仲介人:綾野剛)の3人。3人は闇ビジネスに手を染めながらも、時折良心に苛まれ、それぞれが「逃れたくても逃れられない心の地獄」を抱えています。ストーリーは三人三様の視点に立ってリレー方式で語られ、前の章で残された数々の謎が、次の章で明らかにされる……というスタイリッシュな展開になっています。

 

 第1章はマモル(林裕太)。タクヤ北村匠海)を兄貴分と慕うマモルですが、ある日タクヤが知り合いの梶谷(綾野剛)に頼んで、自分自身の身分証明書を作らせていたことを知り、愕然とします。1人で組織を抜けて高飛びしようとしているタクヤに裏切られた、と絶望するマモル。翌日、マモルは組織の幹部から、タクヤは組織を裏切り資金を持ち逃げされて殺された…と知らされます。タクヤの部屋の掃除を命じられたマモルは、血だらけの部屋の惨状に息を飲み……❗️

 

★主役3人、魂の競演

 「魂の競演」というのはポスターのキャプションですが、3人ともそれに恥じない名演です。特に、料理の得意なタクヤからサバの煮付けをご馳走になっている時

マモル:家でごはん食べたことないなぁ。給食食べだめしてたから

と呟く時の表情を見た時にもはやヲタクの涙腺は崩壊。それ以降、マモルが何か喋る度に涙が出るので困った😂

 

 上のマモルの言葉を聞いて彼の頭を撫でようとしたタクヤが、ビクッとして飛び退くマモルの姿に、彼がずっと家庭で酷い虐待を受けていたことを悟って思わず手を引っ込めるシーンにも泣けましたね。タクヤが自分の戸籍を梶谷(綾野剛)に売ったのも、病気の弟の手術代を稼ぐためだったのですから、この一瞬のシーンで、タクヤがマモルのことを本当の弟のように守ろうと決意したことを私たち観客に悟らせるニクイ演出、素晴らしいと思いました。

 

 主役の3人の他にも、妻が娘を虐待死させ、いっぺんに家族を失った絶望で戸籍を売り、ネカフェで暮らす男を演じた矢本悠馬も秀逸。出番は少ないですが、ラスト、タクヤの運命を知った時の慟哭の演技は、サスガ若手でも一二を争う名脇役と言えるでしょう。

 

 レーティングはPG12だけあって、目を背けたくなるような凄惨な暴力シーンも多いですが、ラストは、例え悪事に手を染めても良心が残っていれば必ず再出発できる……という微かな希望の光が暗示され、観る者の胸にも温かい余韻が残る佳作❗️