オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

日本的湿り具合や良し〜映画『ひみつのなっちゃん。』

 
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U-NEXTで『ひみつのなっちゃん。』鑑賞。

 

 かつての売れっ子ドラァグクイーン、ヴァージン(滝藤賢一)は、今は服飾関係の企業に勤めており、伝説的なダンスを人前で披露することは封印していました。しかし、夜になると自分のアパートの一室でバッチリメークを決め、練習に余念がないヴァージンなのですが‥‥。そんなある日、新宿2丁目界隈のクイーンたちの兄貴‥‥もとい、姉御的存在だったなっちゃんカンニング竹山…最初から最後まで死んでる役(^_^;)…しかも最後には}#@$%*&(‡№)……笑。お疲れさまでした❗)が突然死したとの知らせが。なっちゃんはいつも明るい笑顔で、周りがしょんぼりしていると「笑いなさいよ❗」と突っ込んでくるムードメーカー。しかし一方で、自分のオネエ人生を「親や親戚に顔向けができない」と恥じてひた隠しにしていたらしいのです。ヴァージンと、なっちゃんの経営する和食屋で働いていた弟子的存在のモリリン(渡部秀)、ズブ子は、なっちゃんの生前の意向を汲んで、なっちゃんを「フツーのオジサン」として荼毘に付してあげようと、「オネェの証拠隠滅」の為、なっちゃんのアパートに忍び込みます。ところがちょうどその時、なっちゃんのお母さん(松原智恵子)とバッタリ出くわしてしまいます。なんとかその場は取り繕ったものの、郡上八幡で行われるなっちゃんの葬儀にぜひ参列してほしいとお母さんから誘われたからさあ大変。彼ら自身が「フツーのオトコ」として葬儀に参列すべく、てんやわんやの珍道中が始まりますが‥‥‥。


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※村人たちの前でダンスを披露し、瞬く間に人気者になるモリリン(左・渡部秀)とズブ子(前野朋哉)。この2人の「ないしょダンス」がとってもキュートなの😍滝藤さんのダンスももっと見たかったなぁ。

 

 欧米映画のドラァグクイーンものって、「周囲の偏見にもメゲず、自己実現欲求を貫き通す」パターンか、「周囲の偏見と差別を糾弾し、生き易い社会を目指して戦う」パターンが多いと思うんですが、今回の映画に登場する3人のオネェたちは、まるで日陰に咲く雪割草のように謙虚で健気で控え目なんです。こういう湿った情緒、行灯の微かな光のような彼らの描き方は、今は廃れつつある古き良き日本映画の、懐かしい匂いがします。ワケありな人たちが、田舎の美しい自然や人々の人情に癒され、生きる希望を取り戻す…というストーリー展開は『カルメン故郷に帰る』(木下恵介監督)を思い出させますが、あの映画の突き抜けたヒロインたち(高峰秀子、小林トシ子)より、今作品の3人のほうがよっぽどヤマトナデシコっぽい(笑)


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※「水と踊りの城下町」と称される郡上八幡

 

 郡上八幡に到着した後、モリリンとズブ子がダンスを披露して村人たちからヤンヤの喝采を浴びた後、お世話になっている家のガンコおやじ❓に、ヴァージンが「‥‥‥ゴメンナサイ、こんな踊り見せてしまって‥‥。イヤな気持ちになったんじゃありませんか❓」と問いかけると、オヤジさんが「なーに、※郡上踊りと一緒だろ。」と答えるシーンをはじめとして、ハートウォーミングなシーンがいっぱい❗(滝藤さんがインタビューで、コロナ禍で撮影が大変な中、郡上八幡の自然と住民の方々の暖かさに励まされた……と仰っていましたね)

※郡上踊り…7月から9月まで開催される「日本一長い盆踊り」。特に盂蘭盆会の徹夜踊りには、全国から数万人の踊り子が来場するそうです。

 

 ラストのオチはあるあるだけど、心はほっこり、目元はじんわり(笑)。3人のヒロイン(❓)の心根の優しさと、郡上八幡の目に染みるような自然の美しさに心癒される佳作。キャスティングされてから、かなりハードに役作りをされたのではないか‥‥‥と思わせる、お三方の見事なドラァグクイーンぶりも必見です❗