オタクの迷宮

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

果敢なるマギー・ギレンホールに拍手👏~Netflix『ロスト・ドーター』


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Netflixで『ロスト・ドーター』。

痛い❗

心に刺さった刺から血が滲んで、見続けているうちにその傷がどんどん広がってくる…そんな気持ち。

子育てを体験したことのある女性なら、多かれ少なかれヲタクと同じ気持ちになるのではないでしょうか。

 

  ギリシャの避暑地に訪れた中年の女性レダ(オリビア・コールマン)。広いヴィラに一人宿泊する彼女は、毎日浜辺にあるパラソルの下で読書をしながら静かに過ごしています。レダはイタリアとイギリスの比較文学の教授で、大学の夏休みを利用してバカンスを過ごしに来たのです。しかし、浜辺の近くに住むある地元の一族が同じ浜辺で過ごすようになってから、レダは彼らの行動の何かにつけて苛立ち、次第に精神の均衡を失っていきます。それに応じて、彼女を取り巻く環境にも、次第に禍々しく不穏な空気が漂い始めるのです。

 

  その不穏な雰囲気の中心にいるのが、夫婦関係と子育てに悩む若い母親ニナ(ダコタ・ジョンソン)。ある事件をきっかけにニナはレダに関心を持ち、近付いてきます。それは親しみなのか、敵意なのか、それとも…❓レダレダで、彼女を見つめる眼は複雑です。彼女は親しくなり始めた彼女に、ある日「私は娘二人を捨てたの」と唐突に告白し、3年間幼い姉妹を元夫のもとに残し、不倫相手に走った事実を明らかにするのです。取り立てて大事件が起きるわけではないのですが、一つ一つの小さな不快な出来事の積み重ねが、何かとんでもない悲劇のプレリュードなのではないか…❓と観ているこちらに思わせ、不安を増幅させる、演出・作劇の巧みさ。

 

現在、避暑地で過ごすレダの日常と、彼女の追憶…つまり、子育てをしながら比較文学の研究に没頭する若き日のレダが並行して描かれていくのですが…

とにもかくにも若き日のレダを演じるジェシー・バックリーの演技が素晴らしいです❗

ヲタク、2年くらい前から、「彼女必ずキますよ❗」ってブログで度々叫んでますけど、最近の彼女の大活躍はもはや、ヲタクの昔の予想を遥かに超えてますね😊BBCドラマ「戦争と平和」、Netflix「もう終わりにしよう」、映画「ワイルド・ローズ」(演技だけでなく歌声も素晴らしかった)、「ジュディ虹の彼方に」でハリウッド進出を果たし、昨年の秋にはウェストエンドの舞台「キャバレー」でエディ・レッドメインとW主演…と、破竹の勢い。

 

  今回の映画でも、子育てに何の協力もしないのにいざレダが家を出るというと途端に土下座して泣きつく卑怯な夫や、「子どもは好きじゃない」と呟くレダに、自分の身勝手さは棚に上げて咎めるような眼をする不倫相手に向ける彼女の、虚無的な表情が秀逸です。

 

  「子を捨てた私は人間として失格」という罪の意識に苛まれるレダは、次々と想像を越える危うい行動を起こし始め、周囲の人々の悪意と怒りを呼び覚ましていってしまいます。その過程が、観ている私たちをハラハラさせ、不安を煽っていく、一種の心理サスペンスとも言えます。

 

  皮肉な結末は辛く苦く、レダは結局、悲惨な人生を免れることはできないのかもしれません。しかし、ラストに携帯電話越しに交わされるレダと娘の会話を通じて、監督を務めたマギー・ギレンホールの(そんなに自分を責める必要はないのよ。ほら、3年間会わずにいたって、娘さんは逞しく育っているじゃない。自分は母親失格だと自責の念に駆られることこそ、母性愛の何よりの証拠よ)という声なき声が聞こえてきそうです。それは同時に、過酷な子育てに疲れ、誰もわかってくれないと人知れず悩む女性たち全てに対する励ましの言葉でもあるでしょう。

 

  「女性は生まれながらに母性を持っている。否、持つべきなのだ」

という母性神話のタブーに果敢に切り込んだマギー・ギレンホール。そして彼女の言わんとするところを余すところなく見事に体現したオリビア・コールマンとジェシー・バックリー。

 

三人の素敵な女性たちに惜しみ無い拍手を送りたい😊

 

  ヴェネチア国際映画賞脚本賞ゴールデングローブ賞監督賞・主演女優賞、ニューヨーク批評家協会賞作品賞など、賞レースを席巻しているみたいですが、まだまだ増えそうですね。

 

(今日の小ネタ)

レダギリシャ神話で、全能神ゼウスに愛され、ヘレンとクリュタイムネストラを産んだスパルタの王妃。アイルランドの詩人W.B.イェーツが題材にしてソネットを書いていますが、映画の中でもレダがイェーツのソネットに言及し、「あれはレイプの詩よ」と吐き捨てるように言うシーンが。…考えてみたら、神話ってどの国のものでもレイプやら近親相姦やら子殺し親殺しのオンパレードですよね😅

 

マギー・ギレンホール、女優としては言い方は悪いですが、ハリウッド映画に「華を添える」的な役柄が多かった印象ですよね…。この作品を初監督作に選んだってことは、ヲタク的にはちょっと感慨深いなぁ。数少ない主演作が、サイコっぽい上司(ジェームズ・スペイダー)にオフィスで調教されるドM秘書っつー、トンデモ作品(『セクレタリー』)だもんね。こうなると、彼女にとっては黒歴史になるんだろーか❓アノ映画😅