〜ミステリーの女王が描いた「人間の闇」を観よ
本年2026年は、あの「ミステリーの女王」アガサ・クリスティ没後50 周年。時を超えて、また本国の英国ばかりでなく世界中で今も愛されるアガサのミステリー。今日は、数ある彼女の映像化作品の中から、「ヲタクが選ぶベスト10」を発表致します❗️
注:※本ランキングは「原作再現度」ではなく、
映像作品としての完成度/人間心理の描写度/ヲタクの心を抉った度を基準に選んでいます。
◆第10位 トミーとタペンス〜2人で探偵を
〜スパイミステリー✕夫婦✕ユーモア〜
(2015年/BBCのドラマ 6エピソード)

好奇心旺盛、向こう見ずな妻タペンスと、イヤだイヤだと言いながら妻の言いなりになって大事件に巻き込まれてしまう温厚な夫のトミー。そんな2人が、スパイ騒動に巻き込まれるお話。仲良し夫婦のユーモア溢れる掛け合いが超楽しい🎵英国の大人気番組『リトル・ブリテン』で有名な喜劇俳優のデヴィッド・ウォリアムズ(写真右)がトミー役を演じています。原作は『秘密機関』、『おしどり探偵』、『NかMか』のトミーとタペンスシリーズ3部作。正統派ミステリーというよりスパイアクション❓️もの。
アガサがスパイものを書くなんて珍しいなぁ…と思っていたら、なんと彼女自身、ブレッチリーパーク(戦時中ロンドンにあった暗号解読機関。アラン・チューリングがリーダー。ベネ様主演の『イミテーション・ゲーム』にその内情が詳しい)から、ドイツのスパイ嫌疑をかけられたことがあったらしい。ビックリです🤯
◆第9位 無実はさいなむ
〜愛と憎悪渦巻くクローズドサークルミステリー〜
※注目ポイント=英国イケメン大行進
(2018年 BBCのドラマ)

英国イングランドの森の奥深くに佇む豪奢なカントリーハウス。資産家の女主人レイチェルがある夜、自室で後頭部を殴られ、殺害されます。その時館に居たのは、レイチェルの夫レオ(黒澤明監督作品のリメイク『生きる』で、初の主演男優賞にノミネートされたビル・ナイ)、子供のいない彼女が養子にした5人の子供たち。一見仲よさげに見える家族でしたが、その裏には欲と憎悪が渦巻いて-------。
アガサお得意の、愛欲渦巻くクローズドサークルミステリー。謎解きと共に、人の心の深淵を探っていくような心理スリラーの趣きもあります。「世の中で1番怖いのは人間よ……」っていうアガサの声が、どこからか聞こえてきそう。
【この人たちに注目❗️】
それからね、この『無実はさいなむ』、もう一つのお楽しみはマシュー・グードを筆頭に、英国イケメン俳優大行進❗️なんですよ。そこんとこも、ヨロシク(笑)

※『無実はさいなむ』に出演する英国イケメンたち。クリスチャン・クック(左上)、マシュー・グード(右上)、ルーク・トレッドソン(左下)、アンソニー・ボイル(右下)
◆第8位 ゼロ時間へ
〜離婚と遺産とアガサの怨念〜
※注目のイケメン=ジャック・ファーシング
(2025年 BBCのドラマ)

セレブ夫婦の壮絶な離婚バトルから幕を開けるこの作品。泥沼の遺産分与劇の舞台になるデヴォン州の豪壮な館に、なんと前妻と現在の妻を鉢合わせさせるというゲス夫の描写には、生涯にわたって2人の夫の不倫問題に悩み抜いたアガサの怨念が投影されているようです。
目に染みるような英国デヴォン州の風景の美しさと、登場人物たちの心の闇の対比が際立つ作品。館の女主人を演じるアンジェリカ・ヒューストンの怪演ぶりも見どころの1つ。

【この人に注目❗️】
クリステン・スチュワートが故ダイアナ元妃を演じてアカデミー賞にノミネートされた映画『スペンサー ダイアナの決意』で相手役のチャールズ皇太子を演じたジャック・ファーシング。彼がこの作品の中では、遺産分割の泥沼に悩み、追い詰められて次第に精神を病んでいく男の役で、繊細且つ印象的な演技を見せています。
〜ゴシックホラー風味と人間くさいポアロの魅力〜
(2023年の映画/アメリカ)

