オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

ビー・ガンからチャン・チーへ〜『海街奇譚』


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 横浜黄金町のミニシアター「ジャック&ベティ」にて、中国映画『海街奇譚』鑑賞。中国新世代の旗手と言われるチャン・チー監督の作品。

 

 中国のある離島にふらりとやって来た1人の男。彼は売れない俳優のチュー。彼はある日突然失踪してしまった妻を探しに、かつて彼女と初めて出会ったこの島を訪ねてやって来たのだった。しかし彼は妻を探すふうでもなく、高級そうなカメラを持って島内を徘徊し、パチパチと写真を撮るばかり。海は荒々しく、波が堤防を打ち付ける中、彼はカブトガニの面を被った怪しげな集団が奇妙な儀式を行っているのに出くわす。彼らは島の漁師の一団で、漁師たちを守護するという仏頭が忽然となくなってしまい、それを探すための祈祷の儀式らしい。不思議なことにその島で、「なくしもの」を探しているのはチューや漁師だけではなかった。宿の女主人は双子の妹が行方不明となっており、ダンスホールの女将は夫が5年前漁に出たきり帰ってこない……。妻の行方を探すうち、チューの意識は過去と未来、夢と現実の狭間を揺蕩い始め……❗

 

 

 中国の映画というと、歴史モノか、あるいは独自の文化や国家の成り立ち、人々の日常を描いたもので、若干プロパガンダ的な匂いがするものが多い印象(作品の検閲も厳しそうだしね^^;)……しかしなんだろう、今作品でデビューした若手映画監督チャン・チーが描く世界は、夢か現か幻か、現実と妄想の境界線が曖昧模糊としていて、国家のコの字もない(笑)。この世界観ってどこかで見たことあるよね……と思ったら、『凱里(かいり)ブルース』や『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯へ』のビー・ガン監督の作品だった(^_^;)彼のこの2作は、現実と夢、おまけに時系列さえぼんやりしてるんである。ビー・ガン、現在34歳。『凱里ブルース』で衝撃の長編映画デビューを飾った時は若干25歳だったはず。ここ4年くらいとんとニュースにならないけど、元気なんだろうか……。

 

 物語は現実、夢、記憶の上に成り立っている。現実と記憶の中で起こるディテールが夢を作り出す。観客が映画の夢と記憶を区別して認識することで、記憶は混ざり合い、夢は記憶の一部となる。 この映画には想像のための広大な空間があり、時には不条理で混乱するようなテンポの悪さもある。複雑な物語構造とバロック的な視覚的メタファーは、静的でミニマルで夢のような映像に埋め込まれている。想像力をかき立て、共感覚をそそり、主観と客観の境界を曖昧にする。

 このチャン・チー監督の言葉は、5年前自らの作品について語ったビー・ガン監督のそれとそっくり。

 

 ストーリーは「これはいったいホラーかイヤミスか!?」って感じで進んでいきます。まるで夢魔の世界に迷い込んだみたいに……。これ以上喋るともはやネタバレになっちゃうんでこの辺でやめときますが(^_^;)この作品の特徴は、奇妙なほど「現在と未来」が抜け落ちていること。ラストにちらっと現在の中国の債券市場の厳しさが語られます。中国の若者を取り巻く「いま」は、甘やかな過去や夢の狭間に逃げ込まなければならないほど、閉塞的なんだろうか……。

 

 チャン・チー監督は今47歳。『写真の女』の串田壮史監督と対談されていましたね。ヲタクは以前、東京国際映画祭で『写真の女』拝見しましたが、そう言えば、主人公の無口な写真オタクキャラとか、主人公を翻弄するヒロインのファム・ファタールっぷりとか、かなり共通点があるかもね。

 

★チャン・チー監督と串田壮史監督の対談はコチラ❗🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻🔻


チャン・チー監督×串田壮史監督とのコラボ対談が実現 「越境するアートハウス映画の“表現と視座”」を語る|Cinemago(映画『海街奇譚』配給宣伝レーベル)のプレスリリース

『チャレンジャーズ』キャスト3人、METガラへ❗


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 アメリカでの公開はいよいよ間近に迫った超話題作(問題作?)の『チャレンジャーズ』(ルカ・グァダニーノ監督…日本での公開は6月の予定)。主要キャスト3人は数ヶ月前から、ミラノ、マドリード、パリ、ロンドン、ロサンゼルス…と、大プレスツアーを敢行中ですが、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催される※METガラのレカペに登場することが公式発表されました〜〜❗

※ニューヨークのメトロポリタン美術館で2023年5月に開催される特別展のオープニングセレモニー。世界中からセレブたちが集結し、各々のゴージャスなファッションを競い合うモードの祭典となっている。

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※ロサンゼルスのプレスツアーでの3人(左から、マイク・ファイスト、ゼンデイヤ、ジョシュ・オコナー)ファッションもL.Aスタイル。

 

 ラブロマンスの名手グァダニーノ監督(『君の名前で僕を呼んで』)が今回手掛けたのは、ケガのために選手生命を絶たれたスタープレイヤー(ゼンデイヤ)と、やはりテニスプレイヤーで彼女を愛した男2人(マイク・ファイスト、ジョシュ・オコナー)のラブ・トライアングル・ストーリー。予告編を見るだけでもかなり刺激的な内容みたいだし、昨年の情報では+R18指定になるんじゃないかってウワサだったから、今からソワソワしちゃいます(笑)。


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※3人ともテニスプレイヤーの役…ということで、半年間トレーニングで寝食を共にしたそうです。プレスツアーでの3人はいつもワチャワチャ楽しそう🎶

 

 SNSでは試写を見た人たちが絶賛の嵐で、あの辛口映画批評サイト「ロッテントマト」ですら、一時は満足度100%ついてましたからねぇ。否が応でも期待は高まるばかり。

 

 ちょうど2年前、スピルバーグ版『ウェストサイド・ストーリー』で、ジェッツのリーダー・リフ役を演じたマイク・ファイストに沼ったヲタク。その直後に『チャレンジャーズ』にキャスティングされ撮影が開始されたことが発表され、大喜びしたのもつかの間、あとはパッタリ(笑)昨年のカンヌ国際映画祭でプレミア公開されると発表されたものの、開催直前に取りやめに😭供給不足で喘いでいたところ、突如プレスツアーが始まってSNSにはマイクの動画やらセルフィーやらが溢れかえり、今度は全ての情報が追えずにアップアップ。……でも、この2年間のことを思えばまさに天国と地獄だワ。情報の波に溺れるなら本望よ(笑)


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※映画ではライバル同士のジョシュ・オコナー(左)

とマイク・ファイスト(右)ですが、プライベートではこの通り。上の写真はゼンデイヤが撮影したもの。

 

 フランス、イタリア、英国、スペイン、アメリカ……と、プレスで訪れる国に合わせてヘアスタイルもファッションも変えてくるおしゃれ番長の3人のこと、METガラではどんなスタイルで私たちを楽しませてくれるのか、乞うご期待❗

 

 

平安朝のシャーロック・ホームズ❗❓〜『陰陽師0』の安倍晴明


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 横浜駅直結のシネコン「Tジョイ横浜」にて、『陰陽師0』鑑賞。

 

 ご存知、実在した平安時代陰陽師安倍晴明の青年時代(陰陽寮の学生であった頃)を描いたもの。人間と怨霊が夜の暗闇の中で共存し、人外なる存在が広く信じられていた時代。政治は卦(うらない)によって決定されたほか、病や災厄、天変地異も何かの祟りか呪いと考えられていたため、厄を祓う祈祷の儀式を司る最も重要な※被官と目されていたのが陰陽寮だったのです。学生たちは陰陽師としての出世を目指して互いにしのぎをけずり、陰陽寮内部では妬みと羨望が渦巻いて、学生たちはお互いに疑心暗鬼に陥っていました。もっとも陰陽師はどう頑張っても、最下位の貴族に相当する位階(従五位下)にしかならないと、学生たちが愚痴っている場面が出てきますが…。

