オタクの迷宮

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『アメリカの良心』はいずこ~映画『スミス都に行く』

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(Washington from Pixabay)

 吉沢亮さんの今年のカレンダー(2020年4月~2021年3月)は、ニューヨークを舞台にした映画のオマージュ。5月のテーマは、アルフレッド・ヒッチコック監督の『裏窓』。足にケガしたカメラマンが、裏のアパートをこっそりパパラッチしているうちに、恐ろしい事件に巻き込まれていくサスペンス。(裏面では、バッキバキのセクシー吉沢さんが拝めます。ちっちゃいですけど=笑)

 

  『裏窓』で主演を務めていたのが、ジェームズ・スチュワート。この人はスゴイお方で、名門プリンストン大学を卒業後第二次世界大戦中はB29に搭乗、飛行時間は1800時間に及び、ハリウッドの俳優としては最高位の海軍少将にまで上り詰めました。ハリウッド俳優にしては珍しくスキャンダルに無縁、生涯お一人の奥様と添い遂げ(笑)誠実な人柄から、『アメリカの良心』と呼ばれました。

 

  そんなジェームズ・スチュワートが、そのキャラを遺憾なく発揮したのが、『スミス都に行く』ある州の上院議員が急死し、指名されたのはなぜかボーイスカウト団の団長スミス(ジェームズ・スチュワート)。実は州のフィクサーと州出身の上院議員たちの間でダムの建設を巡り巨大な汚職が進行していて、政治にはドシロウト、ただ誠実で愚直なだけのスミスなら容易に取り込めるだろうとタカをくくっていたのです。ところが政治家としての理想に燃えるスミスは、彼らの目論みに気付き、粉骨砕身努力して法案作成を学び、汚職に立ち向かおうとしますが…。

 

  これはジェームズ・スチュワートが演じたからこそ成立した映画❗他の俳優だったらウソくさくてシラケるようなセリフも、彼が演じるからこそ納得できるし、こちらも素直な感動の涙を流せる(笑)

 

  昔のハリウッドには、その内側から滲み出る人間性で役柄にリアリティを持たせるような俳優たちがいました。ジェームズ・スチュワートを筆頭に、彼の無二の親友だったゲーリー・クーパーグレゴリー・ペックなど。彼らの前では、生半可な演技術や、『演技派』という言葉すらも、色褪せて見えたほど。日本で言うなら、小津安二郎監督作品の常連だった笠智衆さん、黒澤明監督に見込まれて『七人の侍』で剣術の心得もないのに剣豪役に抜擢された宮口精二さんなどでしょうか❓

 

  折しもトランプ大統領がWHOへの資金援助からの撤退を表明。映画の中、歴代大統領の像の前で「大義に生きるのが政治家の務め」と、あくまで巨大な悪と闘う決意を固めたスミス。それは第二次世界大戦中、自らパイロットに志願し、自らの信じる大義の為に命を賭けて戦ったジェームズ・スチュワート自身とオーバーラップしました。

 

アメリカの良心』は、遠い空の上から、今このアメリカの現状をどんな想いで見つめているのでしょうか。