久しぶりの『歴史上のイケメン列伝シリーズ』、本日ご紹介するのは、フランツ・リスト。爛熟の19世紀末ヨーロッパのロマン派音楽を代表する、ハンガリー出身のピアニストであり作曲家です。

彼は音楽史上最初のピアノ独奏会(リサイタル)を開催し、一人で全ステージを弾き通すスタイルを定着させた、所謂プロデューサー的才能も持ち合わせていた人。
彼のコンサート会場では、ファンの女性たちが失神したり、ヒステリックに叫び声をあげる現象が頻発、果ては彼女たち、リストが捨てた壊れたピアノの弦や、吸い殻、コーヒーの飲み残しなどを奪い合って記念品にしたと言われ、"リストマニア"という造語まで飛び出す始末😅
ドイツの音楽家パウル・ヒンデミットは
19世紀になり音楽の所有者は王侯貴族からブルジョワに変わっていった。そしてそれによって誕生した大量の「聴衆」は音楽にひたすら快楽をもとめ、音楽の官能的誘惑に服従するようになったと言い、彼らを「奴隷的聴衆」と呼びました。リストマニアたちはその最たるものだとも。
----------しかしヲタクが惹かれてやまないのは、その冷たい美貌で、そしてその神がかり的なピアノの超絶技巧で、聴衆を官能の坩堝に引きずり込む誘惑者リストではありません。その裏に潜む、ストイックを通り越してマゾヒスティックとさえ言いたくなるほどの克己心と鍛錬なのです。
リストは19歳の時、その人間離れした演奏から「悪魔に魂を売ったバイオリニスト」と呼ばれたニコロ・パガニーニの演奏を聞き、まるで雷に打たれたような衝撃を受けたそうです。
「僕はいつかパガニーニを超える」
そう決意した彼は、
私は狂ったように練習する。
1日4時間ピアノに向かい、その後も3時間ひたすら運指を繰り返す。
と、友人の手紙に書き綴っています。
その執念とも言える鍛錬の果てに生まれた超絶技巧練習曲の代表格が、あの『ラ・カンパネラ』なのです。
演奏会の度に繰り返されるリストマニアたちの熱狂の渦。しかし彼はそのさまに一瞥もくれず、舞台袖に戻ると、ただ一人、そこに無言で佇んでいたと言います。
生涯、ただひたすら音楽の高みを目指し、自らの技巧を磨き続けた男。
ヲタクの脳裏には、周囲の熱狂をよそに、ただただ禁断の音楽の神の領域に踏み込もうとする、まるでイカロス(太陽の神に近づこうとして墜落した少年)のような、孤高の音楽家の後ろ姿が、浮かんでは消えるばかり。
ヲタクはこれからも、一人静かに何かに向かい続ける推したちの後ろ姿を、飽きることなく追い続けていくのだと思います。この『オタクの迷宮』を、読者の皆さんと共に歩きながら-------。