オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

哀悼・京マチ子様~「雨月物語」から村上春樹へ

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 女優の京マチ子さんが亡くなったと、今朝のニュースで知りました😢京マチ子さんと言えば、巨匠と言われる監督に愛され、黒澤明監督の「羅生門(芥川龍之介・作)」がヴェネチア国際映画賞金獅子賞と米国アカデミー賞名誉賞、溝口健二監督の「雨月物語」がヴェネチア国際映画祭銀獅子賞をそれぞれ受賞している為、「グランプリ女優」なんて異名をとった方です。

 

  「羅生門」は平安末期、「雨月物語」も戦乱時代の話で、京マチ子さんの古典的な美貌が生かされた作品でした。2作品ともモノクローム映像の特性と魅力を極限まで引き出した作品と言われています。特に個人的には「雨月物語」が大好きで、かなりリピートして観てます(笑)雨月物語上田秋成作の怪異譚集で、映画ではその中の「蛇性の淫」(蛇の精が女性に化けて人間の男性と交わる)と「浅茅が宿」(長く家を留守にしていた男性が家に戻ると、残してきた妻が昔のままに待っていた。ところがその正体は…。)の2作がベースになっています。京さんは非常に官能的な蛇の精を演じていらして、特に、肌をことさらに露出しなくても、十分にエロティシズムを表現できるというお手本みたいな演技なんですよね😊

 

  上田秋成の原作怪異譚も大変魅力的で、今月観劇予定の、あの村上春樹原作の舞台「海辺のカフカ」にも、ところどころにこの「雨月物語」の引用が出てきます。

「現実と非現実が『雨月』の中でぴたりと接していて、その接点を超えることに人はそれほどの違和感を持たない。これは日本人の一種のメンタリティーの中に元来入ってることじゃないかと思うんです」(by 村上春樹)

 夏目漱石以降の近代的自意識や自我の確立とは真逆の、現実世界と異世界が混然となった「海辺のカフカ雨月物語へのオマージュとしても読みとけそうですね🎵

 

  「雨月物語」には、あの白州正子が著書「両性具有の美」で言及した、まぁ言わばBL文学の古典とも言うべき「菊花の約」なんて話もあります😅

 

  …またいつも通り、迷宮的にいろいろ呟きましたが(😅)かように、名匠と呼ばれた映画監督ばかりでなく、我々のようなパンピーの(笑)イマジネーションさえも大いに掻き立てて下さった名女優、京マチ子様。

 

  心よりご冥福をお祈り申し上げます😢