オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

舞台で演じられてこそ~「海辺のカフカ」

 
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赤坂ACTシアターで「海辺のカフカ」観賞。今日ほどこの世に舞台という芸術が存在して良かったと思った時はありません。村上春樹の原作も大好きですが、その原作を故・蜷川幸雄はなんと美しい舞台に昇華させたことか。そして、蜷川さんに薫陶を受けた俳優さんたちが、その精神を余すところなく発揮したことか。

 

  原作を読んだ時は(果たしてこの二人の登場人物に血縁関係はあるのか❔)とか、(このメタファはどんな意味を持つのか❔)とか、無いアタマを搾っていろいろ考えていたことがもう、バカみたいで(汗)

 

  まずもってパラレルワールドや彼岸と此岸が交錯する世界を、一つ一つ透明なアクリルの箱に閉じ込めた画期的なアイデア。その箱の向こうに透けて見える15才の少女、寺島しのぶの愛らしさや歌声の美しさ、演技巧者木場勝巳が私たちに与えてくれる圧倒的な安心感…等々にただ、酔えばいい、身を任せればいいのだと。心と体がバラバラに分離して「生きていることがやっと」だというトランスジェンダー大島さんの静かなもの哀しさを岡本健一は見事に表現していましたし、登場人物の中で唯一、こちらの世界の生命力に満ち溢れたホシノさん役の高橋努も素晴らしかった❗カフカの、言わば裏人格とも言うべき「カラス」役の柿澤勇人、存在感ありましたね😊このストーリーそのもののテーマが「表と裏」「こちらとあちら」…デュアルなので、「カラス」ってけっこうシンボリックな役割を果たしているような…気がします。

 

  カーネルサンダースおじさん(鳥山昌克がまたソックリなんです😅帰り道、ケンタッキーの前で思わず立ち止まっちゃいました)とホシノさんの掛け合い、ホシノさんといっぱしの哲学者であるコールガールのからみなんぞは爆笑モノ。迷い猫探しの達人ナカタさん(木場勝巳)と、シャム猫ミミさん(もちろんラ・ボエームから来てるんですが、他にもうっかりすると聞き逃しちゃうような小ネタ満載です😅)はじめ猫たちとの会話も、笑いのうちに人間社会への鋭い諷刺が利いています。

 

  戦争や、正義の名を借りた暴力によって突然、人生を絶ち切られる不条理を、メッセージ性の強いストーリーではなく、不条理によって絶ち切られた人々の思いに焦点を当て、日本の古典「雨月物語」をメタファにしてどちらかといえば湿った情緒のあるストーリーを紡いだ村上春樹。最後に、その悲しみを乗り越え、佐伯さん(寺島しのぶ)の母性愛に励まされ、現実世界でタフに生き延びようとする主人公カフカ(古畑新之)に涙が溢れました。

 

  三時間の長丁場、ミステリー仕立てで進んでいくのであっという間ですが、唯一の解答が提示されるわけではありません。でも、それでいいような気がします。解答は無数にあるし、私たち観客は、理屈で考えず、その謎を味わい、体感すればいいのかな…と。

 

  3回目のカーテンコール、蜷川さんの写真を胸に挨拶の寺島しのぶや他の出演者に、惜しみないスタンディングオーベーション。この舞台のテーマそのままに、肉体は消えてしまっても、蜷川さんの「思い」は、確実に舞台の上にいまだに耀き続けていると感じられた瞬間でした。

 

(おまけ)

ハマのヒーロー、濱マイク永瀬正敏さんから寺島しのぶさんにお花が…。なので思わずパチリ😅高名なミュージカル俳優の方もお見かけしましたが、フツーの会話も舞台そのままの美声で、そのことに感激してしまったワタシでした😅