中務省宮内省など八省の下には、職・寮・司から成る「被官」が置かれていました。陰陽寮は中務職の管轄。

 

 そんな中、人並外れた呪術の才から、「狐の子」と陰で呼ばれている若き安倍晴明山崎賢人)は、学生たちとは真逆で出世など無関心、孤独で人嫌いの変わり者。 ある日晴明は、貴族で笛の名手である源博雅染谷将太)からその腕を見込まれ、博雅の従妹に当たる※徽子女王(よしこ…奈緒)を夜な夜な悩ませる怪奇現象の正体を突き止めて欲しいと頼まれます。しかしそれは、陰陽寮はおろか、都全体を巻き込む凶悪な陰謀のほんの序章にしか過ぎませんでした……❗

※この方も実在の人物。映画で描かれるように箏の名手、且つ女流歌人でもあったようです。伊勢斎宮であったため、入内後は斎宮女御と称されました。三十六歌仙の1人。


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※晴明の唯一のバディにして親友となる源博雅。彼が奏でる笛の音は、まるで天上の音楽。実在の源博雅も管弦の名手だったようですね。


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※お互いに想い合う博雅と徽子女王ですが…。この2人がまたね、純情可憐で愛おしくてね、胸キュンモノです。2人が登場する場面は映像がホントに綺麗😍

 

 安倍晴明役が山崎賢人……って聞いた時はちょっと意外で(^_^;)若手で言うなら、清水尋也みたいな、心に闇を抱えたお耽美イケメンを想像してたんで、賢人くんだと健全過ぎない?って(笑)しかしこの作品に登場する晴明は、占いは所詮統計学の一種だと断じ、呪術は顕在意識と潜在意識を自在に繰る催眠術師のようなものだと考える、19世紀のロンドンから平安時代に突如ワープしたシャーロック・ホームズみたいな卓越した知性の持ち主なんで、賢人くんはピッタリ、はまり役だったね。で、もちろん頭脳明晰な変人ホームズには、お人好しでおっちょこちょいでフェミニストなワトソンくん(源博雅)がつきもの。2人の凸凹コンビが京の都を舞台に繰り広げる冒険活劇で、見る前に(勝手に)溝口健二の『雨月物語』ふう怪異譚(例えが古すぎる……笑)を想像していたヲタクはちょっと面食らったけど、これはこれでじゅうぶん楽しめました。賢人くんお得意のアクションシーンもあるしね。平安時代の雅な装束であんな大立ち回りができるのは、日本の芸能界広しと言えども山崎賢人ただ一人でしょう。家族揃って楽しめる一大エンターテイメントとなっています。


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※作品中、平安朝のお耽美ムードを一身に背負っているのが、板垣李光人クン演じる時の帝(年代的に考えると、村上天皇でしょうか。とりわけ和歌を愛した風雅な帝だったよう)。薄衣を纏ってしどけなく脇息(きょうそく)にもたれるお姿は色気ありすぎで正視できませぬ(笑)

  

 しかしそれにしても、この作品の爽やかイケメンな晴明くんが、どうやったら『光る君へ』(今年のNHK大河ドラマ)の腹黒くて胡散臭い晴明(ユースケ・サンタマリア)になっちゃうんだ❗❓恬淡として無欲だった晴明も、宮廷の政争に巻き込まれてついにはキャラ変しちゃうのか……。

 

いと、口惜し(笑)

 

 

 

 

NEWダーク・ヒロイン、爆・誕❗〜『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』のチョン・ジョンソ


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※過去にフランスとスペインの支配を受けた為、異国情緒溢れるニューオーリンズを舞台に、キッチュでポップな世界観が展開。

 

 ハーレイ・クインキャットウーマン、『プロミシング・ヤング・ウーマン』のキャシー、『パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女』のチャン・ウナ、『355』や『オーシャンズ8』の強くてカッコいい姐さんたち……と、これまでヲタクの心を震わせたダーク・ヒロイン数々あれど、また1人、「オタクによるオタクの為の魅力的なダークヒロインリスト」に新たに加わったのが、今作の主役であるモナリザ・リー(チョン・ジョンソ)。

 

 モナリザ(はっきりとは語られていませんが、どうも脱北者らしい)は重度の精神疾患を患っているらしく、閉鎖病棟に物心ついてから12年暮らしています。しかしある満月の夜、彼女は他人の心を繰る特殊能力があるのに気付き、今まで彼女にさんざん虐待行為を行ってきた看護師にキツイお仕置き(このお仕置きシーン、いきなりの流血の惨事なので、気の弱い人は要注意^^;)をして、拘束着のまま病院から逃げ出します。ミシシッピ川の辺り、森をかいくぐって歩きに歩き、行き着いた先はニューオーリンズ。ダイナーで絡まれていたポール・ダンサーのボニー・ベル(ケイト・ハドソン)を助けたことから、彼女の家に居候することに。モナの能力を知ったボニーは、2人で組んでひと儲けを企みますが……。

 

 お金も知識も生活技術も何もない、赤ん坊のような状況で世の中に放り出されたモナ(人を繰る異能の持ち主とはいえ、使い方を間違えれば自身を傷つける刃になるわけですからね)。病院を逃げ出して最初に出会った青年ファズ(エド・スクライン)が

えっ?この広い、残酷な世の中で、何も持っていないのか?

はからずも呟いたように、そんなモナが、触れ合う人々との縁によって次第に心身ともに変化し、いかにサバイバルしていくのかが、最大の見どころ。

 

 一見麻薬の売人みたいなファズが実は心優しい青年だったり、街の人々からビッチ視されているボニーが気さくな姐御肌だったり、反対にモナを追い詰める警官が差別的発言を連発したり……と、登場キャラの描き方に、監督であるアナ・リリ・アミリプールの、現代の世相に対する皮肉がピリリと利いている気がするのはヲタクだけ?


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※「次世代のタランティーノ」の異名を持つアミリプール監督から、「この作品のヒロインは彼女でなくては」と、熱烈なラブコールを受けたというチョン・ジョンソ。エキセントリックな魅力に溢れるダークヒロインを熱演。

 

 異能なモナは、街の人々から魔女呼ばわりされますが、何せ舞台がニューオーリンズだから、違和感がないんですよね。歴史上、魔女裁判で知られるセイラムはニューオーリンズにある町。ハイチから伝わったブードゥー教ネイティヴアメリカンの信仰、そしてカトリックが交じり合った独特の精神文化がある言われています。映画の中でも、モナを追い詰める粘着質の警官(クレイグ・ロビンソン)が怪しげな祈祷師のおばさんに捜査の相談を持ちかける場面が出てきますが、元々そういった素地がある場所らしいです、ニューオーリンズって。例えば昔ニューオーリンズで多数の黒人奴隷を虐殺したと言われる「血塗られた貴婦人」マダム・ラローリー(マリー・デルフィーン・ラローリー/1775~1800年代)や、ブードゥー・クィーンと呼ばれたマリー・ラヴォー(1801~81)ら、実在の人物ゆかりの場所では、今でも心霊現象が多発しているとか(^o^;)観光客向けに「幽霊屋敷ツァー」もあるみたいですね。そんな前知識をもってこの作品を見ると、また違った味わいがあるかも。

 
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※いかつい風貌なのに、実は心優しきDJファズを演じたのは英国出身のラッパー&俳優のエド・スクライン。そう、『ゲースロ』のダーリオ様ですわー。ヲタク的にはファズがモナのために一生懸命目玉焼きを作るこのシーンにギャップ萌え。

 

 ファズったら別れ際にモナへ「続編でまた会おうなっ❤」って言ってたよねぇ。もしかして伏線❗❓

見たい見たい❗モナリザの心躍る冒険の続きを。

 

日本のジャーナリストたちよ、これを見よ〜Netflix『グレート・スクープ』プラス4

 
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Netflixで『グレート・スクープ』鑑賞。

 

