横浜駅直結のシネコン「Tジョイ横浜」にて、『陰陽師0』鑑賞。
ご存知、実在した平安時代の陰陽師・安倍晴明の青年時代(陰陽寮の学生であった頃)を描いたもの。人間と怨霊が夜の暗闇の中で共存し、人外なる存在が広く信じられていた時代。政治は卦(うらない)によって決定されたほか、病や災厄、天変地異も何かの祟りか呪いと考えられていたため、厄を祓う祈祷の儀式を司る最も重要な※被官と目されていたのが陰陽寮だったのです。学生たちは陰陽師としての出世を目指して互いにしのぎをけずり、陰陽寮内部では妬みと羨望が渦巻いて、学生たちはお互いに疑心暗鬼に陥っていました。もっとも陰陽師はどう頑張っても、最下位の貴族に相当する位階(従五位下)にしかならないと、学生たちが愚痴っている場面が出てきますが…。
※中務省や宮内省など八省の下には、職・寮・司から成る「被官」が置かれていました。陰陽寮は中務職の管轄。
そんな中、人並外れた呪術の才から、「狐の子」と陰で呼ばれている若き安倍晴明(山崎賢人)は、学生たちとは真逆で出世など無関心、孤独で人嫌いの変わり者。 ある日晴明は、貴族で笛の名手である源博雅(染谷将太)からその腕を見込まれ、博雅の従妹に当たる※徽子女王(よしこ…奈緒)を夜な夜な悩ませる怪奇現象の正体を突き止めて欲しいと頼まれます。しかしそれは、陰陽寮はおろか、都全体を巻き込む凶悪な陰謀のほんの序章にしか過ぎませんでした……❗
※この方も実在の人物。映画で描かれるように箏の名手、且つ女流歌人でもあったようです。伊勢斎宮であったため、入内後は斎宮女御と称されました。三十六歌仙の1人。
※晴明の唯一のバディにして親友となる源博雅。彼が奏でる笛の音は、まるで天上の音楽。実在の源博雅も管弦の名手だったようですね。
※お互いに想い合う博雅と徽子女王ですが…。この2人がまたね、純情可憐で愛おしくてね、胸キュンモノです。2人が登場する場面は映像がホントに綺麗😍
安倍晴明役が山崎賢人……って聞いた時はちょっと意外で(^_^;)若手で言うなら、清水尋也みたいな、心に闇を抱えたお耽美イケメンを想像してたんで、賢人くんだと健全過ぎない?って(笑)しかしこの作品に登場する晴明は、占いは所詮統計学の一種だと断じ、呪術は顕在意識と潜在意識を自在に繰る催眠術師のようなものだと考える、19世紀のロンドンから平安時代に突如ワープしたシャーロック・ホームズみたいな卓越した知性の持ち主なんで、賢人くんはピッタリ、はまり役だったね。で、もちろん頭脳明晰な変人ホームズには、お人好しでおっちょこちょいでフェミニストなワトソンくん(源博雅)がつきもの。2人の凸凹コンビが京の都を舞台に繰り広げる冒険活劇で、見る前に(勝手に)溝口健二の『雨月物語』ふう怪異譚(例えが古すぎる……笑)を想像していたヲタクはちょっと面食らったけど、これはこれでじゅうぶん楽しめました。賢人くんお得意のアクションシーンもあるしね。平安時代の雅な装束であんな大立ち回りができるのは、日本の芸能界広しと言えども山崎賢人ただ一人でしょう。家族揃って楽しめる一大エンターテイメントとなっています。
※作品中、平安朝のお耽美ムードを一身に背負っているのが、板垣李光人クン演じる時の帝(年代的に考えると、村上天皇でしょうか。とりわけ和歌を愛した風雅な帝だったよう)。薄衣を纏ってしどけなく脇息(きょうそく)にもたれるお姿は色気ありすぎで正視できませぬ(笑)
しかしそれにしても、この作品の爽やかイケメンな晴明くんが、どうやったら『光る君へ』(今年のNHK大河ドラマ)の腹黒くて胡散臭い晴明(ユースケ・サンタマリア)になっちゃうんだ❗❓恬淡として無欲だった晴明も、宮廷の政争に巻き込まれてついにはキャラ変しちゃうのか……。
いと、口惜し(笑)