オタクの迷宮

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鏡をくぐる映画たち ──モノクロームが生んだ映像美ベスト5

こんにちは❗️モノクロ映画フリークのヲタクです(笑)

 

今回のお題は「モノクロ映画」

つまり---------
モノクロームであることが、世界観そのものを規定している映画

 

 カラー映画はリアリスティックな現実味を届けてくれますが、モノクロ映画はどこか異世界に入り込んだような妖しさと迷宮感を感じさせてくれるんです。

 

 今までもヲタクは当ブログで、『サイコ』や『モンパルナスの灯』、『レベッカ』『第三の男』などモノクロ映画の傑作を紹介してきましたが、今回は、モノクロ映画であるからこその映像美が際立つ作品ベスト5を選んでみました。

 

第5位 裁かるるジャンヌ(1928年)

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 有名な「オルレアンの少女」ジャンヌ・ダルク。彼女に対する異端審問裁判の一部始終から火刑に至るまでを、可能な限り史実に基づいて描いた作品です。死への恐怖から一度は異端放棄するものの、再び神への絶対的な信仰心を取り戻し、決然と生きながら火に焼かれるジャンヌ。対する異端審問官の、神の名のもとにいたいけな少女を拷問にかける冷血の恐ろしさ。火刑シーンを寝る前に見るとうなされるので注意(^_^;)

 この冷徹なリアリズム劇が、まるで宗教画のような静謐なる映像美の中で繰り広げられるさまは、美しくも、恐ろしい。

 

 監督はデンマークの鬼才、カール・ドライヤー

 

第4位 吸血鬼ノスフェラトゥ(1922年)

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 『戦艦ポチョムキン』や『メトロポリス』と並ぶ、ドイツ表現主義の巨匠、F.W.ムルナウによるサイレント映画の傑作。白壁に映る異形の魔人の翳、急峻な峡谷に馬車を走らせると、遠くに現れいでたる吸血鬼の城……。モノクロ映画ならではの怖さ、美しさが満載。この映画の「魔力に取り憑かれた」現代映画の鬼才ロバート・エガース監督はついに昨年(2025年)リメイク作品を作っちゃいましたね(笑)

 

第3位 ダムネーション/天罰(1987年)

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 ハンガリーの映像作家タル・ベーラの作品。

 

 荒れ果てた炭鉱の街。石炭を運ぶ滑車がレールを往来する冒頭のシーンから、私たちは「タル・ベーラ的映像美の世界」に引き摺り込まれます。

 

 アルコール依存症の男が、夫も子供もいる歌手の女性にのめり込んでいく、それは泥沼のような恋の煉獄。そぼ降る雨の中、微かに浮き上がるヘッドライト、バーから漏れる滲むような光、髭を剃る主人公の、瞳孔が開いたような狂気に満ちた眼、闇の中から現れる黒い犬など、完璧なまでに整った構図を延々と長回しで撮るタル・ベーラ節が炸裂した作品です。

 

 愛する相手も自らの未来も信じられない男に下される天罰とは一体何だったのか--------。

 

第2位 オルフェ(1950年)

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 監督は、フランスの代表的な詩人・劇作家のジャン・コクトー

 

 世にも稀なる美青年オルフェ(ジャン・マレー)の魅力の虜となり、冥府の禁を破って彼の妻を故意に事故死させ、オルフェを我がものにしようと謀る死神(マリア・カザレス)。

 

 オルフェが現世と冥界の境目である鏡を通り抜けるシーンは、映画史上類を見ない美しいシーン(通り抜ける瞬間に、硬質な鏡がさざ波に変化します)。この「鏡面から異世界に紛れ込む」シーンは後年、『ホーリー・モーターズ』のレオ・カラックス監督や、『アンダー・ザ・スキン~種の補食』のジョナサン・グレイザー監督など、現代の映像作家たちに大きな影響を与えました。 

 

 ひと言で言えばこの作品は一編の「映像詩」。鏡は一瞬でさざめく波に変化し、動くはずのない石の彫像が蠕き、冥府の硝子売りが幻影の如くゆらゆらと全てのものをすり抜け、突如として時は緩やかに動きを止めるのです。

 

 

第1位 詩人の血(1932年)

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 そしてそして、ヲタクの中で「モノクロームの映像美」と言えばダントツこの作品❗️天才ジャン・コクトーの処女作にして最高傑作である『詩人の血』。

 

詩は全て紋章である。解読するには詩人の血と涙を必要とする。

 

 冒頭のモノローグが全てを語るような、場面の一つ一つが宝石のように美しい映像詩です。

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 自室で人の顔のデッサンに余念がない詩人(エンリケリベロス)。するとその唇だけが生きたように動き始め、驚いた詩人が手で唇を塞ぐと、唇は彼の手に乗り移り、今度は掌の上で艶めかしく動き出します❗️ 

 場面は一転して、冷たい石の彫像が突然動き出し、息づいて、詩人に「鏡の中に飛び込むのよ!」と命じます。

 詩人が鏡に向かって身を投げると、鏡面はさざ波に変わり、詩人は言わば「彼岸の世界」に没入していきます。私たち観客もまた、詩人と共に鏡の中の迷宮に入り込んで行くのです。

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 幾度か繰り返される、「此岸の世界」に絶望した詩人が自ら拳銃でこめかみを撃ち抜き、どくどくと血が流れるシーン。白布や白い肌に滴る黒い血は、モノクロ映画であるからこその凄惨な美しさに満ち満ちています。

 

いかがでしたでしょうか❓️

 

 思えばヲタクは、幼い頃

泉屋のクッキーのフタの裏に天井を映して
いつか本当に、あの歪んだ反射の向こうの
異世界」に入り込むことができるかもしれないと
夢想していた孤独な子どもでした。

 

 モノクロ映画とは、現実を削ぎ落とした単調な世界ではありません。
むしろそれは、現実よりも深く、危うく、美しい迷宮への入口なのです。

 

 そして私たちは今日も、
スクリーンという“鏡”の前に立ち、
もう戻れないと知りながら、そこへ飛び込んでいく

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