英国の名優ケネス・ブラナーが、アガサが創り上げた「灰色の脳細胞」名探偵エルキュール・ポアロを演じ始めてから早や9年が経ちました。本作は1番新しい作品で、3作目に当たります。
ポアロと言えばやはり英国のベテラン俳優デヴィッド・スーシェがTVで24年に渡り演じ続けた当たり役です。ヲタクもポアロと聞くと瞬間的にスーシェの顔が浮かんでくる程だったので、ケネス・ブラナー版ポアロはちょっと違和感があるかな…と不安でしたが、そこはそれ、「ローレンス・オリヴィエの再来」と言われるほどの名優、サー・ケネス・ブラナーのこと、全然そんなことなかった❗️ポアロを戯画化して、1種のキャラクター化したスーシェと対象的な、あくまでもリアルで人間的なアプローチをしたブラナー。全く新たなポアロ像として受け入れることができました。
特に降霊術がテーマでゴシックホラー的要素のある『ベネチアの亡霊』では、降霊術を疑いながらも(ひょっとしてホンモノ❗️❓️)という思いを抱いたり、探偵業に行き詰まりを感じて悩んだり…と、かなり人間くさいポアロなので、ケネス・ブラナーは特にぴったりでしたね。
--------そしてそろそろこのあたりから、「謎解き」よりも人間そのものの歪みを剥き出しにしてくる作品群へ
◆第6位 そして誰もいなくなった
〜マザーグースが奏でる究極の恐怖〜
(2015年 BBCのドラマ)
注目のイケメン=エイダン・ターナー

アガサ・クリスティは英国の童謡「マザーグース」にちなんだミステリーを幾つか書いていますが、これもその1つ。
マザーグースって童謡とは言え、この『そして誰もいなくなった』に見られるように
10人のインディアン、お祭りに出かけた。
1人がノドを詰まらせて、残りは9人。
9人のインディアン、夜遅くまで起きていた。
1人、うたた寝して、残りは8人。
... (中略)
1人、首をくくって、そして誰もいなくなった。
とか、かなり残酷な歌詞なんですよね。そんな「目に見えない恐怖」が上手く生かされたミステリーです。
面識のない10人の男女が、ある富裕な夫婦から絶海の孤島に招待される。贅を尽くした豪壮な館で優雅なバカンスを過ごす筈が、居間に飾られたインディアン人形が一体ずつなくなるたび、一人、また一人と殺されていく。明日は我が身❗️❓️世間から全く隔絶された孤島で、想像を絶する恐怖が彼らを襲う❗️

【この人に注目❗️】
ヲタクは『そして誰もいなくなった』は原作読んでるので結末も知ってるんだけど、当時、映画『ホビット』3部作(2012〜2014年)でドゥワーフのキーリを演じてたエイダン・ターナーに沼ってて、彼が出演してたんで観たの(笑)でも彼、思ったより早い時期に殺されちゃうんで、その後のストーリーは見る気失って困っちゃったわ😅
◆第5位 ねじれた家
〜イヤミス大爆発の家族地獄〜
(2017年の映画/英国)

この作品も『そして誰もいなくなった』同様、マザーグースシリーズです。
ねじれた男が、ねじれた道を歩いてた
ねじれた男はねじれた家に住んでいた
ねじれた男は、ねじれたお金を数え
ねじれた猫を飼い、ねじれた友だちを招待した
みんなみんなねじれてた
冷酷でワンマンな大富豪が毒殺された。犯人は同居の家族の中に❗さて誰が彼を殺したか❓️…密室で起きる、アガサお得意のクローズドサークルミステリーで、グレン・クローズやジリアン・アンダーソンなど、英国の演技派勢揃い、まるで重厚な舞台劇を見ているような気持ちになります。
作品中の登場人物も全員心がねじ曲がっていて、誰一人マトモな人がいません🥲アガサの「イヤミス志向」大爆発な作品です。『ねじれた家』は、アガサ自身が『無実はさいなむ』と並んで、生前最も気に入っていた作品と言われています。自身の愛した数少ない2作が共にイヤミスって…。よほど人間不信に陥っていたのだろうか。アガサの心の闇をうかがい知るような、そんなエピソードですね。
◆第4位 ナイル殺人事件
〜愛と欲望が招いたエジプトの悲劇〜
(2022年の映画/アメリカ)

アガサには、ハーレクイン・ロマンスとミステリーがミックスしたような作品があるのですが、この『ナイル殺人事件』もその一つ。ピラミッドやアブシンベル宮殿を遠くに臨むエキゾチックでゴージャスなエジプト・ナイル河クルーズを舞台に、激しい恋に身を焦がす美男美女。その果てに起きる残酷な殺人事件。原題は『Death on the Nile』で、昔は『ナイルに死す』って邦題だったんですよね。ヲタク的には昔の邦題のほうが好きかな。
今をときめく映画界の美女たち-----ガル・ガドット、レティーシャ・ライト、ソフィー・オコネドー、エマ・マッキー総出演❗️そして彼女たちの熱い視線を浴びる黒一点❓️が懐かしや、アーミー・ハマー(『君の名前で僕を呼んで』『レベッカ』)。彼、スキャンダルでハリウッドを干されちゃったけど🥲彼の柔らかな「受けの演技」は唯一無二。復活、期待してます。
◆第3位 終わりなき夜に生まれつく
〜呪われた土地に咲く破滅の愛〜
(2014年 BBCドラマ)
注目のイケメン=トム・ヒューズ