 2010年、ニューヨーク。ある瀟洒な建物から連れ立って出てきた2人の中年男性を、あるパパラッチがカメラに納めていました。一人は故エリザベス一世の第三子ヨーク公アンドリュー王子、もう一人は悪名高き少女売春の性犯罪者ジェフリー・エプスタイン。9年後、エプスタインは性的人身売買のかどで起訴されましたが、拘置中に首吊り自殺。当時、アンドリュー王子がエプスタイン主催の少女たちとの乱交パーティに参加していたのではないかという噂が巷間に出回っていたものの、エプスタインの死によって立ち消えになるかと思われていました。そんな矢先、BBCの報道番組『ニュースナイト』の記者であるサム・マカリスター(ビリー・パイパー)が9年前の写真を入手、アンドリュー王子が性加害に加担していたことを確信し、番組責任者であるエスメ・レン(ロモーラ・ガライ)やメインキャスターのエミリー・メイトリス(ジリアン・アンダーソン)と共に取材に乗り出しますが……。


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※体当たり取材が身上のサム・マカリスター(ビリー・パイパー)。その強引さは『ニュースナイト』のスタッフたちとの間に様々な軋轢を生みますが…。

 

 『ニュースナイト』は2019年11月にアンドリュー王子の独占インタビューに成功しますが、インタビューの中で王子は一欠片の謝罪の言葉もなければ反省の色も見せず、英国民の王子に対する不信感は頂点に達し、ついにアンドリュー王子はエリザベス一世から王族権を剥奪されるに至ります。


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※『ニュースナイト』のキャスターを務めるエミリーは、華やかな容姿と優れた才能を持っているにもかかわらず、どこか自信無さげで「上がり症」。同じくNetflix『ザ・クラウン』の当たり役サッチャー首相とは正反対のキャラを巧みに演じました。

 

 古くは『大統領の陰謀』(1976年 アラン J パクラ監督)『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年 トム・マッカーシー監督)、『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(スティーブン・スピルバーグ監督 2017年)、『SHE SAIDシー・セッド その名を暴け』(マリア・シュラーダー監督 2022年)等に続く、巨悪を暴くために奮闘するジャーナリストたちを描く「事実に基づく物語」の1つです。


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※アンドリュー王子の秘書官エミリー。憧れの英王室に勤務し、アンドリュー王子に心酔していた筈が、BBCの取材によって王子の「真実の顔」が暴かれるにつれ、次第に絶望していきます。演じるのは、英国のドラマ・映画に欠かせない名女優キーリー・ホーズ。

 

 「事実に基づく物語」ですから、事の顛末はわかっている筈なのに、ジャーナリスト生命を賭けて真実を追及する『ニュースナイト』のスタッフの奮闘ぶりはスリリング且つ感動的❗(当時BBCは経営困難に陥っており、『ニュースナイト』の制作スタッフたちもリストラの危機に晒されていた)ストーリーと平行して、物語の要となる3人の女性(サム、エミリー、アマンダ)夫々の、キャリアを持つ女性の生き方が交差していく展開も良かったですね。

 

 先に挙げた4作品同様、王室という英国で最も強大な、アンタッチャブルな権力に挑んだジャーナリストたちの気概を見せつけられるにつけ、忖度まみれの日本のジャーナリズムの惨状に暗澹たる思いがします。

 

 日本のジャーナリストたちよ、あなたたちの存在価値は、強大な権力の裡に隠された闇を白日の下に曝け出すこと。芸能人の些末なスキャンダルばかり追いかけて小銭稼ぎばかりしてないで、ちっとは本気見せたらどうなん❓(笑)

 

★今日のおまけ……ジャーナリストの奮闘を描いた映画4選

大統領の陰謀


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言わずとしれた名作。ウォーターゲート事件の真相を突き止め、時の大統領ニクソンを失脚にまで追い込んだワシントン・ポストの記者カール・バーンスタインダスティン・ホフマン)とボブ・ウッドワードロバート・レッドフォード)の回顧録を映画化。

②スポットライト 世紀のスクープ


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 2001年。当時のボストン・グローブ紙の編集局長バロンが、神父による子供への性的虐待事件が多発していることに着目。同紙の特集記事欄「スポットライト」を担当する4人の記者たちが、事件の深層を探り、カトリック教会という世界最大のタブーに切り込んでいきますが……。

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書


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 リチャード・ニクソン大統領政権下の71年、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」が存在した!分析によれば、アメリカの劣勢は明らかであったにもかかわらず、時の政府はそれを隠蔽、多くの若者を戦場に送り続けたのです。ニューヨーク・タイムズが最初にスクープしましたが、大きな圧力がかかり、差し止め処分に。その後ライバル社のワシントン・ポストは残りの全文書を入手しますが、その発表を巡って社内は対立し…。

 

④SHE SAID シー・セッド その名を暴け


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 2017年10月5日、ニューヨーク・タイムズに1つの記事が掲載されました。「ハーヴェイ・ワインスタインが数十年にわたりセクハラ告発者を買収」という記事は、映画界の超大物でミラマックス社のCEOだったワインスタインが長年にわたり社のスタッフや女優たちに対して行ってきたセクハラ行為やレイプの数々を白日の下に晒し、アメリカ全土を震撼させました。この記事がきっかけとなって、その後#Me TooあるいはTime’s Upの一大ムーブメントに発展したのは周知の通り。ニューヨーク・タイムズ報道部記者ジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)とミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)が協力取材し、共に記事を執筆するに至るまでを克明に描いた映画。

 

 

 

 

 

Let's Go Us!〜Number_i in Coachella 2024

 
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 大成功のうちに終わったNumber_iのアメリカ進出。彼らが作り上げた楽曲とパフォーマンスは卓越したもので、十分世界的な水準にあるということは、彼らがデビューした時から明らかではあったけれど、それを実際に世に知らしめるためには、さらに天の刻と地の利、そして人の和が必要でした。彼ら3人のCoachella出演は、まさにその「天・地・人」がぴったり揃った結果だと、その僥倖に胸が震える思いがします。

 

 SNSの発達により、以前は極東の謎めいた国だった日本の、特異な文化が広く世界の人々に知られるところとなり、19世紀フランス以来のジャポニスムが起こりつつある昨今、アジアの音楽を世界に知らしめたいという高い志を持つ88risingに見出され(天の刻)、ヒップホップの本場アメリカのフェスで、まさにNumber_iの目指す独自のジャパニーズ・ヒップホップ2曲を披露することができたこと(地の利)。そしてそして、日本のファンの熱い熱い応援の中、なんとなんと世界進出したアジア人アーティストとしては大先輩にあたるジャクソン・ワン氏とのコラボが実現したこと(人の和)。この、分かち難い「三位一体」は、アメリiTunesで総合10位、ヒップホップ部門1位という結果を生み出した!これを奇跡と呼ばずしてなんと呼ぼう。





 Number_iの御三方がまたね、この三位一体を十分理解していて、感謝の姿勢をいつも忘れないところが胸アツです。88risingのCEOであるMr.Miyashiroは日系アメリカ人で、アーティストに求めるのは唯一無二の個性と、善良な人柄とのこと。Coachellaステージでジャクソンを迎い入れる時にさっと舞台の上を綺麗にし、去った後には彼のマスクをそっと片している3人の姿を見るにつけ、Number_iはMiyashiroさんが求める人材そのものだと思いましたね。才ありてなお、君子の人格が必要ということでしょうか。また、Number_iのファンがこぞってジャクソンさんのSNSに「コラボして下さってありがとう!」「彼らが注目されたのもジャクソンさんが紹介して下さったお陰です」って書き込んでいて…。(かくいうヲタクも恥ずかしながら書き込みをさせて頂きました。ジャクソンさんご自身のSNSには恐れ多くて書き込めず、ファンサイトのほうに…^^;)そうしたら、ファンサイトの運営者の方が「日本のファンって、なんてスイートな人たちなの!こんなこと初めて」って感動して下さった。これも1つの「人の和」。Number_iを推してるお陰さまで、国を超えてこんな繋がりができるなんて不思議。


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 以前の記事でヲタク、「彼らを信じてついて行けば、今まで見たことのない壮大なパノラマを見せてもらえる」って書いたけど、それがこんなに早く実現するなんて……。平野くんもちゃんと出発の時「Let's Go US」って言ってくれてたね。「行ってきます」じゃなくて。私たちも一緒に参加したんだね、Coachellaに。

 

 さあ、彼らは次にはどんな素敵な景色を見せてくれるんでしょう。ワクワクが止まらない!

