オタクの迷宮

映画・ドラマ・舞台レビュー、ケルト文化、滅びの美学、推し活のつれづれまで── 観て、感じて、考える。 "好きなモノ・人"についてしか語らない偏愛のブログ。そして今日もどこかで、ヲタクが迷走中。

追う男、逃げる女──イ・ジュニョク×シン・ヘソン『サラ・キムという女』に酔う

 Netflixにて、ヲタク激推し、韓国俳優イ・ジュニョク氏ご出演、『サラ・キムという女』鑑賞。"サスペンス・ミステリー"ジャンルに分類されてはいますが、韓国ドラマには時折、「犯人探し」ではなく、「人間そのもの」に取り憑かれてしまう作品があります。

 

 作品ごとに体型から表情、立ち振舞、声音を変え、"当代きってのカメレオン俳優"の異名を持つジュニョク氏、今回演じるのは、国内超高級ブランドの重役サラ・キム殺人事件を執拗に追い続ける刑事役。ひとたびジュニョク氏が演じると、その心中に大きな"闇"を抱えていることを匂わせ、犯人を追う刑事を演じながら、自分自身が追われる男にも見えてしまう。演じるキャラの複雑な人間性を繊細に表現できる点が、演技者としての彼の1番の魅力❗️

f:id:rie4771:20260630133235j:image

★ざっくり、あらすじ

 ソウルの一等地にある排水溝で、身元不明の女性の遺体が発見されます。被害者は、国内で人気上昇中の高級ブランド「プドゥア」のアジア支社長、サラ・キム(シン・ヘソン)と断定されます。

 担当になったのは、ソウル警察の切れ者刑事パク・ムギョン(イ・ジュニョク)。調べを進めるうち、サラ・キムは偽名で、有名セレブに上り詰めるため、今まで何度も偽装死を繰り返しては"別の人生"を生きてきたことが明らかになっていきます。まるで何かに取り憑かれたように、彼女の過去を探り始めるムギョン。そして----------。

 

★これ以降はストーリーのネタバレが含まれますので、注意。

f:id:rie4771:20260630134045j:image

 ムギョン刑事は、実は最初発見された遺体は別人のもので、サラ・キムは生きていることを突き止めます。

 

 彼女の過去を探るうち、謎の女サラ・キムにまるで魅入られたように事件にのめり込んでいくムギョン。ついには彼は刑事生命まで賭けて危ない橋を渡ることになるのですが、果たしてそれは執着なのか、刑事としての野心なのか、サラ・キム自身に対する愛憎なのか---------。寡黙な中に、次第にその眼にチラチラと狂気めいた炎をチラつかせていくムギョンを、その眼の動きだけで表現するイ・ジュニョク氏、さすがの演技力です❗️

 

★ここが見どころ❗️

 第5話、サラ・キムの生存を確信したムギョンは上司が止めるのも無視し、独断で公開捜査に踏み切ります。ところがまるでそれを察知したかのようにサラ・キムは自ら警察に出頭、追う男と追われる女が初めて対峙するシーン。

 

 彼女の詐欺罪を立証するため自白に持ち込もうと、畳み掛けるように尋問するムギョンを薄笑いを浮かべながらのらりくらりとかわすサラ・キム。------こう書いているとトンデモない悪女みたいですが(笑)何せ演じてるのが妖艶な存在感を放つシン・ヘソンなんで😅、ムギョン刑事が心を揺さぶられないのが不思議なくらい(笑)

 

 心理分析に長け、相手の心を一瞬で掴んでしまうサラ・キム。安物の時計をしているムギョンに、

今日してる時計はダメね。

お金が無いの?

人の目なんて気にしないわけ?

それとも気にしないフリして貧しさを隠してるの?

と突っ込みます。

 

 自らのコンプレックスを逆手に取られ、ショックを受けて目が泳ぐムギョン。イ・ジュニョク氏の"視線の動き"が素晴らしいので見逃さないで❗️  

 

 このシーン、映画『羊たちの沈黙』(1991年)のアンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターの対決シーン、思い出しますねぇ…。

 

 サラ・キムを尋問で自白させられず、強硬な捜査方法も相まって、上司から「これで失敗したらお前の将来はないと思え」と切り捨てられるムギョン。それを陰で聞いていたサラ・キムは、「ムギョン刑事にしか話はしない」と言い出して------。

 

 シン・ヘソンとイ・ジュニョク、韓国の2大カメレオン俳優の演技合戦はドキドキするほどスリリング。正統派の推理物というよりむしろ、被疑者と刑事という立場を超え、虚偽と真実を巧みに繰り、法をかいくぐる女と、その虚飾を剥ぎ取ろうとする男の、まるで一種の恋愛バトルのように思えてくるから不思議です。何しろ2人とも醸し出す色気が物凄くて😅ムギョンがDNA鑑定のためにサラ・キムの口の中に綿棒を入れる何でもないシーンにまでドキドキしちゃうんですよ(笑)

f:id:rie4771:20260630141818j:image

 普段はイ・ジュニョクを"先輩"と呼び、限りない信頼を寄せていると語るシン・ヘソン(左)。スクリーン外の彼女は、親しみやすい、良い意味で"普通のお嬢さん"ですが、サラ・キム役の抗い難い色香はどこから来るんでしょう(笑)

 

一方でジュニョク氏も、「欲望を抱くキャラクターに惹かれます。その点でサラ・キムはとても興味深い。ムギョンという役も、俳優として一度は通過し、身につけたい要素が多いキャラクターで、挑戦的な選択でした」と語り、「シン・ヘソンがサラ・キムを演じると聞いて出演を決めた」そうです。

 

 サラ・キムを追っていたはずのムギョンは、いつしか彼女の人生そのものに囚われてしまう。
人は真実を追い続けると、時に真実以上に、その相手に魅せられてしまうのかもしれない。

 

---------そんな危うい男女の関係を描いた、大人のための心理サスペンスでした。