オタクの迷宮

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2023年〜オタクが選ぶ日本映画BEST10(10位〜6位)

2023年映画のBEST10、洋画に続いて日本映画の発表です!

 

 

★第10位 恋のいばら


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 イケメンカメラマン健太朗(渡辺圭祐)とアツアツ恋愛中の莉子(玉城ティナ)。幸せ一杯の彼女はある日、バスで隣り合った見知らぬ女性(松本穂香)から突然声をかけられます。桃と名乗るその女性は健太朗の元カノで、交際していた時に撮影された、自身のあられもない写真を取り戻したいと言うのです。「もしかしてあなたも撮られたのでは…?」と桃に言われた莉子は、ドキリとします。(撮られた時、彼に「データ消して!」って言って、彼は「わかった。消しとくよ」って答えたけど、もしかして…。)初めは半信半疑だった莉子も、お互いの過去を話し合ううち、次第に桃の方に心が傾き始め、健太朗の留守中に二人して彼の部屋に忍び込み、パソコンのデータを消去しようと計画しますが…。

 

 

これ、男脳で見ると、元カノと今カノがイケメン男を巡ってドロドロの闘いを繰り広げる…という妄想が脳内を駆け巡ると思うんだけど…

 

世の男たちよ、残念ながらそういう展開にはなりません www

 

 まあね、玉城ティナ松本穂香という、いずれは菖蒲杜若…という当代きっての超魅力的な美女たちが、自分の愛をゲットする為に競い合う図は、最高のドリームでしょうけどね。そうは問屋がおろしませんよ(笑)

 

何しろね、松本穂香玉城ティナ、Wヒロインが素晴らしく蠱惑的で色っぽい。ナード気質でゴミ屋敷の住人松本穂香と、彼女の憧れの対象で、リア充を生きる華やかなインフルエンサー玉城ティナ。その二人の関係が一気に引っくり返るラストのどんでん返しがみごと。奇想天外なストーリテラー城定秀夫監督が贈る、お洒落なラブサスペンス……時々コメディ…かな(笑)

 

★第9位 福田村事件


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 福田村事件とは、1923年(大正12年)9月6日、その5日前に起きた関東大震災後の混乱と誤情報(主として、朝鮮人が井戸の中に毒物を入れたとか、暴徒と化して日本人を虐殺している、家に放火している等)が生み出した社会不安の中、香川県から来て村に逗留していた薬の行商団15名が千葉県東葛飾郡福田村(現在の野田市)で、朝鮮人ではないかと疑われ、地元の自警団に暴行を受け、そのうちの9名(子供3人を含む)が殺害されたという凄惨な事件です。

 

 得体の知れぬ不安に苛まれ、流言飛語に惑わされて、「殺らなければ殺られる」という恐怖に駆られて集団ヒステリーに陥っていく人々のさまは、映画を観た後立ち上がれないほど衝撃的で恐ろしかった。また、被害者となった薬の行商団の人々は穢多非人と呼ばれる部落出身者たち。ずっと差別を受け続けていた彼らは、朝鮮の人々に対して、どこか相身互い的な共感を抱いているんですね。「(行商人の)彼らは朝鮮人なんかじゃない、我々と同じ日本人なんだ!」と言って村人の暴挙を止めようとする村長(豊原功補)に、行商の親方(永山瑛太)が激怒し、「朝鮮人なら殺してもええんか!」と叫ぶ場面に心抉られます。

 

 

日本の映画界って、自国の「負の歴史」には目を瞑って、なかなか白日の下に晒すことはしない傾向があり、そのうちに風化してしまうきらいがあるものだけど、『福田村事件』はそんな風潮に正面切って「NO」を突きつけた骨太な作品だと思います。この作品に携わった制作者、演者の皆さんに拍手を送りたい。

 

★第8位 仕掛人・藤枝梅安


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 池波正太郎が創造した江戸のダークヒーロー、仕掛人・藤枝梅安豊川悦司が原作のイメージぴったり!鍼治療を行う医者でありながら、人を生かすその同じ針で人を殺める、心の底に地獄を抱える男。「今年もまた、死ななかったね……」と、自分自身の因果応報に、常に向き合って生きている。人生を達観した、静かな佇まいの中にヒヤリとした殺気を感じさせ、何よりそのすらりとした長い指で、殺める相手の心の臓や、盆の窪に冷たく光る針を音もなくすっと沈ませる時の、所作の美しいこと。…そう言えば、『愛していると言ってくれ』で、トヨエツの手話の指の動きにヤられた…って女子、当時けっこういましたよね(笑)

 

 

 そしてもう一つ特筆すべきは、江戸時代の日本の美を余すところなく表現した、映像の美しさ。日本座敷の障子や床の間、闇夜に浮き上がる行灯の美しさを墨絵に喩えて、日本古来の美は光と翳の使い分けにある…と言ったのは谷崎潤一郎ですが、今までヲタク、その陰翳の美をスクリーンに再現した映像作家は、溝口健二(『近松物語』『山椒太夫』『雨月物語』など)ただ一人…と思ってきました。しかし今回、令和版『仕掛人・藤枝梅安』がヲタクのリストに加わった。この「光と翳」の美学はまた、善と悪の危うい狭間で揺蕩う主人公、藤枝梅安の生きざまそのものでもあるのです。

 

 いかにも日本的な様式美に溢れた一作。

 

★第7位 岸辺露伴ルーヴルへ行く


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 高橋一生によるスタイリッシュで魅力的な人物造型により、すっかり彼の当たり役として定着した感のある岸辺露伴。ついに待望の映画化!

