オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想、推し活のつれづれなどを呟いたりする気ままなブログ。

フェミニズム・ホラーとでも言うべき?~『MEN / 同じ顔の男たち』


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 桜木町駅前のシネコン「ブルグ13」にて、『MEN / 同じ顔の男たち』(A24 アレックス・ガーランド監督)鑑賞。

 

  ロンドンに住むハーパー(ジェシー・バックリー)は、離婚話がこじれた末に、アパートの階上の部屋から落下する夫ジェームズを目撃、さらには鉄の柵に串刺しにされた彼のご遺体(かなりリアルなので、気の弱い方は注意!)を目の当たりにして、日夜そのトラウマに苦しんでいました。疲れ果てたハーパーはカントリーハウスを借り、2週間の休暇を取って、ロンドンから数時間の小さな村に滞在することにします。

 

  カントリーハウスの管理人ジェフリー(ロニー・キニア)は、庭のリンゴをかじっているハーパーに、「食べちゃダメなんだよ。リンゴは禁断の果実なんだから」と謎めいた言葉を吐きます。初対面にもかかわらず、ずかずかとこちらの気持ちに土足で踏み込んで来るジェフリーに、最初から辟易するハーパー。気を取り直して散歩に出かけた先でも、路上生活者の全裸の男にストーキングされたり、親切めかしてハーパーに近づき、挙げ句の果てに「あなたの出方次第ではご主人は死なずに住んだかもしれない」などと言出だす神父(しかも、ものすごい至近距離で膝に手なんか置いちゃって、キモい )、ストーキングを訴えても取り合わない警察官など、出会うのが全員、セクハラ男パワハラ男のオンパレード(しかも、何故かみーんなおんなじ顔……キモい)……そしてその夜、釈放されたストーカーの男がカントリーハウスに押し入ろうとしたその瞬間から彼女の、想像を絶する恐怖と血塗られた惨劇の一夜が幕を開けるのです。

 

  導入部の絵面~英国の典型的な田園風景や森の描写は、同じA24のホラー『ミッドサマー』や『ラム LAMB』と同様ひじょうに美しいです。だからこそ、クライマックスからラストにかけての恐怖に満ちたグロさ(ガチR15!)が一層際立つしくみ。

 

  この映画に出てくるメンズは一人残らずクズなんだけど、いっちゃんクズっぷりがハンパないのが、ハーパーの死んだダンナのジェームズでしょう。自分が死んだ後も、奥さんを心理的に支配しようなんて、冗談も休み休み言えっつーの!……かなりの粘着性気質(怒)でもさ、ハーパーの置かれたようなラジカルな状況じゃなくても、彼女と同じように、(どこか自分を責め続けてしまう)DVやセクハラやパワハラの被害者女性たちは大勢いるんだろうなぁ……。

 

  深層心理やトラウマが怪物を産み出す……って構図は、北欧ホラー『ハッチング 孵化』とかを思い出すけど、果たしてこれは彼女の罪悪感が産み出した妄想なのか?それとも……。ラストを見る限り、?/#[@[)〉〈☆¥&(ピー)だけどね。まあ、私たち観客の判断に委ねられているんでしょうね。

 

  恐怖におののきつつも、包丁持って健気に立ち上がり、自らの罪悪感とグロテスクな男性性が産み出した怪物たちと一人で戦うヒロインにジェシー・バックリー。『ワイルド・ローズ』、『彼女たちの革命前夜』『ロスト・ドーター』、『ウィメン・トーキング Women Talking』などで、すっかり銀幕フェミニズムの旗手となった感のあるジェシー。 彼女のキャリアに、新たなフェミニズム映画の1ページが加わった!……って、ち、違う!?😅(笑)

 

  監督は、『エクス・マキナ』のアレックス・ガーランド。今回の映画に登場する「男たち」は、『エクス・マキナ』で、ヒロインのAI(アリシア・ヴィキャンデル)の創造主たる社長(オスカー・アイザック)の、言わば「有毒な男性性」を彷彿とさせます。有毒な男性性のテーマと言えば、最近では『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(ジェーン・カンピオン監督)がすぐに思い浮かびますが、ガーランド監督って男性だよねぇ……ちょっとビックリ(笑)

 

★今日の小ネタ

ハーパーが訪れた教会には、祭壇の前になぜか、異教たるケルト神話に登場するオークキング(樫の木の王)の彫刻(下の写真)が置いてあります。さらに、「男たち」の一人、全裸のストーカー男がラスト、この異教のモンスターに変身してしまいます。

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で、オークキングの裏には女性器を象徴する彫刻が。キリスト教会に異端の像……。何のメタファなんだろう?ヒロインのジェシー・バックリーがアイリッシュだから?まあ、ハーパーがリンゴを食べるシーンはもちろん聖書のアダムとイブを連想させますが、他にも死んだ鹿とか、ハーパーの鼻孔に入り込む綿毛とか、意味がわからなくてモヤモヤする😅……まっ、ガーランド監督自身、「分かりやすい映画なんて興味ない」らしいので、まんまと監督の思うつぼなヲタクなんでした、ぢゃん、ぢゃん!