オタクの迷宮

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

男たちのやりきれない愛と孤独~映画『ブエノスアイレス』レストア版


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 横浜のミニシアター「ジャック & ベティ」でウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』観賞。20年ぶりに観たこの映画、撮影監督クリストファー・ドイルとの神タッグで、手持ちのカメラでズームして追いかけるように撮っていく躍動感(特に主人公ファイ(トニー・レオン)が職場の仲間とサッカーに興じるところ)、「香港はブエノスアイレスの反対側にある。足の下に香港があるんだ」ってファイ呟いた途端に映像が引っくり返るシーン等々、スタイリッシュな映像美が未だに色褪せてないことにビックリです。

 

なにせ、ウォン・カーウァイの映画ってカッコいいんだよね😊

 

  それまで祖国香港を舞台に映画を撮り続けてきた監督が、初めて海外、それこそファイが言うように地球の反対側に飛び出した……っていうことで当時もずいぶん話題になりましたね。一説には香港の中国返還問題をテーマにするのを避けるため……云々と言われましたが、よりにもよってブエノスアイレス(笑)

 

  でもだからこそ、祖国を捨て、地球の反対側まで逃げてきて、異国の街の片隅で身を寄せ合うようにして生きる男たちの絶望と孤独が

惻惻と胸に迫って、観ているこっちもどうしていいかわからなくなる😢しかも、彼らは同性愛者。自らが異端であり、社会に疎外されている感覚は、さらに深くなっていきます。

 

  主人公のファイは、お父さんの友人の会社で働いていたところが、会社のお金を盗んで逃亡。家族絶対主義の儒教的考え方からすれば、親の、そして家名に泥を塗ったわけで、それこそ「許されざる罪」。ファイはそれを悔やみ、飛行機代を稼いでいつかは父親に許しを乞い、祖国に帰ることを夢見ています。一方、ファイの恋人ウィン(レスリー・チャン)は、その出自は最後まで謎のままですが、その日暮らしで刹那的に生きる男。彼には、倫理観も、人生の指針も、希望も抜け落ちていて、心にぽっかり穴が空いているようです。ファイはウィンとの関係を清算しなくては……と思いながらも、ウィンの常套文句「今度こそやり直そう」に逆らうことができず、ズルズルと同棲を続けています。面白くないことがあるとプイと家出して、何日も帰って来ないウィン。置き去りにされ、欲望を持て余したファイが、公衆トイレで相手を探すシーンは……切ないです。また、トニー・レオンはこういう悲哀というか、切なさの表現が天下一品だからなぁ……。

 

  初めてこの映画を観た時には、ホモセクシュアリティを真正面から描いたそのガチさかげんに度肝を抜かれました😮それも当時、人気・実力共にトップクラスのトニー・レオンレスリー・チャンが演じたんですから……観た夜はなかなか寝つけなかったことを、つい昨日のように思い出します😅

 

  ……しかし、当時は絶頂期で、煌めく星のように耀いていたレスリー・チャンはもう、この世にいない😭健在なら、現在のトニー・レオンみたいに渋い魅力のイケオジに絶対、なっていたに違いないのに。悔しい、ほんとに。 ラスト、ウィンは、祖国に向けて旅立ったファイの部屋で、彼の毛布を抱きしめて号泣します。その姿が、レスリーにとって最後の場所となった香港のマンダリンオリエンタルホテルの一室、同じように絶望に苛まれていたであろうレスリー自身の姿と重なって、涙が溢れて仕方なかった。

 

……でもいい❗映画の中の名優たちは、生身の身体はいつか消え去る日が来たとしても、こうやって何度も銀幕に蘇り、繰り返し、繰り返し、私たちに感動を与え続けてくれるから。

 

  ★今日の小ネタ

イグアスの滝、怖い

冒頭二人で、あの有名な「イグアスの滝」に向かっているシーンで始まるんですが、道に迷って辿り着けないんですね。結局、別れた後にファイが一人で行って、びしょ濡れになる。きっと泣いてたと思うんだけど。滝の飛沫でそれとはわからない。それにしてもイグアスの滝って一体何なの❗❓世界中の水集めたみたいで、見てるだけで怖いんですけど。……

 


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イグアスの滝と言えば、昔ロバート・デ・ニーロが主演した『ミッション』という映画、ポスターにも使われている、磔にされた人が滝壺に落ちるシーン、このスタントマンの方が亡くなった……って報じられたんだけど、確か製作者側は「そんな事実はない」と言い張って、結局真相は薮の中だったらしい。今では考えられない話だけど……。

 

・モノクロからカラーへ

  ファイとレスリーの心情が暗く絶望的な場面では白黒で、気持ちが高ぶって楽しい時には鮮やかな色彩に変化します。登場人物の心象風景を色彩のあるなしで表す手法は、『婚約者の友人』(フランス)でも使われてましたね。カーウァイ監督から影響を受けたかな❓