オタクの迷宮

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香取慎吾 in 『倫敦ノ山本五十六』~凄い役者になった!


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(From Pixabay)

 年末に放送されたNHKスペシャルドラマ『倫敦ノ山本五十六』。NHKの単発SPドラマってね、けっこう斬新、けっこう攻めてる。名作が多いんですよね。ヲタクが今思い付くだけでも『青春牡丹燈籠』、『大地の子』、『白州次郎』、『聖徳太子』、『上海の芥川龍之介』…等々。そうそうたる名作群にまた、今作品が加わった❗

 

 日本海海戦九死に一生を得、真珠湾奇襲作戦を指揮、大日本帝国海軍において航空隊の強化に務めた山本五十六山本五十六といえば、ヲタク的には、映画での三船敏郎の「軍神」イメージが強烈だった。しかし今回のドラマでは、今までスポットを当てられて来なかった、軍神となる以前四十代半ば、知られざる山本五十六(香取慎吾)の姿が描かれ、その新しい視点と、香取くんの清新な演技に眼を見張ります。舞台はロンドン軍縮会議予備交渉(1934年)。英米海軍の軍事力に比較して日本に許可されている艦隊数は不平等だと、制限撤廃に逸る海軍上層部の思惑に反し、英米に日本と同等の制限を求めることによりパワーバランスの均衡を実現せんと、交渉に奔走する山本。

 

  ハーバード大学で学び、駐米期間も長かった山本は、若い頃米国の軍事力の強大さを目の当たりにし、アメリカを敵に回したら絶対に勝ち目はないと骨身に染みていました。彼は軍人であると同時に、外交官の資質を有していたのではないでしょうか。しかし上層部と世論は領土拡大・軍備増強に益々傾いていき、列国、特に米国はそんな日本の姿に警戒心と不信感を強めていました。そんな中、開かれた軍縮会議。海軍軍人としてあくまでも上層部の命に従わなくてはならないという使命感と、国民の命を守るための平和への希求との間で引き裂かれる山本。

 

  ヲタクの父は海軍兵学校76期生。17才で終戦を迎えました。人生の目的を失った同期の中には、江田島の海で自害して果てた人たちもいたとか…😭😭終戦後大学に入り直し、海上自衛官となった父にとって山本五十六はまさに英雄。山本が日独伊三国同盟に最後まで反対だった…という事実は、常々話してくれました。父が勤務していた頃、海上自衛隊の幹部の間で流行っていたのは英国流のコントラクトブリッジ。土曜日の午後は「ブリッジの日」だった。(ドラマ中でも、山本が友人である英国の代表とカードを楽しむ姿がチラッと映ります。ブリッジは二人ではできないので、なんのゲームだったのかな😅)

 シルクハット姿の山本は、なぜか父に重なって見えてしまう。

 

  少ないセリフの中に、忸怩たる想い、苦悩と怒りを滲ませる「静の演技」の慎吾くんは、素晴らしかった❗皮肉なことに、上層部の命に従い、日本だけに不平等な軍縮を求める米英にNOを突きつけた山本は、彼の意に反して、一躍国民の英雄となります。ロンドンから帰国した彼を熱狂的に迎える人々。それを見つめる山本の、空虚な眼差しと苦渋に満ちた表情。その時、彼の胸に去来していたものは、一体何だったのでしょうか。

 

  昨年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』や舞台『アルトロ・ウィの覚醒』でつよぽんの演技に感動したばかりのヲタクですが、いやぁ、慎吾くんの山本五十六つよぽんに勝るとも劣らない名演でした。若い頃はエッジーな演技が印象的だった彼ですが、いつのまにか、抑制の利いた巧みな演技、いぶし銀のような大人の役者になっていたんですねぇ…(しみじみ)この作品が、彼の役者人生において、一つのターニングポイントになったことは間違いないでしょう。

 

  海軍の最高機密扱いだったロンドン軍縮会議における山本五十六の行動を発見し、後世に残そうとする海軍少尉・富岡に高良健吾。(お髭の高良さんを見ると、どうしても『青天を衝け』の渋沢喜作さんを思い出しちゃうヲタク。いまだに青天ロス😅)山本の親友にして海軍きっての非戦派の最先鋒だった堀梯吉に片岡愛之助。軍予算の縮小を立案した為のちに二二六事件で陸軍に暗殺される高橋是清山本學(ビジュアル似すぎでびっくり。声でやっとご本人だとわかった😅)、等々、そうそうたる顔ぶれ❗

 

山本五十六という軍人を描くドラマではなく、山本五十六(過去)を通して、現代や未来を考えられるドラマである。

と語る慎吾くん。

見逃し配信等で見れるなら、一人でも多くの人に見てほしい。

日本の今、そして未来を考えるために。

 

(おまけ)

 それにしても慎吾くん、英語…上手いですよね❗❓英語って、文法がルーズなぶん、「イントネーションいのち」だと思うのですが、素晴らしかった。歌をやっている人たちって外国語や方言を覚えるのが早いと言われます。音を正確に捉えられる耳を持っているんでしょうね👍

 

また、英国政府代表の「君は英語が喋れるのに、なぜ通訳を立てるのか❓」との問いに対する山本の答えが秀逸❗現代にも通じる外交術、交渉術と言えるのではないでしょうか。