オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

マーロウ❤LOVEが凄い🎵〜リーアム・ニーソンの『探偵マーロウ』

 
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 ヲタク大好きフィリップ・マーロウ

 

 マーロウと言えば「名言集」。若い頃は、あの有名な「ギムレットには早過ぎる」とか、「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」なんてキザなセリフにシビレてたけどね。「ギ、ギムレットって何❗❓オムレットとは違うよね」って、当時はネット検索なんて出来ないから、図書館に行って「※カクテル大辞典」なんて本で一生懸命調べたりして(笑)

※このテの辞典にはお世話になったわ。伊丹十三の『女たちよ!』に出てきた「ミモザ」とか、ジェームズ・ボンドの「マティーニをステアで」とかね(^.^;

 

 …まあでも年取ってくると、そういうカッコいいキメキメ台詞よりむしろ、

背が高いのね」と娘は言った。
「僕のせいじゃない」

とか、

 

シャーロック・ホームズでもファイロ・ヴァンスでもない。警察がすっかりさらった現場へ後から行って、壊れたペンかなんか拾って、それから事件を推理する、なんて器用なまねはでききやしない」

なーんて、

皮肉で自嘲的なマーロウの台詞のほうが好きになってくる。

 

 ……というわけで、KINOシネマ横浜みなとみらいで『探偵マーロウ』鑑賞。

 

 時は1940年代。ナチスドイツがその勢力を不気味に拡大し始めた頃。ロスの街で探偵業を営むフィリップ・マーロウリーアム・ニーソン)。ある日彼の事務所を訪ねてきたのは、セレブなブロンド美女クレア(ダイアン・クルーガー)。「突如として失踪してしまったかつての愛人ニコ(フランソワ・アルノー)らしき男を、メキシコ・ティファナの高級クラブの前で見かけた。彼を探し出して欲しい」との依頼を受け、マーロウはその男を探し始めます。しかし映画の小道具係として働いていたというニコは、轢き逃げ事故で死亡したことになっています。果たしてクレアの言う通り生きているのか❓生きているとしたら、轢き逃げされた男は一体誰❓マーロウは、クレアの母で往年の名女優ドロシー(ジェシカ・ラング)ら、ハリウッドの関係者たちに聞き込みを行い、ニコ失踪の謎に迫ろうとしますが、同時に彼は、魑魅魍魎が跋扈する「ハリウッドの闇世界」に足を踏み入れてしまい……❗


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原作のタイトル通り「黒い瞳の」ブロンド美女、ダイアン・クルーガー。マーロウはいつものお約束、彼女に誘惑されてついついヨロメキます。ハードボイルドと言いながら、なんだかんだ言ってマーロウって恋愛体質(笑)

 

 マーロウもの……といっても、レイモンド・チャンドラー作ではなく、ジョン・バンヴィルがチャンドラーの『長いお別れ』の後日譚として2014年に発表した『黒い瞳のブロンド』(The Black-Eyed Blonde)の映画化。ニール・ジョーダン監督やリーアム・ニーソンをはじめとして、スタッフ、キャストが一丸となって創り上げた、「マーロウ愛」に満ち満ちたオマージュ作品の趣きです。原作では『長いお別れ』の最重要人物であるレノックスが登場するらしいのですが、今回の映画では後日譚的要素は意識して排除しているようなので、前知識がなくても十分楽しめるでしょう。マーロウは彼自身も言っているように、ホームズやヴァンスと違い、「人探しが殆どのしがない探偵」なので、今回も人探しをきっかけに巨悪の陰謀に巻き込まれる……というチャンドラー作品のパターンはしっかり踏襲されております。


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ヒロインの愛人で、イケメン色事師ニコにはフランソワ・アルノー。この人どっかで見たことあるなー、と思っていたら、『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』のチェーザレ役の人ぢゃん❗アレクサンドル6世役ジェレミー・アイアンズの怪演に押され、マキアヴェリズムの体現者チェーザレにはちと荷が重かったようですが(^_^;)今回みたいな、軽めの小悪党役にはピッタリハマるね。(注・誉めてます 笑)

 

 レイモンド・チャンドラー原作に登場するマーロウは40代なので、「70才のリーアムがマーロウなんて考えられない!」っていうコメントもネットで散見されますが(原作のファンの方が多いかな❓)、ヲタクは丁度いいと思って見てましたよ。原作の時代背景は1940〜50年代で、男性の場合「人生50年」って言われていた時代ですから、当時の40才と言えばそろそろ人生の行く先が見え始める頃。じゅうぶん年寄りです(笑)マーロウものの映像作品の中では傑作として名高い『さらば愛しき女よ』(1975年)でマーロウを演じたロバート・ミッチャムは当時58才で、映画の中でも「俺だってこんな仕事辞めて、保険で暮らしたい」なんてセリフがあるし(^.^; 考えてもみて。サザエさんのお父さん、波平さんが54才ですよ❗54才って言ったら、今は福山雅治だよ❗撮影当時70才だったリーアムがマーロウを演じても、なんの不思議もございません(断言)。かえって、今までの「ネバー・ギブアップ」リーアムでは、人生にお疲れ気味のマーロウ役には元気過ぎるきらいがあるので、70才になって演じたのはちょうど良かったよ、うん。


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まるで自身を模したようなドロシー役を演じたジェシカ・ラングアカデミー賞エミー賞トニー賞の演技3冠を達成した大女優です。

 

★今日のオマケ

 

①マーロウの拠点はロスなんで、脛に傷を持つヤバい人たちが逃げ込む先として、今回の作品もそうですが、よくアメリカとの国境近くのメキシコの町ティファナが出てきます。ヲタクは7年前、娘ファミリーの赴任先であるチュラヴィスタ(ティファナから車で約30分。さらに15分ほど北上するとサンディエゴに着きます)に2週間ほど滞在したので懐かしかったですね。チュラヴィスタではメキシコからの不法滞在者の車がバンバン走ってて……。総じて車はボロボロ、運転も荒い(^.^; ハンドルを握る娘がメキシコナンバーの車を見かけると、途端に緊張してピリピリしていたのを思い出します。

 

②作品中、重要キャストであるクレアの母親、ドロシー(ジェシカ・ラング)が英国出身という設定だからか、マーロウの苗字のモジリや(シェイクスピアと同時代の劇作家クリストファー・マーロウから)、ジェームス・ジョイスに引っ掛けたアイリッシュに対するさりげないディスり、また時代背景がナチス台頭時なのでレニ・リーフェンシュタールへの言及など、文学・映画ネタが多かった印象。(チャンドラーの原作にはこの手の小ネタはほぼ皆無だった記憶があるので…)