オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

アジアン・ミステリーの湿度の高さよ〜『告白、あるいは完璧な弁護』

 
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 KINOシネマ横浜みなとみらいにて、韓国映画『告白、あるいは完璧な弁護』鑑賞。

 

 IT企業社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)の不倫相手であるキム・セヒ(ナナ)の他殺死体が、ある日ホテルの1室で発見されました。部屋は完全なる密室。ミンホは同じ部屋にいたものの、セヒ殺害時にはガラス窓に頭部を殴打して意識を失っており、ホテルの部屋には元々何者かが潜んでいたのだと主張します。事件の第一容疑者となったミンホですが、経済界の大立者である義父の尽力により、彼に対する検察側の勾留請求は棄却されます。ミンホは来るべき裁判に向け、完璧な弁護で必ず無実を勝ち取ると評判の辣腕弁護士ヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自身で事件の真相を探ろうと動き出します。吹雪の中、シネは今後の戦略を共に練るべく、ミンホの山荘に駆けつけます。何かを隠匿している様子のミンホに、「真実を話さなければ弁護はできない」と詰め寄るシネ。彼女の説得により、ついにミンホが語り始めた驚愕の真実とは……❗❓

 

 様々な観点から相手の論理の矛盾を衝き、真実を引き出そうとする弁護士と、それが露わになることを恐れる被疑者との間の、緊迫した密室の会話劇。その時々の供述によって登場人物のキャラがどんどん変化していき、観ている私たちはミスリードされ、どんでん返しに次ぐどんでん返しで、いやもう、すっかり騙されました(笑)

 

 どんでん返しが凄い、ヲタクお薦めのマインドファック映画と言えば、『女神は2度微笑む』(インド)、『ピエロがお前を嘲笑う』(ドイツ)、『イントゥ・ザ・ラビリンス』(イタリア)、『ユージュアル・サスペクツ』、『アイデンティティー』(アメリカ)と数々あれど、皆どちらかと言えば乾いた味わい。一方で、ミステリーの種明かしがされた後、どうしようもなくやるせない、人生の不条理や哀切さが胸に迫ってくるのは、例えば『オールド・ボーイ』(パク・チャヌク監督)、『薄氷の殺人』(ディアオ・イーナン監督)、『ゼロの焦点』(犬童一心監督)等と同様、アジアン・ミステリー特有の湿度の高さゆえかとも思うのですが、どうでしょう❓ポスターのクレジットに「この男を救え」とありますが、観終わった後に「救済」の意味を考えると‥‥‥深い❗深いです。

 

 
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※「世界で最も美しい100人」第1位にも選ばれたことがあるというナナ。すっかり演技派女優に転身。

 

 

 先に述べたように、容疑者であるユ・ミンホと弁護士ヤン・シネの対話によって展開する密室劇なので、ミンホの回想、シネの推理により、事件の展開が急転換します。つまり、それに伴って関係者の人物像もガラッと変わるわけです。キャストたちは、自らが演じている登場人物が知っている(と思われる)情報、観客が知り得ている情報をその都度チェックし、監督から、二転三転する物語に合わせた緻密な演技を要求されたと言います。個人で、そしてグループで、なんと10回以上に及ぶセリフの読み合わせが、そして綿密なリハーサルが行われたそう。彼らの激しい演技合戦も見どころの1つとなっています。

 

★今日の小ネタ

 主人公の不倫相手を演じているのが、韓国のガールズグループ「アフタースクール」のナナ。アフタースクールといえば、安室奈美恵とMVで共演していたのと、赤いミリタリールックで、ドラムを叩きながら一糸乱れぬパフォーマンスを見せていたくらいの印象しかないんですが(汗)その一員であるバリバリアイドルのナナ(……っていうか、今は彼女1人しか在籍していないらしい(^.^;)が、こんな素晴らしい女優さんになっていたなんてビックリです。ストーリーの展開上、ロングヘアとショートカット姿両方で登場します。ナナのファンは今すぐ映画館へ急げ❗