オタクの迷宮

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暗号解読に燃える女たち〜『ブレッチリー・サークル/サンフランシスコ』

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 Netflixで『ブレッチリー・サークル/サンフランシスコ』鑑賞。めちゃくちゃ面白かった❗……ってゆーか、ヲタク好みの作品でした。

 

 これ、キャストにどこかで見た顔の人がいるなぁ…と思ったら、以前U-NEXTで観た『暗号探偵クラブ〜女たちの殺人捜査(ブレッチリー・サークル)』の続編…というかスピンオフだったのね。『暗号探偵クラブ』は、第二次世界大戦中、英国政府の機密作戦の1つとして、ドイツ軍の誇る暗号エニグマ解読に功のあった軍事基地ブレッチリー・パーク出身の4人の女性たちが、その類まれな暗号解読能力を生かし、凶悪な殺人事件のナゾを解いていく話でした。

 

 今回のスピンオフでは、4人のうちの独身2人組、ミリー(レイチェル・スターリング)とジーン(ジュリー・グレアム)が、戦時中ロンドンで起きた殺人事件の解決のため、遠くアメリカのサンフランシスコに遠征するお話しです。ブレッチリー・パークで共に暗号解読に挑んでいた仲間の女性が戦時中のある夜惨殺され、しかもその舌を切り取られる…という猟奇的な事件が起きました。犯人は当時ロンドンに駐屯していた米兵のうちの1人であることが疑われ、終戦後14年も経って、そっくりな事件がサンフランシスコで起きていることを知った2人は、真相究明の為にサンフランシスコへ。戦時中、暗号解読で協力関係にあったプレシディオ軍事基地のアイリス(クリスタル・バリント)と、若いながらメカにめちゃくちゃ強いヘイリー(シャネル・ペロソー)、そして警察署の事務員で日系人のオリビア(ジェニファー・スペンス)が仲間に加わり、数々の難事件に挑んでいきますが……❗

 

 戦時中は特異な能力を生かして国家の為に粉骨砕身していた女性たちが、暗号解読は国家の最上級機密であるため、自分自身が成し得た業績を家族にすら話してはいけないのです。ある者は専業主婦になって当時の亭主関白な夫たちに仕え、ある者は女性であるがゆえに能力を十分に生かしきれない職業に甘んじなければなりません。ミステリーでありながら、当時の優秀な女性たちのジレンマを掘り下げて描写しているのは、本編の『暗号探偵クラブ』(全2シーズン)同様、サンフランシスコ編も同じ。また、当時1950年代末のアメリカの国内情勢…米ソ冷戦やベトナム戦争前夜の緊張状態(米国が1954年ジュネーブ協定を反故にし、南ベトナムの内政に干渉してベトナム統一を妨害、戦争に発展した)、マッカーシー赤狩り等が描かれます。

 

 エピソードは全部で8つですが、2話で1つの事件が解決するので、見やすい。ついつい見続けて寝不足になることもないから、年寄りのヲタクにはちょうど良かった(笑)もちろん『暗号探偵クラブ』を見ていたほうがより面白いけど、サンフランシスコ編を先に見ても全然問題ありません。どのエピソードにもさまざまな形式の※暗号やダイイングメッセージが登場するので、そちらのほうも興味深いです。

※各文字を辞書順で3文字分ずらして暗号文とする「シーザーの暗号」、棒に細長い紙を巻き付け、それをほどいて暗号化する「スキュタレー式暗号」(これ、むかし孫と一緒に見ていた『ピタゴラスイッチ』に出てきたピタゴラ暗号棒です(^_^;))など、次々と登場。

 

 それぞれよく練られたストーリーで、ナゾ解きの面白さと同時に、先に書いたように、当時女性が置かれていた立場や、黒人や日系人に対する差別問題がリアルに描かれていますが、特に当時の同性愛者たちの苦難を描いたエピソードが印象的でしたね。1950年代当時、ミリーたちの祖国イギリスでも彼女たちが移り住んだサンフランシスコでも、同性愛は犯罪。ジーンの口から、戦時中の上司であった※アラン・チューリングの悲劇が語られる場面は、ヲタクの心に刺さりました(ToT)

アラン・チューリングはブレッチリー・パークを創始した数学者。現在のコンピュータシステムの原型を作った超天才ですが、同性愛者であったために戦後逮捕され、去勢処置を受けるという屈辱を味わい、それが元で精神を病み、ついには自死してしまいます。彼の一生は、映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』に詳しく描かれています。チューリングを演じたベネディクト・カンバーバッチの神演技と共に、ヲタクにとっては忘れ難い名作。

 

 2018年の作品だから、もうシーズン2が製作されるメはないのかなぁ…。彼女たちのその後が知りたいけど…。なんか、寂しい(笑)

 

★今日の小ネタ

ネトフリの説明には「英国の女刑事二人がサンフランシスコへ…」って書いてあるんだけど、ミリーとジーンは刑事じゃないよ〜〜(^_^;)