オタクの迷宮

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ドイツのカメレオン俳優~トム・シリング~『ある画家の数奇な運命』公開なるか❗❓

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(Berlin from Pixabay)

 ヲタク的に、元祖カメレオン俳優といえばゲイリー・オールドマンロバート・デ・ニーロ、今ドキのハリウッドカメレオン俳優はクリスチャン・ベール、そしてそしてドイツのカメレオン俳優と言えば、トム・シリング❗

 

  はい、先日記事をUPしたマインドファックムービー『ピエロがお前を嘲笑う』の主人公ベンヤミン役を演じた彼ですね。『ピエロ~』では、ちょっと猫背で自信がなくてオドオドしたいじめられっこなのに、ひとたびPCの世界へ入り込むと天才ハッカーの牙を剥くベンヤミンを演じ切っていました。

 

  彼が世界中にその名を知られるようになったのは、『コーヒーをめぐる冒険』。ドイツのアカデミー賞を総なめにした、監督ヤン・オーレ・ゲルスターのデビュー作。朝、ガールフレンドのベッドの上でコーヒーを飲み損なったニコ(トムくん)。それからというもの、さまざまなシチュエーションで彼は一杯のコーヒーを飲もうとするも、ことごとく失敗。それにまつわる様々にトホホなエピソード、巡り合う人々がみな滑稽で物悲しく、愛すべき人たち。ニコはギムナジウムを出て大学の法学部に入学、父親の過大なる期待を背にエリート候補生だったはずがなぜかドロップアウト。「ボクはずっと、周囲がヘンだと思ってた。でも違うんだ、ヘンなのはボクなんだ」と呟き、「毎日何をしてるんだ」と問われ、「考えてる」と答えるようなニート青年。丸1日様々な出逢いを経て、最後の場面、カフェで美味しそうにコーヒーをすすり、ちょっぴり人生を見直し始めたような、何とも言えない彼の表情が絶品です。

 

 モノクロで映し出されるベルリンの街は、映画『マンハッタン』(ウッディ・アレン監督)に勝るとも劣らない叙情溢れる美しさ。主流を外れた者たちの、温かく、シニカルなユーモアを交えた描写、全編を流れるオフビート感はどこか、ジム・ジャームッシュ監督の作品を彷彿とさせます。全編モノクロだから、トムくんの透明なブルーアイズが見れないのはいかにも残念ですが(笑)

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…かと思えば、『我が闘争~若き日のアドルフ・ヒットラー』で、ウィーンの内気な画学生が、いかにして史上最悪のデマゴーグに変貌していったか、鬼気迫る演技を披露。ストーリー展開としては、ヒットラーの滑稽さを揶揄するシーンも満載で、恐怖と笑いのミックスしたようなシュールな作品になってます。しかし、後年のモンスターを彷彿とさせる、若き日のヒットラーの狂気を垣間見せるシーンは背筋が寒くなるようで、カメレオン俳優の面目躍如です。


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 若きウェルテルの如く、青春の苦悩や脆さ、美しさを繊細な演技で体現し続けてきた彼ももはや38才。最近ご無沙汰でしたが、2019年第91回アカデミー賞撮影賞、外国語映画賞にノミネートされた『ある画家の数奇な運命』が今秋劇場公開されそうだという嬉しいニュースが❗この作品の中で、彼はドイツ最高峰の画家とも称されるゲルハルト・リヒターの若き日を演じています。

 

  今秋公開予定というのはこのコロナ禍発生以前の情報なので、どうなるかは実際のところわかりませんが、ちいさな希望を心の中に積み重ねていくのも、『おうち時間を楽しく』するツールのひとつかな❓…と思う今日この頃。


ある画家の数奇な運命 - 映画情報・感想・評価(ネタバレなし) | Filmarks映画