 

 ヘヴンズドアという、相手の心情を書籍にして読み取る特殊能力を持つ、漫画家・岸辺露伴高橋一生)。最近の先生は「黒」に取り憑かれているよう。虫を溶かした染料で漫画を書いたりしています(^_^;)それは新人時代、祖母(白石加代子)が経営する下宿屋に寄宿している謎めいた女性・奈々瀬(木村文乃)という女性から聞いた、「この世には、最も黒く、最も邪悪な絵が存在する」と言う言葉が、今でも頭から離れないせいでした。世の中で最も黒く、そしてこの世で最も邪悪な絵。それは昔、日本の絵師が、神社のご神木から滲み出る漆黒の樹液を使って描いたものであるとか。いつもながら、露伴の好奇心はいたく刺激されます。ひょんなことから、その絵がルーヴル美術館に所蔵されていることを知った露伴は、編集者の泉京香(飯豊まりえ)を伴い、一路パリへ。しかし、不思議なことにルーヴルの職員たちは誰一人「黒い絵」の存在は知らず、データベースを検索して唯一ヒットした保管場所は、今はもう使用されていない地下倉庫「Z-13 」でした。そこで露伴は、泉やルーヴルの職員・野口エマ(美波)、高名なキュレーター辰巳(安藤政信)と共に、呪われた「黒い絵」が引き起こす、想像を絶する恐怖に直面することになるのです……。

 

 

ヲタクはドラマシリーズが大好きで、初回から見ていますが、映像化された『岸辺露伴』は、古い日本家屋の暗闇に潜む「何か」とか、神社のご神木に住み憑いている摩訶不思議な存在、先祖の悪行が末代まで祟る……等々、今の日本ではとうに廃れてしまった湿った情緒や、そこから生まれるそこはかとない恐怖をそれはそれは巧みに表現しています。そんな、古き良き日本文化の申し子のような露伴がいきなりルーヴルへ?と聞いて、ヲタクは当初面食らいましたが、観終わってみれば、ルーヴルが、パリが、西洋の文化が、例えば露伴の祖母が住む古い日本家屋の薄暗がりや神社の苔むした湿った匂いに代表される日本の文化と好対照を為し、フランスと日本、それぞれの美しさが際立つようで、なんとまあイキな演出なんだろうとうっとり。映画ならではのスケール感が堪能できる作品です。

 

★第6位 白鍵と黒鍵の間に


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 ジャズピアニストを目指す博(池松壮亮)は、恩師の宅見(佐野史郎)から、彼のピアノは生硬との指摘を受けます。彼が言うには、ピアノの極意は「Nonchalant(ノンシャラン)」であると。「それはどうしたら身に付くのですか?」と問う博に、宅見は「キャバレーへ行け!あそこには全てがある」と答えます。恩師の言葉通りに銀座のキャバレーでピアノを弾き始めた博でしたが、変なお面を被せられて、ジャズコンボのアドリブを入れればバンマスに罵倒され、しかもストリッパーの伴奏をするような仕事ばかり。口答えをすれば殴られるし^^;……そんな鬱屈した日々を送る博の元に、ある夜フラリと「あいつ」(森田剛)がやって来ます。色々と人生の辛酸を舐めてきたらしい嗄れ声の「あいつ」。彼は、なぜか博に「ゴッドファーザー愛のテーマ」を弾いてくれと頼むのでした。しかしその曲は、辺り一帯を仕切る暴力団のボス(松尾貴史)がこよなく愛する曲で、ボスがお気に入りの南というピアニスト(池松壮亮…二役)しか弾いてはいけない禁断の曲何人たりとも銀座界隈のキャバレーやクラブでリクエストをする猛者はいません。事情を知らない新参者の博はうっかり頼まれるままに弾いてしまいますが、それは地獄の一丁目。彼の人生は思わぬ方向に暴走し始めて……。

 

 恩師のひと言でキャバレー行きを決意してしまうような、初心でナイーブな音楽青年が、銀座の夜の街で人生の哀歓や世の矛盾を知り、右往左往した末に自らの生き方を選択していくさまを、軽妙洒脱なタッチで、また、ファンタジックなコメディとして描いた作品です。池松壮亮一人二役と言っていますがじつは、ジャズ修行に励む若き日の博と、人生酸いも甘いも噛み分けた大人の南は同一人物。時系列かなりハチャメチャだし、説明もなんもないので頭くるくるしますが、しかしこの映画はそれを池松壮亮の演技だけでこっちにわからせようとグイグイ力技を繰り出してくる(笑)

 

 

 銀座のクラブが舞台だし、主人公はジャズピアニストを目指す青年なので、もちろんジャズやブルースのスタンダードナンバーも満載🎵『As Time goes by』、『East of the Sun』、そしてクライマックスは『Nobody Knows You When You’re Down and Out』❗落ちぶれたクラブ歌手役のクリスタル・ケイもイイ味出してます。

 

も一回アタマ整理して、動画配信で見直してみようかな(笑)