オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

グレイテスト・ショーマンはフランスにもいた❗❓〜映画『ショータイム❗』


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 U-NEXTにて、フランス映画『ショータイム❗』鑑賞。

 

 舞台はフランスの中南部カンタル県。カンタル県で酪農業を営むダヴィッド(アルバン・イワノフ)は3代目。しかし歴史ある彼の農場は深刻な経営難に陥り、税金も払えず崖っぷち。とうとう差し押さえの勧告を受けたダヴィッドは祖父が嘆くのを見て地方裁判所の判事に頼み込み、やっとのこと2か月の猶予期間をもらいます。しかし、さりとて打開策を思いつくはずもなく、いつものようにパブで仲間とグチりながら酒を酌み交わすしかないダヴィッド。その帰り道、看板に惹かれてふと立ち寄ったキャバレーで、彼はボニー(サブリナ・ウアザニ)というダンサーが繰り広げる※エアリアルシルクの華麗なパフォーマンスを見て、彼女の演技に涙が出るほど感動します。ダヴィッドはそこでなんと、納屋を改装してキャバレーを作り、田舎町のエンタメ起こしをしようという奇想天外なアイデアを思いつきます。翌朝ボニーの引き抜き?のため店を訪れると、ボニーが店主と大喧嘩の末飛び出すところに出くわします。ダヴィッドはボニーに自分の大構想を語り、演出家として彼女を誘いますが、当然のことながら「バッカじゃないの」と相手にされません。一度は諦めかけたダヴィッドですが、祖父の励ましもあり、再度アタック、やっとのことでボニーを口説き落とすことに成功。早速2人はパフォーマー探しに奔走しますが……。

※天井から吊るされたシルクを用いるアクロバティックパフォーマンス。フランス発祥とされ、サーカスのなどで行われています。


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※クセつよパフォーマーたち。

 

 まずもって、主人公のダヴィッドのキャラがイイ❗ボニーをスカウトしたのも純粋に彼女のエアリアルパフォーマンスに感動したからだし、おじいちゃんが始めた農場を町興しに活用したいって真剣に考えてるとこが純粋すぎて可愛すぎる(笑)。アイバン・イワノフとボニー役のサブリナ・ウアザニは共演2度目のようで夫婦漫才みたいに息もピッタリ、パフォーマー探しの珍道中には思わず吹き出します。またパフォーマーたちが『グレイテスト・ショーマン』も真っ青のクセ者揃いなんだよねぇ(笑)そんなキャラの濃いパフォーマーたちをボニーがビシバシ鍛える場面は、やはりフランス映画の『タイピスト!』を彷彿とさせます。まるで日本のスポ根みたいだな……と思ったのはヲタクだけ❓(さすが日本のアニメ大好きなフランス人だけあるわ(……ち、違う❓^^;)『アタックNo.1』並み(例えが古すぎる…笑)の特訓を乗り越えて村の人々にお披露目されるパフォーマンスは圧巻❗最後に歌われるダリダの『歌わさせておいて(マンデー・チューズデー)』が、この作品を貫くテーマになっています。


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※『アラベスク』のユーリ・ミロノフか、はたまた『エースをねらえ!』の宗方仁か、熱血コーチのボニー(サブリナ・ウアザニ…左)

 

 この、アメリカンドリームならぬフレンチドリームなストーリーが実話に基づいている……というのがビックリです。フランスというと、文化と芸術の都パリのイメージが強すぎて、EU最大の農業国であるという事実はあまり知られていません。主要農作物は、小麦・大麦等の穀物、牛乳、肉類。特に小麦の産出額はEUの36%を占めており、「ヨーロッパのパン籠」と呼ばれています。 ヲタクが当時住んでいたベルギーからフランスのグルノーブルまで車でスキー旅行に行った時も、ひとたびパリを抜けると、ひたすら森や大平原、山岳地帯が広がる景色に驚いた覚えがあります。ということはつまり、他のヨーロッパ諸国と違い、国土の大半が条件不利地域なわけで、フランス人はその困難な条件を乗り越えて農業を根付かせたわけですが、近年は特に牛乳価格の下落が進み、特に酪農業者は厳しい状況に追い込まれています。昨年はこの映画の舞台となったカンタルからほど近いレンヌ近郊で、酪農業者が彼らを取り巻く状況の改善を求めて、道路を封鎖したり、牛乳を道路に撒くなど、政府に対する抗議行動を繰り返し行いました。明るく楽しいコメディに、こういった社会風刺を織り交ぜるところは、フランス映画っぽいですよね。


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※キャバレーのオープンに向けて必死で宣伝活動を行うボニーたちですが、オープンの前日にとんでもない事態が勃発、絶体絶命の危機に……❗

 

 仲間同士「さまざまなハプニング、苦難を乗り越えて、どん底人生から一発逆転❗」する、笑いあり、涙ありの人情コメディって、ひと昔前はハリウッド映画の定番だった気がするけど、前出の『タイピスト!』にしろ、『ダンサー in Paris』、『アプローズ、アプローズ!』、『ウィ、シェフ!』、アイバン・イワノフも出演していた『シンク・オア・スイム〜イチかバチか俺たちの夢』にしろ、最近はフランス映画に多い印象。ヲタク的には、フランス人ってリアリストでクールな個人主義者…ってイメージを勝手に抱いてたけど、そのじつ熱血の人情家だったのかしらん(笑)