オタクの迷宮

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光と翳の迷宮〜黒沢清『黒牢城』と本木雅弘という怪物

 本日6/19(金)は、黒沢清監督待望の新作『黒牢城』公開初日❗️

 

 『スパイの妻』以来、なんと6年ぶり❗️に黒沢監督の作品に出逢える高揚感を胸にやって参りました、横浜地下鉄ブルーライン上大岡駅直結のシネコン「109シネマズ上大岡」。

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★監督はJホラーの巨匠、黒沢清監督

 1997年の『CURE』や2001年の『回路』がJホラーの金字塔として海外でも絶賛された黒沢監督。ありきたりな日常が少しずつ歪んで破綻し始め、異界に引きずり込まれる恐怖(あるいは快楽❓️笑)を描いたら、監督の右に出る方はいません(断言)。そういう意味では、あの名作『トウキョウソナタ』も、ホラーに分類されてもおかしくない…かも😅

 

 まるでカラヴァッジョの絵画のような強烈な"光と翳"の演出によって圧倒的な映像美を創り上げ、ホラー映画の芸術性を極限まで高めたのも監督の大いなる功績と言えるでしょう。

 

 監督の数ある名作群の中で、ヲタクおススメは何と言っても『スパイの妻』(2020年)❗️太平洋戦争前夜の満州。スパイの嫌疑をかけられた夫(高橋一生)に、「夫婦なんだから秘密は持たないで。私に全て話して」と迫る妻(蒼井優)に対してあくまでも沈黙を守る夫。彼の顔が光と翳の真っ二つに割れる恐ろしくも美しいシーンは、邦画至上屈指の名場面であると、ヲタクは今でも信じて疑いません。人間の持つ二面性と、心の奥底に潜む光と闇を、こんなにも耽美な映像で描ける監督は他にいるでしょうか-------。

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※カラヴァッジョもかくや…と思わせる"光と翳"の映像芸術『スパイの妻』

 

★そして『黒牢城』へ

 かつて織田信長の重臣でありながら、信長の極悪非道ぶりに憤って反旗を翻し、臣下と共に摂津の有岡城に立て籠もった武将・荒木村重(本木雅弘)。しかし、同盟国から次々と裏切られ、頼みの綱の毛利は優柔不断、有岡城は刻々と織田軍に包囲され、孤立無援の状態に。 元はと言えば丹波の出、摂津では余所者扱いの村重は、人心を掌握するため、戦という戦に勝ち続けるしか生き残る術はないのです。


 そんな極限状態の中、城内では不気味な殺人事件や怪事件が相次いで発生。動揺する家臣たちや民の結束は揺らぎ始め、果ては城主である村重に疑念を抱くように…。
そこで村重は、村重説得のため有岡城に赴きながら、反対に捕らえられて城の地下牢に閉じ込められている織田方の軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)に謎の解明を求めます。 

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・冬〜自念(人質として囚われた14歳の少年・荒木自念殺人事件)

・春〜首(合戦で挙げた相手方大将の首すり替え事件)

・夏〜寅申(村重秘蔵の茶壺"寅申"盗難事件)

・秋〜天罰(織田方間者の不審死)

 臣下の命を救うため無血開城を目論む"不殺"の武将・村重と天才軍師・官兵衛は、これら4つの難事件の謎をどう解き明かしていくのか❓️

そして、それらが行き着く先は果たして極楽か地獄か❗️❓️

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★本木雅弘の圧倒的な存在感

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 摂津一国の城主でありながら、"国盗り"や名誉の討死、武士の本懐に疑念を抱き、さりとて御仏の道にも救いを見出だせず、茶の道に一縷の望みを託す、戦乱の世に生きながら、まるで近代人の懐疑主義を身にまとっているような荒木村重像を、なんと魅力的に、なんと粋に、"軽み(かろみ)"を以って本木雅弘は演じたことか❗️

 

映画館の巨大なスクリーンを、彼が圧倒的に"支配"していたのです。

 

 茶道を極めた粋人であった村重を演じるに当たり、厳しい茶道の修行に取り組んだと言う本木くん。彼が作品中で茶を立てる所作は、恐ろしいほど端正で美しいです。

 

