オタクの迷宮

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映画『エルヴィス』ライブシーン全解説~オースティン・バトラーはシャーマンである❗


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  ヲタクにとってひとつの映画にこんなに熱狂して、映画館に通いつめる‥‥というのは、『ウェストサイド物語』以来の現象です。(注・ロバート・ワイズ版のほう。スピルバーグ版はもちろん素晴らしかったのだけど、どちらかと言えば沼堕ちしたリフ役のマイク・ファイスト見たさに通った  笑)

 

  前の記事で、映画のコピーライティングにもあるように、「映画『エルヴィス』は最高の夏フェス体験❗」って書いたけど、見る度にその想いは強くなります。バズ・ラーマンの一番の功績は、私たちがもはや永遠に触れることのできない偉大なる「キング・オブ・ロック」の数々の伝説的ライブを、まるで後世の私たちがその場に居合わせたかのような臨場感を以て、銀幕上で完ぺきに再現してみせたこと。むろん、それは逸材中の逸材、オースティン・バトラーの起用によって初めて為し得たこと。この映画のオースティンはもはや役者とは言えない。まるでシャーマン。

 

さて、エルヴィスの生涯にわたるライブシーンが再現される豪華絢爛な映画『エルヴィス』。今日はそのライブシーンを中心にご紹介します❗

★ラスベガス「エルヴィス・オン・ステージ」(1968~1973年  エルヴィス34~39才)

のっけからエルヴィスが過労と心労(プリシラと離婚直後)でステージ直前に倒れ、悪徳マネージャーのパーカー大佐(トム・ハンクス)が、「今一番大事なのは、この男が今夜のステージを務めることだ」と、鬼のように言い放つショッキングなシーンで幕開け。薬漬けのエルヴィス(オースティン・バトラー)はそれでも不死鳥のように蘇り、神がかったステージを見せます。そこで歌われるのが『An American Trilogy(アメリカの祈り)』。Glory, glory, Hallelujah……というくだりが胸に痛い😢

 

ルイジアナ・ヘイライド(ラジオ公開番組)1954年(エルヴィス19才)

即興で"Baby,baby,baby,baby…"としゃくりあげるように『ベイビー・レッツ・プレイ・ハウス』を歌い出し、彼の下半身の激しい動きに感電したように女性たちが次々と叫びだし、舞台に駆け寄ってエルヴィスの着衣をもぎ取ろうとします。初めてエルヴィスを見たパーカー大佐(トム・ハンクス)がいみじくも、「彼は禁断の果実だ‥‥」と呟く瞬間。早くも10代でアメリカのセックスシンボルとなり、「骨盤エルヴィス」の名を欲しいままにした彼。

 

‥‥でもヲタク的にこのシーンの一番のツボは、なんで女性たちが大騒ぎしているのかわからなくてきょとんとしてるオースティン=エルヴィス。「なんであんなに騒いでるの❓」「お前の脚だよ❗もっと動かせ❗」「う、うん‥‥」か、可愛ええ‥‥(´ρ`)オバサン、しょっぱなからヤられました(笑)


エルヴィス誕生の瞬間! 映画『エルヴィス』興奮の‟フル”ライブシーン|2022年 7月1日(金)公開 - YouTube

 

★ラスウッド・パーク(独立記念日公演)

1956年(エルヴィス21才)

 ニューヨークでのハドソン・シアターで人気TVショー「スティーブ・アレン・ショー」に出演したエルヴィス。その頃のエルヴィスは腰をグラインドさせるパフォーマンスが黒人を想起させると保守派に睨まれ(何せまだ人種隔離法が存在していた時代)、激しい動きをしたら逮捕すると警告されていました。パーカー大佐のアイデアで燕尾服を着せられ、犬相手に「ハウンド・ドッグ」を歌うことを強要されたエルヴィスは、初めて人生最大の屈辱を味わいます。その直後のライブ。

(逮捕されたって構うものか❗)「俺は俺だ❗」

と叫び、小指を立てて警察を挑発、歌い始めるのがディキシーランドテイストの『トラブル Trouble』。生来、権力への反逆児であるべき自身の役割を確信したエルヴィス。「ロックの帝王」誕生の瞬間と言っても良いでしょう。


常識を打ち破る魂の熱唱、映画『エルヴィス』「トラブル」本編シーン【2022年7月1日公開】 - YouTube

 

★クリスマス特別ライブ

1968年(エルヴィス 33才)

憧れのジェームズ・ディーンを目指して、一時期俳優業に専念したエルヴィス。しかしその間ビートルズローリング・ストーンズの台頭によって世界のロックシーンは様変わりし、ロックンローラーとしてのエルヴィスはもはや過去の人。再起をかけて臨んだTVでの復活ライブ。ミシンメーカーをスポンサーにつけ、「良きパパ」のイメージで再度売り出そうとするパーカー大佐に反抗、ライダースーツに身を固めたエルヴィスは、『ハートブレイクホテル』『ブルースウェードシューズ』『ハウンド・ドッグ』『監獄ロック』を歌いまくり、本来の自分自身を取り戻します。さらに撮影中ロバート・ケネディ暗殺の報を受けたエルヴィスは、スタッフたちと徹夜で作り上げた、暴力と混乱の中でも理想を希求することの大切さをテーマにしたメッセージソング『明日への願い』を純白のスーツで熱唱、なんと70%の視聴率を叩き出し、「キング健在」を聴衆に強烈に印象づけるのです。


伝説のライブ完全再現!映画『エルヴィス』本編映像(「監獄ロック」ライブシーン) 2022年7月1日(金)公開 - YouTube


名曲「If I Can Dream」を披露する『エルヴィス』本編映像 - YouTube

 

★ラスベガス『エルヴィス・オン・ステージ』

1968年~(エルヴィス34才~)

クリスマスライブで、「やはり自分にとって大切なのは、直接ファンと触れあうこと」と気づいたエルヴィスは、ビッグバンドを編成して、インターナショナルホテルでのステージに臨みます。ヲタク的には、観客の熱狂にきょとんとしていた少年エルヴィスよりもやはり、人生経験を経て大人の色気を発散する『サスピシャス・マインド 』のエルヴィスが好き😍オースティン・バトラーがまた神がかっていて、「スキニーボーイ(やせっぽち)」と呼ばれた10代から、壮年の成熟に至るまでのエルヴィスのパフォーマンスのさまざまを完璧に演じ分けています。


映画『エルヴィス』本編映像(「Suspicious Minds」ライブシーン)|大ヒット上映中! - YouTube

ラスベガスの別のシーン(パーカー大佐に対するエルヴィスの疑念と怒りが頂点に達し、ステージ中に大佐をなじる)で歌われていたのが、『Pork Salad Annie ポーク・サラダ・アニー』。オースティンは、エルヴィスが歌いながらガブリとマイクをかじるマネをするところも忠実に再現しています。

 

★エルヴィス最後のステージ

1977年(エルヴィス42才)

アンチェインド・メロディ』のピアノの弾き語り。もはや観ているこっちも涙が止まらない。この曲、映画『ゴースト~ニューヨークの幻』で使われていて、ヲタクも大好きな曲なんですが、オースティン・エルヴィスからいつのまにかご本人の絶唱と、生前の姿に切り替わるニクイ演出。


Baz Luhrmann's Elvis (Unchained Melody) - YouTube

 

映画『エルヴィス』は映画史上、ミュージシャンの伝記映画としても音楽映画としても、そしてさらにミュージカル映画としてもひとつの金字塔を打ち立てたと言っても過言ではないでしょう❗