当代随一のスポーツ記者キルステン(ルーシー・リュー)のアシスタントを勤めるハーパー(ゾーイ・ドゥイッチ)と、投資は天才的でも社会通念はお構いなし、パワハラも日常茶飯事のリック(テイ・ディグス)のアシスタント、チャーリー(グレン・パウエル)。同じビルで働く2人は、仕事のアシストばかりか、上司の子供の宿題や私的な誕生祝いの手配までさせられ、連日深夜まで働き詰め、プライベートな時間なんてほとんど皆無。そんなある日の深夜、ビルのエントランスで互いのボスの夜食の宅配を奪い合った2人は、自分たちが同じ立場にいることに気づきます。心身共にキテる2人は、お互いのワーカホリック&パワハラ上司をくっつけて恋愛に発展させれば、自分たちもこの奴隷生活から少しは開放されるのでは❓…と考え、作戦を立てて実行し始めますが……。
※宅配の夜食を奪い合うという最悪の出逢いをしたハーパーとチャーリーですが…。
上司をくっつけようと悪戦苦闘するうちに互いが気になり始める…というのはロマコメの王道だけど、それと同時に、彼ら自身もまた自分の仕事や恋愛、生き方を真摯に見つめ直すことになる、そのプロセスが胸アツ❗
「昔自分が読んで感動したような記事をいつか自分も書きたい」と思って、ジャーナリズム業界に飛び込んだハーパー。でもいつのまにか、カリスマ記者であるキルステンへの憧れが高じて、自分の滅私奉公がキルステンに良い記事を書かせるのだと無意識に思い込み、忙しさを理由に記事を書く努力も止めてしまった。キルステンとの自己同一化が生まれてしまったんですね。それは裏を返せば、ハーパーが心理的に、自分自身を矮小化し始めたことに他なりません。チャーリーはそんなハーパーの本心を見抜いて、「それは良くないな。君は最低の部下だ」とズバリ言います。あ〜、良いですねぇ。性差を超えて、的確な仕事のアドバイスをくれる異性の友達ってなかなかいないんだよな。(この段階ではまだ、2人はお互いの相性の良さに全く気付いていない 笑)あ、もちろんハーパーも言われっぱなしじゃ、ありません。その後チャーリーのセレブ志向なスノッブさをズバリ指摘して、ちゃんとリベンジ(笑)
※おサレなレストランのどんな豪華な食事より、気の合う人と頬張るピザの方が100倍美味しい。イマドキのロミオはピザの箱を片手にベランダへ駆け上る(笑)
主役2人の爽やかなロマンスと並行して、チャーリーとゲイのルームメイトであるダンカン(ピート・デヴィッドソン)、ハーパーとベッカ(メレディス・ハーグナー)の同性同士の友情がしっかり描かれているところも◎❗
ベッカが自分の結婚披露パーティーで、ダンナになる人の欠点をいろいろあげつらった後に、「And Yet…(それでも…ね)」と言い出し、「昔おばあちゃんが言ってた。それでも愛するものなのよ。人柄で好きになって、人柄に関わらず愛する……ってね」と結ぶんですが、これがラストのクライマックスでズバリ効いてきます。
※ハーパーのオニ上司キルステン役にルーシー・リュー(『キル・ビル』『チャーリーズ・エンジェル』)。御年54才とは信じられない、驚異のエイジレス。近年ハリウッドではアジアン旋風が吹き荒れていますが、彼女はフロンティアですよね。
おサレでパンチの効いた会話、「脚本家誰❗❓」って思って調べたら、米脚本家組合(WGA)が2021年に発表した「21世紀の最も優れた脚本101選」にも選ばれた映画『ブックスマート〜卒業前夜のパーティーデビュー』(監督 オリヴィア・ワイルド)の脚本家の1人、ケイティ・シルバーマンだった❗
仕事に恋に低気圧に少々疲れ気味のアナタ、ぜひこの『セットアップ〜ウソつきは恋のはじまり』を見てスッキリしましょ🎵