 昔むかし、(若い世代はご存じないでしょうが😅)「シブがき隊」という、旧ジャニーズ事務所のトップアイドルの一員だったもっくん(あえてこの呼び名で…笑)。しかし彼の烈々たる表現欲は、「アイドル」という殻は小さすぎたようで、1988年、弱冠23才でジャニーズ事務所を飛び出した後、『ファンシイダンス』、『シコふんじゃった。』で先鋭的な演技を披露、さらには1992年に「アノ」NHK紅白歌合戦にソロ出演した際、コンドームに見立てた風船を首から下げ、さらにはズボンを下げて臀部を露わに------。

 

 ヲタク思うに、本木雅弘は良くも悪くも予定調和的な日本の芸能界において、狂気を秘めたアバンギャルドな演技もしくはパフォーマンスのできる稀有な俳優なんだと思います。

 

 そんな本木・ザ・アバンギャルド・ザ・グレートに、本作品で果敢に挑戦したのが、日本演劇界若手トップランナーの菅田将暉。さすがに凄みのある演技を見せますが、やはり本木雅弘と互角に渡り合うには10年早かったか。

 

 -------しかし菅田くんはまだ33歳。親子ほども年が違う本木くんと比較するのはいかにも酷というもの。

 

 菅田将暉くんと言えば、ヲタク思い出すのが彼の、デビュー当時を振り返ったインタビュー。念願叶って俳優デビューしたものの、当時アイドルとして彼を売り出したかったマネージャーと対立、悶々とした日々を送っていたと吐露していたっけ。(その後映画『共喰い』で青山真治監督の厳しい薫陶を受け、演技開眼したのは周知の通り)菅田くんの、その貪欲なまでの"表現欲"は、20代そこそこでジャニーズ事務所からの独立を選択、敢えてイバラの道を選んだ本木くんの生き方に一脈通じるものがあると、ヲタクは感じました。

 

本木雅弘という演技の巨人に、果敢に挑戦した菅田くんに拍手❗️

 

★舞台挨拶ライブビューイング

 そしてそして、映画鑑賞後は初日舞台挨拶のライブビューイング〜〜、ぱちぱちぱち👏👏👏❗️

黒沢清監督をはじめとして、主演の本木雅弘、菅田将暉はもちろん、吉高由里子、オダギリ・ジョー、柄本佑、宮舘涼太、青木崇高と、綺羅星の如きメンツが次々登場、スクリーン越しにも眩しすぎて目が潰れそう(笑)ナマで見たりしたら生きて帰れないな(笑)

 

 本木くんの、黒沢清監督お得意の❓️恐怖の長回しエピソード(台本6〜7頁分の台詞を一気に喋りまくる😅)の告白から始まり、ラスト黒沢清監督の

荒木村重役の本木雅弘さんが、城主として臣下に檄を飛ばすシーン。カットがかかった直後に本木さんが「ああやっぱり…(俺って)向いてないな」って呟いたんです。ああ、本当の大スターってこういうものだ、って思ったんです。村重その人もまた(自分は戦国武将に向いてない)と思い続けた人だから…。

で締めくくる素晴らしい舞台挨拶でしたね。

 

 そして、ヲタクの胸を最も打ったのが、本木くんのこの言葉。

(映画が)公開され、新たな航海に出たわけですが、(自らの演技を振り返って)私の後悔が始まるのです。

という本木くんの言葉から、表現者というよりむしろ、彼の、表現の求道者ともいうべきストイックな側面が垣間見れて、ますます感動😭たぶんこれからヲタクは、しばらく本木くんの表現者としての軌跡を辿るべく、旧作鑑賞の旅に出てきます(笑)

 

 カンヌ国際映画祭でスタンディングオーベーションを受け、Hollywood Reporterから「『黒牢城』は刀ではない、言葉で斬り合う稀有な時代劇」と絶賛されたこの作品。日本各地の名城をロケ地に選び、細部に至るまであくまでも"本物"にこだわり、黒沢監督特有の"光と翳の芸術"も健在。

 

 歴史映画でありながら、これは戦の映画ではなく、人間の心の光と闇を探るミステリーでした。黒沢清監督は城という閉ざされた空間を、一つの巨大な迷宮へと変貌させ、武士たちの甲冑の行進に降り注ぐ月光さえ、究極の映像美へと昇華してみせた。

 

-------そして、その迷宮を切り裂くのは刀ではなく、人間の言葉だったのです。

 

 さあ、近くの映画館で、この光と翳の迷宮を、ぜひその目で目撃してほしい。