【悲報】おとぎ話は続かない〜映画『プリシラ』


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 みなとみらいのミニシアター「KINOシネマみなとみらい」にて、『プリシラ』(ソフィア・コッポラ監督)鑑賞。

 

 恋も何も知らない純粋無垢な14歳の少女の前に突然、イケメンで長身の、白馬に乗った王子様が現われました。たちまち2人は恋に落ちて、王子様は彼女が大人になるのを辛抱強く待ってくれて、彼女が22才の時、周囲の祝福を受けて結婚式を挙げました。そして2人は末永く幸せに暮らしましたとさ。

 

……と、そう上手くは人生運びませんでした、というお話(笑)

 

 とまあ、こう書いてくると身も蓋もないんですが(^_^;)、キング・オブ・ロックンロール、エルヴィス・プレスリーの妻だったプリシラが、14才(!!)の時にエルヴィスに出会い、結婚、出産を経て、結果的に28才で離婚に至るまでの過程を描いた作品です。

 

 2年前にオースティン・バトラーがエルヴィスを演じた、バズ・ラーマン監督の『エルヴィス』にどハマリして、映画館で何度もリピしたヲタクとしては、妻のプリシラの視点から描いた2人の短い結婚生活は、とても興味深かった。出会った時に既に大スターだったエルヴィスは、何にも染まっていない、まるで真っ白なキャンバスのようなプリシラを「自分好みの女」に染め上げようとします。17才でメンフィスの「エルヴィス御殿」に迎い入れられたプリシラは、なんと結婚するまでの5年間、エルヴィスと同居していたんですね🫢……これってまるで光源氏と紫の上みたいだよね。今のご時世なら犯罪モノですが、舞台は平安時代の日本じゃなくて、1960年代のアメリカっていうのが、またまたビックリです。マスコミ対策の為、高校に通うほかは、プリシラはまるで軟禁状態。バイトはおろか、友達を家に呼ぶことも禁止。ツァーや映画撮影で長期間留守にし、たまに戻ってくるエルヴィスは、プリシラに「家の灯火を絶やさないようにしてくれ」(⇐このセリフもいまいちイミフだが 笑)と言って外出を禁じた上、髪の色から服から細かく注文を出します。新曲の意見を求められたプリシラが「何だかピンと来ない」と言おうものなら、モノが飛んでくる始末(^_^;)自分から聞いといて、モノ投げるなよ…。かようにイケメン王子は姫に対して、彼に対する盲目的な崇拝を強要するのでした。エルヴィスが、映画で彼の相手役を務めたウルスラ・アンドレスを「ゴツくて男みたいな女。亭主(監督・俳優のジョン・デレク)が最悪だ」、アン・マーグレットを「したたかで出世しか眼中にない」とディスってる場面が出てきますが、キング・オブ・ロックンロールは何らかのコンプレックスがあったのか、よほど自分の思いのままになる、か弱い女性がお好みだったもよう。ウルスラはドイツ人、アンはスウェーデン人なので、2人とも体格も立派なのよね(^_^;)

 

 エルヴィスの自分に対する感情は、決して愛ではない、アダルトチルドレンの独占欲と支配欲だと次第に気づき始めるプリシラ。その辺りは、同じ女性として、見るのが辛くて切なかったな。当のエルヴィスは、プリシラが意を決して別居を切り出してもぽかんとして、「何でだよ?君は誰もが羨む対象なのに。(キング・オブ・ロックンロールの妻なんだぜ)」と、彼女の気持ちを最後まで理解できないし。実際のプリシラは、趣味が空手…というところから見ても、芯の強い自立型の女性だったみたいですね。まあ原作はプリシラご本人の著書だし、映画の監修も務めているから、多少美化されている嫌いはあるかもしれませんが……。


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※エルヴィス好みの服や髪型に身を固めた時代(左)から、自分らしく生きるため家を出る頃のプリシラ(右)。彼女の心境の変化は、ファッションにも表れています。

 

 ヒロインを演じたのは、ケイリー・スピーニー。ヲタク的には、ケイト・ウィンスレットが神演技を見せ、エミー賞で16部門にノミネートされたHBOのドラマ『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』でケイトの娘役を演じた時の印象が強いですが、あれからさらに演技も磨いたようで、この作品では、プリシラがエルヴィスとの愛と結婚生活の真実を知り、怒りと絶望から諦観、そして自立に至るまでの過程を繊細に演じ切り、昨年度(2023年)のヴェネツィア映画祭で見事主演女優賞を獲得しました。


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※エルヴィスを演じたのは、ジェイコブ・エロルディ。オースティン・バトラーと違ってさすがに唄うシーンはなかったけど、エルヴィス特有の籠もったような南部訛りは完コピしてましたねぇ。ヲタク直近で彼を見たのが『ソルトバーン』(Amazonプライムオリジナル)でのオックスフォードの学生役だったから、よけいその落差に感動しました。(彼自身はオーストラリア人)

 

 なにせ監督がソフィア・コッポラなんで映像やセットがめっちゃキレイだし、1960〜1970年代のファッションもお洒落で素敵、それだけでも一見の価値アリ!

 

★今日の小ネタ

 エルヴィス役のジェイコブ・エロルディの元カノは、トップモデルのカイア・ガーバー。んで、そのカイアが現在熱烈交際中なのが、映画『エルヴィス』でタイトルロールを演じ、アカデミー賞にもノミネートされて一躍ハリウッドのトップランナーに躍り出たオースティン・バトラー。「2人のエルヴィスと付き合った女」カイア・ガーバー(笑)


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※仲睦まじかった頃のジェイコブ・エロルディとカイア・ガーバー(左)。右は、只今真剣交際中と言われるカイアとオースティン・バトラー。

 

★おススメ度…★★★☆☆

それでもあなたのことはキライになれないわ、エルヴィス❤

「渋谷の交差点」を愛する探偵〜AppleTV+『シュガー』のコリン・ファレル


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 コリン・ファレルが私立探偵を演じるミニ・シリーズ『シュガー』(AppleTV+)。今日(2024.4.12)の時点でシーズン1の第3話まで配信中。今後は、毎週金曜日に新しいエピソードが追加されるもよう。

 

 主人公は、ワケありの私立探偵ジョン・シュガー(コリン・ファレル)。フィリップ・マーロウと同様、「人探し」が専門。人探しをしているうちに、もっとだいそれた犯罪に否応なしに巻き込まれていくのもマーロウっぽい。オマージュなのか、はたまたパロっているのかわからないんですけどね(笑)シュガーは複雑な過去を持つ男のようですが、まだ今のところ彼自身が抱える秘密については明らかになっていません。

 

 ハードボイルドの探偵モノには、主人公の、ちょっとカッコつけた、独特のモノローグがつきもの。マーロウの生みの親、レイモンド・チャンドラー然り、北方謙三然り、原リョウ然り。シュガーもエピソードの半分くらいはブツブツ呟いてるんじゃないかな(^_^;)

 

