オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

『薔薇の名前』~オタクの名作映画探訪①~中世のホームズ大活躍!

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 WOWWOWシネマで、ショーン・コネリー主演『薔薇の名前』が放映されました❗(2022年10月1日)……で今日は、このミステリー映画の名作をご紹介したいと思います。

 

  14世紀北イタリア、アヴィニョン教皇庁時代。清貧を旨とし、貧者にカトリック教会の財産を分け与えるべしと主張する聖フランシスコ修道会と教皇庁とが激しい論争を繰り広げていた頃のことです。主人公であるフランシスコ会修道士ウィリアム(ショーン・コネリー)は、北イタリア山奥のベネディクト会系修道院でその論議が開催されるため、その準備の為に若い弟子であるアドソ(クリスチャン・スレーター)と共に修道院を訪れます。ところが時を同じくして、修道士が惨殺されるという事件が起きます。状況から見て、身内の犯行であることは明らか。修道院で犯罪行為が起きた場合は、異端審問官の捜査対象となってしまいます。大事に至る前に真相を明らかにしたいという院長の依頼で、ウィリアムは真相究明に乗り出しますが、その間にも次々と修道士たちが奇っ怪な死を遂げていき……❗

 

  陰鬱な中世の、まるで迷路のような修道院、おぞましい悪魔信仰、閉鎖的空間に蔓延る男たちの隠微な欲望……。それらを背景に次々と起こる猟奇的な殺人事件。ゴシックホラー風味のミステリーと言っていいのではないでしょうか。何しろ、主演の二人を除いて、修道士たちが特異な風貌の人たちばかり😅たぶん特殊メークのせいだとは思うけど、蝋燭の光に浮かび上がる彼らの顔見てるだけでも怖い(笑)

 

  作者のウンベルト・エーコシャーロッキアンらしく、主人公からして「バスカヴィルのウィリアム」ですから😊雪の上の犯人の足跡を見て、かかとのほうが深く雪に埋まっていることから、後ろ向きに死体を引き摺ったのだろうと瞬時に言い当てるシーンなどは、ホームズファンの方なら思わずニヤリとするんじゃないでしょうか。

 

  それにしても、全編を貫くのは、その対象が何であるにせよ、盲目的にそれを信じ、少しでもそれに反するものは「異端」であるとして断罪することの怖さ。殺人事件の捜査に、あの悪名高き実在の異端審問官、※ベルナール・ギーが登場します。

※生涯で600件以上の異端審問に関わり、拷問の末、異端者を火炙りの刑に処したと言われている。

 

  ラスト、犯人の殺人の動機が明らかにされた時、現代人なら「えっ❓そんなことで人を何人も殺めたの❓」と思ってしまうかもしれませんが、「好奇心」や「知の探求」、「自分自身の頭でモノを考えること」、ましてや「風刺や批判」が重大な罪であった暗黒中世のキリスト教世界……という時代背景を考えれば、納得がいくのではないでしょうか。原作は神学、キリスト教義の論争、記号学や古典の知識など、本来のストーリーからしばしば逸脱して作者が蘊蓄を傾けることが多いらしく、極めて難解と言われていますが、監督のジャン=ジャック・アノーは分かりやすく読み解き、見事にエンターテイメント化しております。

 

  若きワトソン役、アドソを演じる若き日のクリスチャン・スレーターが瑞々しい魅力を振りまいています。このアドソ、元祖ホームズ・シリーズのワトソン君と違ってけっこう利発で気が利いてるんですね。機転をきかせて、師匠の危機を救うこともたびたび😊そんなスレーターは、当時50代半ば、渋いイケオジの魅力を振りまくショーン・コネリーとは好対照で、二人のツーショットを見ているだけでも萌えます😊

 

題名の『薔薇の名前』。ラストクレジットのアドソのモノローグで「ああ、そうだったのか」となります。陰鬱で、一見救いのないイヤミスに見えるこの作品ですが、やはり、人として生きていくうえで救いとなるのは、「愛」。そんな作者の声が聞こえてきそうな、ちょっとホッとする題名の種明かし。

 

  記事を読んでこの映画に興味を持たれた方、U-NEXTでは配信中のようです。また、WOWWOWに加入していらっしゃる方、シネマチャンネルでは同じ映画を翌月も再放送することが度々あるので、注意していてください😊