オタクの迷宮

映画・ドラマ・舞台レビュー、ケルト文化、滅びの美学、推し活のつれづれまで── 観て、感じて、考える。 "好きなモノ・人"についてしか語らない偏愛のブログ。そして今日もどこかで、ヲタクが迷走中。

舞台が燃える女優――ジェシー・バックリー、アカデミー主演女優賞へ

 f:id:rie4771:20260317042939j:image

 かつてオリヴィア・コールマンに

私の頭に浮かぶなかでは最高の俳優

と称されたジェシー・バックリーが『ハムネット』(クロエ・ジャオ監督)の演技で、ついにアカデミー賞主演女優賞を受賞‼️

f:id:rie4771:20260316180910j:image

 ヲタクが最初に彼女の演技を見たのは、激推しジャクロことジャック・ロウデンが、ロシア貴族ニコライ・ロストフを演じたBBCのドラマ『戦争と平和』。ニコライが家の再興のため、政略結婚の相手として選んだ資産家の娘、マリヤ・ボルコンスカヤを演じていたのがジェシーなんですよね。恋する相手に愛されない哀愁と、それでもなお地に足をつけて生きていこうとする勁さを、抑制の効いた演技で表現していて、見事でした。

 

 マリヤ役のイメージから、堅実で落ち着いたタイプの女性かと思いきや、次に見た『ワイルドローズ』での、感情を一気に爆発させるようなマグマみたいな演技に、ヲタクは目を白黒(笑)シングルマザーのカントリー歌手の役で、パワフルな歌声にもビックリ🤯

 

 その後は彼女、演技派スタァへの道をまっしぐら。役柄も、有能なキャリア秘書(『ジュディ 虹の彼方に』)、実在しているのかしていないのか、まるで幻想のようなリアリティの無い女性(『もう終わりにしよう。』)、戦前アメリカの良妻賢母(『クーリエ:最高機密の運び屋』) 、母親と女性、2つのペルソナに引き裂かれる女性(『ロスト・ドーター』)、夫からの激しい暴力に苛まれる妻(『ウーマントーキング 私たちの選択』)…と、あってあらゆる役柄を演じきり、当代きってのカメレオン女優となりました。出演作も良作揃い。脚本選びの慧眼にもオドロキです。

 

 また、彼女を語る上で忘れてはならないのが、彼女がアイルランド人だということ。

f:id:rie4771:20260316223646j:image

※当代随一の演技派女優を生んだアイルランドのキラーニー。ヲタクは30年前にアイルランドを旅した時、立ち寄りました。森と湖に囲まれた、童話のように美しい土地です。

 

 端正で理性的な英国人俳優と違い、アイルランド出身の俳優は感情爆発、情念剥き出しのタイプが多いんです。そしてその一方で、沈むゆく夕陽の民族と言われたケルト人の血が騒ぐのか、壊れそうな繊細さ、時には狂気を垣間見せる。

 

 男性で言うなら、古くはピーター・オトゥール(『アラビアのロレンス』)まで遡ります。現在、中堅〜ベテラン勢ではキリアン・マーフィ、コリン・ファレル、アンドリュー・スコット、エイダン・ターナー、若手では『ハムネット』でジェシーの相手役を務めたポール・メスカル、バリー・コーガン、女性ならシアーシャ・ローナン、そして我らがジェシー・バックリー❗️……ね、何だか系統が見えてきたでしょう❓️

f:id:rie4771:20260322093550j:image

※ケルトの情念を宿したアイルランド人俳優たち。

(上段左から)エイダン・ターナー、キリアン・マーフィ、コリン・ファレル

(中段左から)ポール・メスカル、アンドリュー・スコット

(下段左から)シアーシャ・ローナン、バリー・コーガン

 

 またアイルランドには、イェーツやグレゴリー、ジョン M. シングを輩出したアビー座(Abbey Theatre)をはじめとした舞台文化の確たる伝統があるので、映画やTVで活躍するアイルランド人俳優も、舞台出身の人が多いんです。ジェシーもまた名門・王立演劇学校の出身で、シェイクスピアをはじめとして数々の舞台を踏んできました。

 

 ヲタク、NTL(ナショナル・シアター・ライブ)で、ジェシーとジョシュ・オコナーの『ロミオとジュリエット』観ましたけどね、ジェシーのジュリエット、情念の爆発、凄かったですよ。なんかジュリエットの情熱にロミオが巻き込まれ事故…みたいな感じで(笑)

 

 昔から、アイルランド人俳優が演じると、「舞台が燃える🔥🔥」って言われてるらしい😅ジョシュ・オコナーも、苗字(オコナー)から見るとアイルランド系な筈なんですが、出身はイングランドのチェルトナムだよなぁ…。生粋のアイルランドっ子の炎には敵わなかったかな(笑)

 

 今回のアカデミー賞受賞式のスピーチでも彼女、ありったけの喜びと、関係者や家族に感謝を爆発させていましたよね。特に、遠くアイルランドから駆けつけたご両親を前にしてのスピーチ-------

 お父さん、お母さん、夢を見ることを教えてくれてありがとう。

自分自身の情熱を貫くことを教えてくれてありがとう。

は、聴く者全員の心を打ちました。

 

 アカデミー賞の前にジェシーは、『キャバレー』のヒロイン、サリー・ボウルズ役で、2022年英国演劇賞の最高峰と呼ばれるローレンス・オリヴィエ賞(ミュージカル部門)を受賞していますが、それも彼女のキャリアを考えると象徴的ですよね。

f:id:rie4771:20260316184714j:image

※2022年、エディ・レッドメインと共にローレンス・オリヴィエ賞を受賞したジェシー・バックリー

 

★そして、ジェシー・バックリーのこれから

 彼女の演技人生で最高の演技を見せていると言われている、アカデミー主演女優賞の対象作品『ハムネット』(シェイクスピアの息子ハムネットの死と、それを乗り越えようとする夫婦を描いた歴史ドラマ)彼女は作中で、文豪シェイクスピアの良き妻アン・ハサウェイを演じています。(日本公開は4月10日)

 

 そのすぐ1週間前(4月3日)に公開されるのが、これまた『ハムネット』とは対極、アバンギャルドでぶっ飛んだフランケンシュタインの花嫁を演じる『ザ・ブライド❗️』

 

 ジェシーとはすでに『ロスト・ドーター』でタッグを組んだマギー・ギレンホールが脚本・監督を務め、怪物フランケンシュタインを演じるのがあの名優クリスチャン・ベール。男女の違いはあれど、同じカメレオン俳優のガチ対決ですね。こちらも楽しみ。

f:id:rie4771:20260316185838j:image

 古代ケルト人にとって炎とは、単なる暖房や照明ではなく、「清め」「保護」「再生」を象徴する神聖なエネルギーでした。
 

 そんなケルトの情念をその身に宿した女優、ジェシー・バックリー。これから彼女がどんな炎をスクリーンに放つのか、ヲタクはまだまだ追いかけ続けたいと思います。

 

👇️ジェシー・バックリーのことがもっと知りたい方はコチラ👇️

 

『なぜ今ジェシー・バックリーなのか❗️❓️

前哨戦制覇の理由がわかる映画5選+番外編』

https://www.rie4771.com/entry/2026/01/06/%E3%81%AA%E3%81%9C%E4%BB%8A%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B%EF%BC%9F%E5%89%8D%E5%93%A8%E6%88%A6%E5%88%B6%E8%A6%87%E3%81%AE