 1話のオープニングではなんと、彼は東京にいて、大物ヤクザの息子誘拐事件の犯人を追っててビックリ🫢(え?『Tokyo Vice』みたいに日本が舞台なん!?)とヲタクは早トチリしかけましたが、事件は10分で解決して、シュガーは早々にロスに戻ってきちゃいました(笑)しかしエピソード3で彼は昔の同僚に向かって、「渋谷の交差点を知ってるか?世界で1番美しい場所だ。2分おきに3000人が渡るんだ。歓びや悲しみ、怒りが1度に交差する」と語っており、東京という街は、彼の心に消えない爪跡を残したようにも見えるのです。渋谷のスクランブル交差点が単に彼の心象風景の象徴なのか、これからのストーリー展開に関わってくるのかわからないんですが…。

 

 東京での件に引き続き彼が依頼されたのは、ハリウッドの大物プロデューサー、シーゲルの失踪した孫娘オリヴィアを探し出すこと。オリヴィアは長年の薬物中毒から立ち直り、再出発をしようとしていた矢先のことでした。早速、オリヴィアの父親でやはり映画プロデューサーのバーニーや兄のデヴィッドに事情を聞こうとするシュガーでしたが、彼らは話をするどころか、かえってシュガーの捜査の妨害をしかけてきます。どうやら彼らには、探られては困る秘密があるようです。そんな折も折、オリヴィアがアパートメントの駐車場に置いたままにしてある車のトランクを調べていたシュガーは、血だらけの男の死体が入っているのを見つけて……!

 

 シュガーは熱烈な映画ファンという設定で、昔なつかしハンフリー・ボガートの『3つ数えろ』(……たぶん^^;)をはじめとするハリウッドのモノクロ・ハードボイルド映画の名シーンが度々登場したり、彼の携帯しているのが、映画『復讐は俺に任せろ』でグレン・フォードが使った銃だったり……と、映画関連の小ネタ満載で、ヲタク的には嬉しい限り。

 

 ハリウッド1のセレブであるシーゲル家の面々は皆怪しいやつらばかりで、謎が謎を呼ぶスリリングな展開となっておりますが、1番の謎はシュガーその人。冒頭から、フィリップ・マーロウに寄せて彼を描写していたのが、観ている私たちをミスリードする為の目くらましだということがだんだんわかってきます。実は彼は連邦政府機関で多言語を修得したポリグロットのエリート。銃の携帯を嫌がる平和主義者で、ライ・ウィスキーは飲んだことなくて普段嗜むのはスコッチ……って、どう考えてもロスの探偵じゃなくない?(笑)

 

 失踪したセレブの孫娘の行方より、シュガー本人が気になる今日この頃。最後にとんでもないどんでん返しが待っていそうで、めっちゃ楽しみ!

 

 

 

女性は黒衣(くろご)!?意外性がクセになる〜Number_i『Blow Your Cover』MV

 
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 『Blow Your Cover』MVついに公開!!

 

 Teaserで、さんざんteased(焦ら)された私たちは、『GOAT』に引き続きまた、Number_iに新たな世界への扉を開いてもらった気がします。

 

Fly me to the Moon.

Fly me to the New World.

 

『BYC』の歌詞は、男女の濃密な一夜を連想させる、割と具体的なものだけど、MVで映像化するにあたり、相手の女性のヴィジュアルを人形浄瑠璃の黒衣(くろご)のように見立てて、スタイリッシュな映像であえて抽象化したのは大正解だと思いました。(監督はPerfumeの一連のMVを手掛けている田中裕介氏)歌詞を具象化するのがMV……という思い込みが打ち砕かれた(^_^;)

 

……いやだって、これがね、EXILEの『Ti Amo』のMVみたいだったらどうしようって思いましたもん(^_^;)当時、スカパラの谷中さんのファンだったから、初めて見た時はかなーりショックでした。まあ、Number_iのことだから、そんなことはないとは思ってたけど、一抹の不安は残ってましたから。

 

 ヲタクは、エロティシズムって各人の想像性の領域に属するものだと思ってるから、映像で激しい濡れ場とか見せられてもかえって興醒めすることが多いんです。一方『BYC』のMVにおける三者三様の「後朝(きぬぎぬ)の表現」……神宮寺くんの虚無感、平野くんの濡髪と指先、岸くんの慟哭…は、観ているこちら側のイマジネーションを、否が応でもかきたててくれた!神宮寺くん、「表情がとても大事。繊細な表現が必要になってくる」って言ってましたものね。彼らの表現にはいつも、水墨画のような、あえて全てを語らない「余白」みたいなものがあって、日本古来の奥ゆかしさがとても上品に思えます。

 

 『Blow Your Cover』のMVは、Number_iが一流のアーティストでありパフォーマーであると同時に、優れた演技者であることを証明してみせた作品ではないでしょうか。

 

Blow Your Cover https://g.co/kgs/Xkoo3os

『Blow Your Cover』Teaser〜「Number_iは焦らすから!」

 
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 Number_iの2ndシングル『Blow Your Cover』の配信開始が間近に迫る中、待望のTeaser公開!!

 

 おー、今度はそう来たか〜!

 

 1stシングル『GOAT』のMV(児玉裕一監督)は、その歌詞のシュールな世界観をそのまま映像化したような、タイムリープありマルチバース?ありの目眩く作品でした。一方『Blow Your Cover』は歌詞を追っていくとかなり具体的で、聴いている側が割と容易にそのシチュエーションを想像できます。だからヲタクも、以前書いた記事『現代の後朝(きぬぎぬ)の歌』の中で、「素性がわからずに一夜を共にした相手を偲ぶうた」としてみました。つまり「Blow Your Cover」は、「君は本当はどんな人なの?君の内面が知りたいんだ」というふうに解釈したわけです。

 

 ところがところが、Teaserの画面に登場したのは、黒いヴェールで顔を覆っている謎の女性。あえて具体的なシチュエーションを提示しないとこがニクイ。文字通り「Blow Your Cover」って声をかけたくなるものね。ヲタクはこの歌を初めて聴いた時、御簾(Cover)を払う(Blow)ことで成就する平安貴族の恋を連想してしまいましたが、その連想もあながち突拍子もないわけじゃない!……かもしれない(笑)はたまたイスラムのヒジャーブ?Number_iの楽曲は、それこそ空間も時間も一気にワープさせて、私たちをいながらにして異次元に連れて行ってくれる。

 

Fly me to the Moon, Fly me to the New World.

 

 こんなふうにオタクたちの妄想を烈しく掻き立てるのも、Number_iチームの心憎い作戦ね。Teaserのteaseは、「焦らす、からかう」といった意味。まさに「Number_iは焦らすから!!」(by 北山宏光

 

でもいいの。彼らに焦らされて翻弄される感覚がたまんないんだもん。……って、どMか、じぶん(笑)

 

 

Blow Your Cover https://g.co/kgs/Mda8hQU

じんわり癒やされるバス・ドゥヴォス監督のベルギー映画『Here』


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 横浜黄金町のミニシアター「ジャック&ベティ」で、ベルギー映画『Here』鑑賞。

 

 ヲタクはかつて丸5年間、ベルギーで暮らしたことがあるので、(あー、あのレンガ造りの家ベルギーっぽい!)とか、街の中心を離れるといきなり森になるベルギーの風景…etc.を見ているだけで胸がいっぱいになって涙が溢れそうになり、困った、困った(笑)……それに、バス・ドゥボス監督が描き出す小世界は繊細で、心地よくて……。

 

 ベルギーの首都ブリュッセルで建設労働に携わるルーマニア移民のシュテファン(シュテファン・ゴタ)。きつい労働や、ルーマニア人しか友達がいない孤独な日常に疲れ、長い休暇をとってルーマニアに帰国する予定だけれど、頭の隅では、(もう、戻ってこれないかもしれないな…)とぼんやり考えているようです。シュテファンは姉や友人たちへ、別れの挨拶代りに、冷蔵庫の残り物で作ったスープを配って回ります。ある日、森を散歩していた彼は、以前中華レストランで出会った中国系ベルギー人の女性シュシュ(リヨ・ゴン)と再会します。シュシュは植物学者で、苔の採取に来ていたのでした。植物の素晴らしさを丁寧に説明してくれるシュシュの優しさに触れ、荒んだシュテファンの心も次第に柔らかく溶けていって……。

