オタクの迷宮

🎬️映画・ドラマ・舞台レビューから、韓流、ケルト文化、滅びの美学、横浜グルメ、ミステリー、推し活のつれづれまで── 観て、感じて、考える。 "好きなモノ・人"についてしか語らない偏愛のブログ。そして今日もどこかで、ヲタクが迷走中。

家族と言う名の密室地獄-----韓国映画『白い車に乗った女』

 U-NEXTにて、韓国映画『白い車に乗った女』鑑賞。人によって異なる記憶と証言が錯綜し、観ている私たちを迷宮に誘い込む、衝撃のサイコスリラーです。

f:id:rie4771:20260810182409j:image

 ソウルから遠く離れた、雪深い田舎町。ある日の明け方、救急病院にドギョンと名乗る女(チョン・リョウォン)が、脇腹を刺されて瀕死状態の女性を連れて現れます。ドギョンは女性を抱きかかえ、「姉さん、死なないで❗️しっかりして」と泣き叫びます。しかし彼女自身の全身には、激しいDVの傷跡が------。事件の真相を追う女性警察官ヒョンジュ(イ・ジョンウォン)の捜査により、彼女が姉と呼ぶ女性(チャン・ジニ)は、全くの他人だと言うことが判明します。重度の統合失調症を患っているというドギョンの証言は二転三転し、彼女の激しい感情の起伏に悩まされ続けるヒョンジュ。粘り強く捜査を進めるヒョンジュが、最後に辿り着いた衝撃の真実とは------❗️❓️

 

 ストーリー自体はミステリーなので、これ以上ネタバレは控えますが、その底流にあるのは、いまだ韓国社会に根深く存在する"家父長制や機能不全家族(毒親)が与えるトラウマ"と、そこからの"解体・脱出"という社会的なテーマです。

 

 まず、女性警官ヒョンジュの人物設定からしてそう。暴力的な父親から受けた言動や過去のトラウマが、子供の頃の夢だった警察官になった今でも彼女の自己評価を低く抑え込み、能力がありながらも身動きができない状態を作っています。彼女自身、「どんな酷い親であっても、産んでくれた親に感謝しなくてはならない」という呪縛に囚われているのです。
 

 だからこそヒョンジュは、家族を守るため、あるいは家族から逃れるために嘘を重ねざるを得ないドギョンの真の姿を理解し、果ては事件の真相を突き止めることができたと言えるでしょう。

 

​ 韓国映画やドラマで繰り返し描かれてきた、家族という共同体の強固さ。それは人を守る温かな砦になります。しかし一方で、一度歪めば、外部から容易に介入できない“密室の地獄”にもなり得るのではないか-------。ヲタクはこの映画を観て、そんな感想を持ちました。

 

 極上のミステリーであると同時に、韓国が抱える闇深い問題を抉った社会派ドラマとも言える『白い車に乗った女』。

 

 一見救いのないストーリー展開に見えますが、ヒョンジュがドギョンとの出会いを経て、「親が親らしくあってこそ敬意を払うべきだ」と気づき、自分を縛っていた過去の枷(かせ)を自ら外していく姿は、私たち観客にとって、一筋の光と救いを指し示すラストになっています。凄惨な事件を扱いながらどこか温かな感覚が残るのもそのせいかな------と。

 

 また、主役の女性2人を演じたチョン・リョウォンとイ・ジョンウォンの鬼気迫る演技合戦も見どころの1つと言えるでしょう。