アガサのハーレクイン・ミステリーの最高峰❗️(…と、少なくともヲタクは思ってる)作品。ポアロと並ぶおばあちゃん名探偵、ミス・マープルが主人公のBBCドラマシリーズの一。(但しこの作品では、ミス・マープルはある種の「観察者」としてチラッと顔を見せるだけ)
一目会ったその日から激しい恋に落ちた2人の男女。彼らは、地元の人たちから「呪われた土地」として恐れられている「ジプシーが丘」に、周囲の反対を押し切って新居を建て、新生活をスタートさせます。しかしその直後から怪しい人影が出没し、不吉な出来事が次々と起き、ついにある夜惨劇が---❗️
【この人に注目❗️】
この作品を名作たらしめているのは、何と言っても主役の青年マイクを演じたトム・ヒューズでしょう。所謂「Blank eyes」と呼ばれる謎めいた三白眼。彼の底しれぬ蒼い瞳が我々に問いかけます。

果たしてマイクがあらゆるものを犠牲にして手に入れたものは一体何だったのか❓️
原題は『Endless Night』。決して明るい陽光を浴びることのない運命を課せられた人間の悲しいストーリー。その魂の暗黒が、観ている私たちの心を深く抉ります。
※この作品、現在配信サイトでは見ることが出来ませんが、BSミステリーチャンネルでは繰り返し再放送されていて、次の放送日は2026/01/29(木)11:00となっています。
◆第2位 オリエント急行殺人事件
(2017年の映画/アメリカ)
注目のイケメン=セルゲイ・ポルーニン

ケネス・ブラナー版エルキュール・ポアロの記念すべき第一作であり、(ヲタク的には)最高の出来ではないかと思っています。
イスタンブール発パリ行きの豪華寝台列車オリエント急行が雪崩の影響で立ち往生。そんな車中で、アメリカ人の大富豪ラチェット(ジョニー・デップ)が殺された。彼の遺体には12カ所もの刺し傷が…。容疑者は、企業家、ハンガリー貴族、陽気な未亡人、家政婦、秘書、医師など総勢13人。過去の遺恨や複雑な人間関係が絡み合う難事件を、「灰色の脳細胞」を持つ我らがエルキュール・ポアロは果たして見事に解決できるか❗️❓️
【この人に注目❗️】
被害者役のジョニデをはじめ、英国の名優ジュディ・デンチ、久しぶりにカムバックしたミッシェル・ファイファー、ウィレム・デフォーら綺羅星の如きキャストの中でひと際異彩を放っていたのが、バレエ界で名を馳せたハンガリー貴族を演じたこの人❗️セルゲイ・ポルーニン。

ウクライナ出身で、19歳で英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルとなりましたが、22歳で電撃退団。その後はバレエ界の異端児としてフリーで活躍していますが、実はヲタク、5年前にセルゲイがアリーナ・コジョカルと踊った『椿姫』ナマで見てるんですよね〜。しなやかさと強靭さを兼ね備えたダンス、繊細な感情表現は「世界一優雅な野獣」の異名そのままの素晴らしさでした。
ウクライナ出身なのに、プーチン支持を表明したりと、相変わらずのお騒がせくんぶりを発揮しているセルゲイ😅最近とんとウワサを聞かないけど、元気にしてるかしら❓️
◆第1位 情婦
〜どんでん返しの極致、法廷サスペンスの金字塔〜
(1957年の映画/アメリカ)

1952年、戦後間もない混乱が続くロンドン。
富裕な未亡人殺しの罪で逮捕されたレナート・ヴォール(タイロン・パワー)の弁護を依頼された法曹界の重鎮ウィルフリッド卿(チャールズ・ロートン)。レナートの誠実な態度に彼の無実を直感、弁護を引き受けたウィルフリッド卿でしたが、証人に立ったレナートの内縁の妻クリスティン(マレーネ・ディートリッヒ)が夫に不利な証言をしたため、レナートは有罪に。果たしてクリスティンの真意はどこに❓️そしてレナートの運命は❓️
どんでん返しに次ぐどんでん返し。あっと驚くラストまで息をもつかせない法廷サスペンスで、光と影を効果的に使ったモノクロ映像と、ヒロインのマレーネ・ディートリッヒの美しさは特筆もので、名匠ビリー・ワイルダーの腕が冴え渡った名作です。
それにしても『情婦』という題名にしろ(原作は『検察側の証人』ですよ😅)いかにも扇情的なポスターにしろ、どうにかならなかったのかいな。この題名とポスター見て、とてもじゃないけどアガサ・クリスティ原作のミステリーだと思う人は少ないのでは…❓️せめて題名だけでもリメイクしてくれないかな(笑)
こうして並べてみると、
私、どれだけ「人間の闇」が好きなんだって話ですが😅
それでもやっぱり、
アガサ・クリスティは最高に面白い。
没後50年。
彼女の描いた“人間の業”は、
今日も変わらず、私たちを楽しませ、震えさせてくれるのです。