 

 九州ほどの面積しかないのに、フランス語、オランダ語、ドイツ語の3ヶ国語が公用語で、移民の受け入れも昔から寛容だった為に、多種多様の民族が暮らすベルギー。中国人をはじめタイ人、フィリピン人などアジア系移民も多く、お陰で私たちが住んでいた頃も近所の人や娘たちが通う学校のお母さんや先生など皆親切で、アジアンヘイト等とは無縁の暮らしでした。しかしシュテファンは、看護師として働いているお姉さん(ベルギーに来て家庭を持って、子供もいる)に「休みの日はやることないから、外に出て疲れるまで歩き回って、帰ってきて寝るだけ。もうそんな暮らしに疲れたんだ」って愚痴るんですね。うーん、彼の気持ちもよくわかる。お姉さんと違って彼は独身だから、なかなか人間関係が広がらないんですよね。ベルギー人はだいたい親切で、あからさまに人種差別してくるような人はほぼいないけど、だからといって孤独感が癒やされるわけじゃないものね。


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※その穏やかさと優しさで、シュテファンの乾いた心を癒やすシュシュ。

 

 そんな彼がシュシュと一緒に森の中を歩き回って、木々と擦れ合う音に耳を澄ませ、木洩れ陽に目を細め、突然の雨に驚いて走り出すうちに、表情まで柔らかくなっていく様子を見るのは、気持ちよかった。何だかこっちまで、日々感じてる小さな苛立ちや負の感情が洗い流されていくようで。彼がベルギーに再び戻ってくるかどうかはわからないけど、異国での暮らしが、寂寞としたもので終わらなくて、本当によかった。

 

 見ているこちらまでシュテファンと一緒に森林浴でマイナスイオンを浴びた気持ちになる……一種のヒーリング・ムービーでしたね(笑)

 

 

ジョニデの"je t’aime"が心に刺さる〜『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最後の愛人』

 
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 横浜黄金町のミニシアター「ジャック&ベティ」で『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最後の愛人』鑑賞。

 

 絶世の美男で「最愛王」と呼ばれたルイ15世。その王が最も愛したのは、極貧の家庭に生まれ娼婦同然の暮らしから持ち前の美貌と才気で貴族社会の階段を駆け上り、ついには王の公妾(公式の愛人)となったジャンヌ・デュ・バリー。彼女の栄光と没落、波乱に満ちた生涯を描いた作品です。

 

 フランスの才女マイウェンがデュ・バリー夫人に入れ込んで脚本・監督・主役を務めたというこの作品。うん、わかるよ、彼女の気持ち。今ドキ自立した女子のトレンドは、フランスはマリー・アントワネットよりデュ・バリー夫人、英国はメアリ・スチュワートよりエリザベス一世オーストリアプロイセンはシシーこと皇妃エリザベートよりエカテリーナ二世だもんね。生まれながらに全てを与えられて富と栄光を享受したお姫さまより、自らの手で権力を勝ち取った成り上がりのほうがカッコいい。


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※衣装担当はシャネルだそう。衣装を見ているだけでもタメ息が……。

 

 かようにパワフルなマイウェン姐さんに相対するは、ジョニデ・ザ・カリスマ。権力に媚びることや悪しき因習を嫌い、自分自身にウソをつくことを嫌う自由奔放なデュ・バリー夫人をだからこそ面白がり、愛するようになる度量の大きな一人の男を巧みに演じています。

 

 式典の時の姿は白塗りにモリモリカツラ、唇にはルージュ姿で、『女王陛下のお気に入り』(ヨルゴス・ランティモス監督)でニコラス・ホルトを初めて見た時と同じくらい気持ちが萎えたけど(マイナーすぎる比喩ですみません 笑)、そこはそれサスガのジョニデ、ストーリーが進むにつれ、彼の演技にどんどん引き込まれることに。ジョニデというと、ちょっとヒリヒリしたエッジーな演技が特徴でしたが、こういう悠揚迫らぬキャラもいけるんだねぇ……。彼の新たな一面を見て、目の覚めるような想い。


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台詞はもちろん全編フランス語。しかも18世紀のフランス語!!

 フランス語は元々少し話せるけれど、発音を正確にするためにコーチに特訓を受けるようなことはしなかった。それよりも出来るだけ自然な形で言葉が口から出てくように共演者の演技を集中して観察するようにした。おかげで即興で言葉を弄び、相手と会話を楽しむ自由を手に入れることができたね。

サスガの余裕です(^_^;)

 

 フランス語って元々音楽的な言語(ヲタクはワケあって高校3年+大学2年フランス語を学びましたが、悲しい哉殆ど身に付いておりません 笑)で、ジョニデは音楽やる人だから修得も早かったのかも。

 

 今度はフランス語で、エッジーなジョニデに立ち戻って頂いて、『死刑台のエレベーター』や『サムライ』みたいなフィルムノワールはいかがかしら?もっとセクシーさが増すと思うわ٩(♡ε♡ )۶

 

 

日本人ならよくわかる……A24 『パストライブス/再会』


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 桜木町駅前のシネコン「ブルグ13」にて、『パストライブス/再会』鑑賞。

 

 韓国ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソンは、テストの成績を競い合うライバルであり、同時に、お互い淡い恋心を抱いていました。しかしノラの両親は映画監督と画家で、海外進出の第一歩として※カナダへ移住することを決意、2人はある日突然離ればなれになることに。そして12年後、24歳となったノラ(グレタ・リー)はニューヨークに単身住み、若き舞台脚本家として頭角を現していました。一方、ヘソン(ユ・テオ)は自宅からソウルの大学に通う学生。偶然にもSNSで再会した2人は懐かしさから度々Skypeで会話をするように。しかしヘソンは、若く有望なアーティストの為の研修講座に受かったノラから「しばらく距離を置きたい」と告げられ、再び2人の距離は遠のいてしまいます。さらに12年が経ち、36歳となった2人。ヘソンは恋人との別れを経て、企業に勤めるサラリーマン。ノラは既にユダヤアメリカ人作家のアーサーと結婚していました。そんなある日、突然ヘソンから「会社の休みを利用してニューヨークに行く」という知らせを受け取ったノラは、彼の真意を計りかねて戸惑いますが……。

※ノラの両親も職業柄本当はアメリカ、特にニューヨークに移住したかったと思うんですが、ご存知の通りグリーンカード取得は(ビザでさえ)至難の業。それに比べるとカナダの永住権を取得するのは割と容易なので、こういう決断になったかと思われます。

 

 祖国を出てアメリカに暮らすアジア人の複雑な感情を描いた作品としては同じA24の『フェアウェル』があるんですけど、『フェアウェル』のヒロイン(オークワフィナ)は2世で、中国人の顔はしていても中身は完璧アメリカ人、12歳の多感な時期に海外移住したノラとはちょっと違いますね。ノラは夫から「君の寝言は今も韓国語ばかり。英語は聞いたことない」と言われるくらい、アメリカと韓国の間で揺れ動いているところがあって、より切ない。ひたすら初恋の少女を追い求めるヘソンとは違って、彼女のヘソンに対する感情は、言わば生まれた国に対する望郷の念とミックスして、もっと複雑なんですよね。しかも彼女にはニューヨークで舞台脚本家として成功したいという野心があって、アーサーとの結婚を急いだ一因も、早くグリーンカードを取得したかったからというところにあるし。前出の『フェアウェル』や、同じくA24の作品で、昨年度のアカデミー賞を総ナメにした『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と同様に、アメリカにおけるアジア系の移民事情が透けて見えて興味深かったな。

 

