オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想、推し活のつれづれなどを呟いたりする気ままなブログ。

『天上の花』と舞台挨拶(ジャック & べティ横浜)

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  横浜黄金町のミニシアター、ジャック & べティで『天上の花』鑑賞。日本近代詩の祖とも言われる萩原朔太郎の息女・葉子の小説『天上の花~三好達治抄』の中から、特に、朔太郎の弟子のような存在である三好(東出昌大)と朔太郎の奔放な妹慶子(入山法子)との短くも激烈な結婚生活をテーマに選んで映画化したものです。

 

  ヲタク、萩原朔太郎の詩集『月に吠える』は学生の頃すごく好きだった。月、孤独、冷たい、病的、絶望、メランコリー……のメタファ。並行して太宰治にもハマってたから、かなりキてたよね(笑)朔太郎って大のミステリーファンで、探偵が登場する『殺人事件』なんて詩もあって、江戸川乱歩に傾倒してたらしい。案外お耽美だったのね。……って、何の話してるんだ(笑)

 

 この映画の主役たる三好達治には殆ど興味なくて😅それでも一つだけ、名前に惹かれて読んだ詩集が『花筐(はながたみ)』。大好きな世阿弥の同名のお能は、時の帝に恋した照日御前の一筋の愛をテーマにしたものだったので、そんな純愛イメージを抱いていたら、三好の詩はぜんぜん違った。……愛する女性をそれぞれ花に例えて詠んだもので、詩に使われている言葉は一見、綺麗なんだけど、女性の側から見ると、女性に対する行き過ぎた偶像化(理想の押し売り?😅)に、ちょっと引いちゃいました。(ちっ、女は所詮鑑賞用かよ)みたいなね(笑)

 

  映画を見て、若い頃からヲタクの男を見る目は確かだったんだと思ったわ(⬅️バカ😅)

初めて会った時から慶子の美しさに魅いられた三好は、16年の歳月を経てやっと彼女との結婚にこぎ着け、越前三国の海岸に古家を借りて二人で暮らし始めます。慶子にとっては4度目、三好にとってはその為に妻子を強引に離縁した末の、初めから不穏な未来を予感させる結婚でした。長い年月、三好の妄想?の中で醸成された「慶子像」と、実際の慶子はもちろん、天と地ほどの違いがあります。特に彼女は思想や芸術なんて知ったこっちゃない、美味しいものと綺麗な着物が大好きな現実主義者・享楽主義者なんですから(笑)

 

 二人の初夜の翌朝 、先に目覚めた三好が、寝ている慶子の口からヨダレが流れているのを見るんですね。一瞬の落胆と戸惑い、その直後に雑念を振り払うような東出くんのその時の表情が何とも言えない、凄い。ヲタク的には、彼らの愛の生活(始まりに愛が存在したか否かは論議の余地があると思いますが😅)の崩壊は、三好が慶子のヨダレを見た時にすでに始まっていたと思いますね、うん。

 

この二人の人生観のスレ違いと、貧しい彼を見下す慶子の冷たい視線は三好を追い詰め、彼の言動は次第に狂気じみてきて、何かというと激昂し、ついには慶子に暴力を振るうようになります。慶子は当時の日本の女性にしては珍しく強烈な自我の持ち主ですから、三好のDVに決して屈せず真正面から逆襲して、さらに三好の逆鱗に触れる……という負の連鎖。ヲタクはもはや途中から、慶子に感情移入しちゃって、(頑張れ、DV夫になんか負けるな!)と心の中で叫ぶばかり。ラスト近く、いよいよ慶子が家からの脱走を試みた夜中、それに気付いた三好が追いかけてきて、後方のトンネルからぬっと現れるシーンなんて、東出くんタッパはあるわ、表情は鬼気迫ってるわで、まるでホラー((( ;゚Д゚)))トンネルを抜ければそこは鬼の住処であった……なんて、シャレにならないよう(ブルブル)

 

  現代的な価値観・倫理観から見れば当時の芸術家や詩人、作家たちの生きざまって今とは違いすぎるし、受け入れられないものも多々あるけれど、確実に彼らが存在した結果として今の日本があるわけで。三好達治萩原朔太郎の作品を読んだことのある若い世代が今どれだけいるかを考えると、風化しつつある日本の文学史・思想史に光を当てた、この『天上の花』のような作品が、もっともっと生まれてきたらいいな……と思いました。

 

……そしてそして、上映後には片嶋一貴監督、東出昌大さん、入山法子さんご登壇~~

(*’ω’ノノ゙☆ぱちぱちぱち

入山さんの様に華奢な、楚々とした方が、あんな激しい、まるで肉弾相打つ……みたいなテンションバリバリの芝居をするなんて。女優さんの根性ってハンパない!

そして、この映画の東出くんは、何だろう、捨て身の、失うものなんて何もないといった風情で、凄い役者さんだなぁ……と改めて思いましたね。『寝ても覚めても』や『スパイの妻』の時より、さらに吹っ切れた……というか。ヲタク的には、役者は銀幕の上で、舞台の上で、演じて魅せてナンボだと思っているので、これからもぜひ頑張って欲しいと思います😊

 

★ついしん

  吹越満がね、萩原朔太郎にぴったりでしたね。まあヲタクは元々朔太郎推しだし、吹越さんも大好きな俳優さんなんで嬉しかった😍吹越さん主演で萩原朔太郎の生涯……なんていうのも見てみたいな。

 

有森也実が、意表をつく役でカメオ出演、ビックリした😮こちらも、入山さんに負けず劣らず女優魂全開。

 

また、三好が病床の慶子にお見舞のバナナを持っていくシーン(当時のバナナは超高級品)をはじめとして、時代考証等細部に至るまで丁寧に作り込まれた作品です。