オタクの迷宮

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阿部サダヲあってこそ〜ピカレスク・ロマン『シャイロックの子供たち』

  
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 U-NEXTで『シャイロックの子供たち』鑑賞。

 

 原作は団塊の世代の星、池井戸潤様。池井戸潤といえばドラマ『半沢直樹』、ストーリーはひと昔前の勧善懲悪時代劇みたいでワクワクするし、俳優陣の顔芸は面白いし……で、放送中はリアルタイムで楽しく見てました。ところがところが、その後勤めた職場に香川照之ソックリなパワハラオヤジがいて、そいつが池井戸潤の大ファンだったから、ついでに池井戸潤もキライになった(単純…笑)だからその後の『下町ロケット』も『陸王』も『空飛ぶタイヤ』も見ていない。

 

 ……で、同じ池井戸潤原作の映画『シャイロックの子供たち』をなんで突然見る気になったかと言えば、それはひとえに主役が阿部サダヲだったから。堺雅人阿部寛竹内涼真長瀬智也もみーんな、池井戸様の主役に相応しく、生真面目で正義のミカタで我慢強いイメージ(注・あくまで役者としてのイメージです)。んでも、ひねくれ者のヲタクはどーもそうゆう絵に書いたような男の中の男はニガテで(^.^;、チャランポランで、おどけるくせにどこか物悲しい翳のある(これもまたヲタクの勝手な妄想に過ぎないのですが)、阿部サダヲのリーマン役を見たかったんでした。

 

 つまんない前置きはいいからとっとと書け❗って声が、ごく少数の読者さんから聞こえた気がしたので(笑)感想を少々。

 

 ここは東京第一銀行のとある小さな支店。得意先に持って行く現金袋からいつのまにか100万円が紛失するという前代未聞の事件が発生。店内やら行員のロッカーやら、全員総出で探すうちに、行員の北川愛理(上戸彩)のバッグからその100万円の帯封が出てきます。上層部に呼び出された彼女は、「天地に誓って私ではありません❗」と猛反発。周囲から疑いの目を向けられる彼女をかばったのは、直接の上司である課長代理の西木(阿部サダヲ)ただ一人。彼は北川をなだめ、彼女と、北川に好意を持つ若手行員の田端(玉森裕太)と3人で真相究明に乗り出しますが、それはとんでもないパンドラの箱でした。それ以降事態は紛糾、銀行内の「不都合な真実」が次々と明るみに出てきて……。


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※課長代理・遠藤(忍成修吾)の悲劇は、カリカチュアライズされてるけど、銀行員…いや、リーマンあるあるだよね…。40年前、ヲタクが大学卒業後に勤めた機械メーカーでは、古川(杉本哲太)みたいなヤツ、そのへんにゴロゴロいたもん。今はどうなんだろう。日本企業のコンプライアンスの浸透度ってどれくらい❓

 

 うーーん、ヲタクの目に間違いはなかったっす❗一見日和見の事なかれ主義者で、上手く世間を渡っていく人たらしかと思いきや、思いの外洞察力があり、有能という刃を隠し持つ銀行員、西木。この映画、マトモなのは北川と田端くらいで(^.^;その他の登場人物は誰も彼もみな欲に目がくらんだシャイロックの子供たちであり、それぞれスネに傷持つ身、ストーリーが進むにつれ、彼らによる「キツネとタヌキの化かし合い」の様相を呈していきます。しかし西木とて例外ではありません。自らも深い闇を抱えつつ、一方では部下の無実を信じ、銀行に潜む巨悪を暴く、二律背反の人物。マクベスの魔女じゃありませんが、「きれいは汚い、汚いはきれい」なミステリアスキャラを、阿部サダヲはその緩急自在な演技力で、ひどく魅力的に表現してみせるのです。阿部サダヲを得てこの作品は、単なる企業サスペンスではなく、ある種のピカレスク・ロマンに昇華したと言えるでしょう。なんてったって彼の、阿部定をもじって芸名にした……っていう、日本人には珍しいアフォリズムがいいよね❗


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※年は1番若いが、行内の様子を最も冷静に、俯瞰しながら観察する田端役の玉森裕太(左)。こういう人たちがトップになる頃には日本の企業風土も少しは変わるかな❓…ってゆーか、玉森くんってホントにキレイね。このドロドロした映画の中で、玉森くんと上戸彩だけが一服の清涼剤。

 

 全ての真実が明るみに出た後、自らもまたシャイロックの末裔となってしまった西木は、どこへともなく姿をくらまします。折も折、『ヴェニスの商人』を観劇に来た北川愛理が、スーツ姿で颯爽と歩く西木を見かける所でこの映画は終わります。

 

 なんだなんだ、この終わり方。

 

 池井戸センセ、この続編は書いてないんだよね❓気になるなぁ、西木のその後。