 題名にもなっている「Past Lives(前世)」。今生で巡り合う為には八千層の前世の縁が存在する……という韓国の言い伝えからとったもののようです。この仏教的な「輪廻転生」説は、樋口一葉の小説の一文「袖すり合ふも他生の縁(道ですれ違い袖をすり合っただけの人でも、前世では深いご縁があったのだ)と聞くを、仮初(かりそめ)ながら十日ごしも見馴れては他処の人とは思はれぬに」にもあるように、私たち日本人にはとても馴染みの深いものですが、欧米の人たちから見ればエキゾチックで物珍しく感じられるのかもしれませんね。

 

 個人的には、24才の時のノラの韓国語が、「ちょっとおかしい」ってヘソンに指摘される場面。ノラが「だってしょうがないよ。家族としか韓国語喋れないんだから」って答えるんですけど、それにヲタク、ぎくっとしました。ヲタクは夫の仕事の都合で娘2人が2歳と4歳の時にベルギーに移住して、丸5年間暮らした経験があります。彼女たちは現地の小学校(公用語オランダ語)に通っていたのですが、3年、4年と経つうちに彼女たちの言葉がオランダ語と日本語ミックスの妙な言葉になってきて…。(彼女たちはいったい、日本語とオランダ語のどちらをベースにものを考えているんだろう?)と思ったら空恐ろしくなってきて、赴任期間はまだ継続する筈でしたが、強硬に会社側と掛け合って私たち母娘は一足先に日本に帰国させてもらいました。日本人は英語が不得意だから早期教育を……って説もありますが、経験上絶対反対です。……って、何の話してたんだっけ(笑)

 

 ヘソンを通して、祖国に恋慕の情を抱きながらも、改めて自らの意志で、アメリカの地で生きることを選ぶノラ。彼女の想いを受け入れて、別れを告げるヘソン。そんな2人の想いが観ている私たちの胸に刺さる。

 

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と切り口は全く違うけど、下馬評通り来年のアカデミー賞、けっこういいとこ行くかもね♬

 

★今日の小ネタ…グレタ・リー&アンドリュー・スコット

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 以前当ブログで掲載した写真、使い回し〜〜(笑)昨年度ゴールデン・グローブ賞アフターパーティ時のグレタ・リー(左…顔見えないけど 笑)と、我が熱烈推しアンドリュー・スコット(最近Netflixでミニシリーズ『リプリー』が配信開始となり、特に熱が上昇中)のツーショ。確か2人、共演経験ないはずだけど…久しぶりに会った旧友って感じね。ご両人とも、ホワイトの装いがステキ。

 

 

 

 

大人の為の大人による大人のロマコメ〜『ブルックリンでオペラを』


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 桜木町駅前の「ブルグ13」にて、『ブルックリンでオペラを』鑑賞。

 

 予告編によれば、舘ひろし柴田恭兵の『あぶデカ』が久しぶりに帰って来るとか。なんと「ブルグ13」が入っているビル・コレットマーレ爆破計画が持ち上がり、2人がそれを阻止する為に大暴れ……ってストーリーらしい。今は刑事を引退して探偵稼業らしいので、正しくは『あぶデカ』ならぬ『あぶタン』かな?(^_^;)昨年の映画『TOKYO MER〜走る緊急救命室』ではランドマークタワーが爆破されてたし、みなとみらいも近頃物騒でございます(笑)。

 

閑話休題

 

 『ブルックリンでオペラを』。ニューヨークでオペラ…というと、ヲタク的にはどうしてもメトロポリタン歌劇場のあるアッパーサイド界隈を想像して、(ブルックリン?随分かけ離れてるなぁ……。ブルックリン出身でオペラを目指す人の話?)と思ったんだけど、原題は『She Came To Me(彼女が僕のもとに降りてきた)』で、ヲタクが勝手に想像していた、『テノール!人生はハーモニー』や『ふたりのマエストロ』のようないわゆる「音楽モノ」ではなかったんでした。

 

 主人公は、才能に恵まれながらも神経がデリケートすぎて不安神経症に悩まされ、5年間どスランプ、全く新作が書けていないオペラ作曲家のスティーブ(ピーター・ディングレイジ)。彼は、美しくしかも家事能力も完璧な精神科医の妻パトリシア(アン・ハサウェイ)と、優秀で性格も良いイケメンの継子ジュリアン(エバン・エリソン)と何不自由ない3人暮らしでしたが、その「完全無欠さ」がかえって彼の創作意欲を減退させているようにもみえます。そんなある日、彼は立ち寄ったバーで、「曳き船」の船長をしているカテリーナ(マリサ・トメイ)と知り合い、一夜を共にします。性格も境遇も育ちも全く自分とはかけ離れた彼女でしたが、その日を境にスティーブの人生は激変して……!


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※ヲタク的には『ゲースロ』以来のピーター・ディングレイジ(左)。スティーブは、並外れた知力と財力でサバイバルする逞しいティリオン・ラニスターとは真逆のキャラですが、そのセクシーな魅力は健在!妻であるパトリシアが彼に対して既に恋愛感情がなくなっていても母性本能をくすぐられて放っておけないのも納得。

 

 甘くてほろ苦い、大人の為のロマンティックな寓話という感じ。スティーブをはじめとして、登場人物たちは皆、世間的には一応成功した部類に入っているのですが、それぞれ、過去の失敗やその時感じたトラウマを心の奥底に抱えて、前に進めないでいる設定。それが、ある出来事をきっかけに自らの来し方行く末を見つめ直し、大人たちが勇気を持って新たな人生へ踏み出していくストーリー。そのきっかけになるのが、スティーブの継子ジュリアンとGF(ハーロウ・ジェーン)の若く真剣な恋を応援する……というところにあるので、とても胸アツ、爽やかな後味です。しかし、過去にとらわれて右往左往している大人たちより、若い2人のほうがよほど冷静で客観的……というところが、ちょっぴり皮肉でスパイスが効いてます。脚本兼監督のレベッカ・ミラー(父親はあのアーサー・ミラー!)の手腕かな?

 

 そして、1番の見所は、キャスティングの妙味。男の色気に溢れつつどこか甘えん坊で母性本能をくすぐる主人公にピーター・ディングレイジ。彼を巡る両極端の女性2人……何もかもパーフェクト、超潔癖症が高じて修道院生活に憧れるようになるパトリシアに、まるでAIみたいな美貌(注・褒めてます 笑)のアン・ハサウェイを、そして一見「どこにでもいるフツーのオバサン」ふうでありながら、愛と生への意欲に溢れたエネルギッシュな魅力を持つカテリーナにマリサ・トメイを配したのはまさにグッジョブ!でありました。


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※まさに「降って湧いたように」スティーブのミューズとなるカテリーナ(右…マリサ・トメイ)。ヲタク世代だと、何と言っても『いとこのビニー』や『忘れられない人』(1993年)だよねぇ。若い人だったらスパイダーマンのメイおばさん…と言えば通りがいいかな?断続的にキャリアにブランクがある人だけど、気さくで人懐こいイタリア系女性の魅力は相変わらず。これからもどんどん活躍してほしい。

 

 日本だとロマコメって若い人たちの専売特許で、40代の女優さんたちってとかく回ってくる役がお母さんや叔母さんばかりになっちゃうけど、こういう「大人たちが主役のロマコメ」が日本でも生まれるといいよね。

 

 

アンドリュー・スコットの演技力に驚嘆〜Netflix『リプリー』

 
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 待望のアンスコさま主演『リプリー』がNetflixでついに配信開始!期待に違わぬ出来で、ヲタク、ストーリーは既に知っているというのに、エピソード(1〜8)が進む間中ドキドキが止まらなくて、結局昨夜は夜中までイッキ見し、今朝は廃人同様…トホホ。まっ、今日は仕事休みだからいいけど(笑)

 

 時は1960年代。職業も住所も経歴もわからない謎の男、トム・リプリーアンドリュー・スコット)。彼はニューヨークの片隅で、身分証明書や公証人刻印、信用状の偽造等で日銭を稼いでいる小悪党。そんな彼に「まともな」大仕事が舞い込みます。造船会社を経営する富豪のグリーンリーフが、「画家を目指す」との触れ込みでイタリアのリゾート地・アトラーニに行ったまま帰らず、彼の財産を食い潰している息子のディッキー(ジョニー・フリン)を連れ戻して欲しい、連れ戻してくれるなら金に糸目はつけないと。二つ返事で引き受けたリプリーは、初めて乗るオリエント急行、贅沢な食事、海辺のリゾート地に心躍らせるのでしたが、初めて出会ったディッキーは、才能もないくせに画家を自称し、作家を目指す美女マージ(ダコタ・ファニング)を恋人にし、「慈善行為」とうそぶいて詐欺師の女に大金を巻き上げられてしまうような放蕩息子の典型でした。彼の邸宅に居候するようになったリプリーは、特権階級の豪奢な生活を何の努力もせずに享受しているディッキーに対して次第に侮蔑と憎悪の感情を募らせていき……!
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※恋人ディッキー(ジョニー・フリン)がリプリーアンドリュー・スコット)に取り込まれるのを恐れ、リプリーを密かに憎むマージ(ダコタ・ファニング)。奇妙な三角関係が形成されていきますが…。


 とにもかくにも、アンドリュー・スコットの演技が圧倒的!冒頭の、オドオドして、いつも人の顔色を上目遣いに窺っているような※卑屈な態度から、取り返しのつかない犯罪に一旦手を染めるや、自信とカリスマ的魅力に満ちた、ミーナ・マッツィーニの気怠いカンツォーネや年代物のワイン、フェラガモの靴やロレックスの時計が似合うセレブな男に劇的に変化する、そのギャップが凄すぎる。

※アンスコさまって、人間のコンプレックスの表出をコミカルに演じるのがめっちゃ上手い٩(♡ε♡ )۶『リプリー』では、初めてディッキーに会うシーン。ディッキーとマージが海に遊びに行ったと聞いて、急いでリプリーが街の店で水着を買うんだけど、ぴっちぴちのブリーフしかなくて(^_^;)ブリーフ姿に皮靴っていう珍妙な姿で海辺に行くと、当のディッキーはラフなシャツ姿で砂浜に寝転んでるの。この時のアンスコさまの絶妙な表情に注目!

 リプリーは天性の詐欺師。アンスコさまがジョニー・フリン演じるディッキーを仕草から声色から英語のイントネーションから完コピする場面は、素晴らしすぎて寒気がした(笑)。この場面を見た時、監督のスティーブ・ザイリアンが何でわざわざ、アメリカ人であるリプリーに英国人(厳密に言えばアイルランド人だけど)のアンドリュー・スコットをキャスティングしたのか、理解できた気がしたわ。英国舞台の最高峰ローレンス・オリヴィエ賞を2度も受賞し、ハムレットチェーホフノエル・カワードユージン・オニールも何でもござれのカメレオン俳優、アンドリュー・スコット。まさにリプリーは彼のためにあるような役だった!

 

 リプリー海上のボートの上でディッキーを殺害するシーン。リアルに凄惨で、怖くて目を逸らしたくなったけど、アンスコさまの演技で、不謹慎にも時々吹き出してしまいました(^_^;)人間って、追い詰められた時思わぬ行動をとるでしょ?それをはたから見てるとどこか滑稽に見えるという…。その塩梅が彼、もう絶妙なんです。

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※ストーリーが進むにつれ、ダークヒーロー化していくリプリー。特に後半、彼の犯罪を執拗に追うローマ警察の敏腕刑事ラビーニが登場してからは、まるで「ルパン VS. ホームズ」みたいな展開に(^_^;)この2人の熾烈な心理戦には、手に汗握ります。

 

 リプリーは人間には興味を持たないようですが、絵画や彫像などの芸術にはかなり反応します。特に彼が心奪われたのが、ナポリの教会に飾られたイタリアン・ルネサンスの画家カラヴァッジオの「七つの慈悲の行い」。殺人者で詐欺師のリプリーが「慈悲の行い」って何の冗談かと思いますけどね(笑)しかし、ディッキーが冒頭リプリーに話して聞かせるカラヴァッジオの波乱の生涯(モデルにした娼婦の客引きを殺し、マルタやパレルモへ逃亡しながら絵を描き続け、結局客引きの仲間に捕まって顔を殴られ続けた末、死に至った)が、まるで彼らの行く末を暗示する前奏曲のようで、いかにも不吉でした。

 

 「リプリーは同性愛者なのでは?」という「匂わせ」は度々出てきます。原作者のパトリシア・ハイスミスもそうですし、ゲイであることを公表しているアンスコさまが主役を務めていることからしてそれは間違いないことだと思いますが、一方でリプリーとディッキーの間に果たしてそういった関係があったのか?となると想像の域を出ません。ただ、カラヴァッジオの作品「ダヴィデとゴリアテ」の解釈〜殺人する側と殺害される側は実は一体である〜を聞いた時のリプリーの動揺ぶりを見ると、彼のディッキーへの感情は、愛と憎悪、憧憬と侮蔑、様々な感情が絡み合った非常に複雑なものであったことが、想像に難くありません。


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カラヴァッジオ作『七つの慈悲の行い』


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カラヴァッジオ作『ゴリアテの頭を持つダヴィデ』

勝利の美酒に酔いしれて良い筈のダヴィデがなぜ、苦悶の表情を浮かべているのか……?

 

 アンスコさまはインタビューの中で

リプリーを単なる悪役と呼ぶのは安易ではないでしょうか。間違いなく、彼はアンチヒーローですよね。この物語と脚本の偉大な功績は、視聴者が必ずしも応援すべきではない誰かを応援してしまうことだと思うんです。ほとんどの視聴者は、彼に逃げ切ってほしいはずです。

と語り、作品のテーマについては、彼がかつてウエストエンドで演じ、絶賛を浴びたシェイクスピアの『ハムレット』の台詞を引用して次のように語っています。

コミュニティにおける特定の要因を排除したら、デンマークに何かよくないこと(=腐敗)が起こるのだ。

 

 『リプリー』は、彼が造型した魅力的なアンチヒーローの姿を通して、1960年代を舞台にしていながら、富者と貧者の二極化、マイノリティ差別と社会の分断、特権階級の腐敗など、現代においても私たちが抱える様々な問題を提示する上質なサスペンスだと言えるでしょう。

 

★今日の小ネタ

①メソッド演技

 アンスコさまは「リプリーは魅力的な役柄だけど、彼の生き方やイデオロギーは自分と全く違うから、演じるのに非常に苦労したよ。僕はメソッド演技はしないからね」と語っています。メソッド演技とは、俳優が疑似体験によって役柄を理解し、完璧に没入してしまう演技法。メソッド法の実践者であるアンドリュー・ガーフィールドが映画『沈黙 サイレンス』で鎖国時代の日本に来たキリスト教の宣教師を演じた際、役に近づく為一定期間完全なる禁欲生活を送ったと告白して、ドリュー・バリモアに「信じられなーい。ホントに禁欲ですって?彼、大丈夫?」と、さんざんネタにされたのも記憶に新しいですが(^_^;)同じアンドリューでも演技のスタイルはずいぶんと違うようです(笑)

②エリオット・サムナー

ディッキーの親友で、リプリーによるディッキー殺害に勘付いた為、リプリーの第2の犠牲者となってしまうフレディ・マイルズ。演じているのはエリオット・サムナーという歌手で、なんと女性。しかもあのスティングの愛娘です。エリオットはアンドリュー・スコット同様、同性愛者であることを公表しています。

 原作者のパトリシア・ハイスミスも同性愛者で、原作の舞台ともなっている60年代当時、アメリカでは同性愛が犯罪視されていたために随分苦しんだようですが、ドラマにも同性愛のイマージュが散見されますね。


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★おススメ度……★★★★☆

リプリーの結婚詐欺に引っ掛かって地獄を見てみたい(⇐アブナイ人 笑)