オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

『帰らない日曜日』~英国的な、あまりにも英国的な


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U-NEXTで『帰らない日曜日』鑑賞。

 

  1920年代の英国。第一次世界大戦の傷痕が、いまだ人の心に深く残っていた時代。孤児院出身のジェーン(オデッサ・ヤング)は、大戦で二人の息子を亡くしたニヴン夫妻(おそらくジェントリ階級……英国演劇界のもはや重鎮、コリン・ファースオリヴィア・コールマン)のメイドとして働いていました。彼女は近隣の名家シェリンガム家の跡取り息子ポール(ジョシュ・オコナー)と秘密の関係を続けていました。結婚を間近に控えたポール。何よりも身分や境遇の違いから、二人は結ばれない運命にあることは承知していながら、いやそれだからこそ一層、彼らの情熱はいや増すばかり。……この物語は、そんな二人の運命を決定づけた、3月30日の日曜日のある出来事について描かれています。英国では、3月30日は「母の日」。ちょうどその日、ポールと婚約者を囲むランチを計画しているニヴン氏は、「今日は1日留守にするから、君はお役御免だよ」と、ジェーンにお小遣いをくれますが、天涯孤独の身の彼女にとって、お屋敷以外に行くところなどありはしません。そんな時、ポールから「今日は一緒に過ごそう。僕の屋敷においで。ランチには遅れていくから大丈夫」との誘いが。嬉々としてシェリンガム家に向かうジェーンでしたが……。

 

  あのチャタレー夫人は身分違いの森番メラーズと激しい恋に落ちて駆け落ちしますが😅1920年代、英国の階級社会において大人の分別?を持つ二人は、チャタレー夫人みたいな勇気はありません。でも、だからこそ溢れ出てくる恋情が……なんだか見ていて切なかった😢ポールは、密かに屋敷に来るジェーンに、「裏口じゃなくて、正面玄関から来て」って伝えて、まるで貴婦人に相対するようにジェーンを迎えるんですよね。ポールを演じるのがまた、ジョシュ・オコナー(『ゴッズ・オウン・カントリー』『ザ・クラウン』)だからねぇ。あの内気そうな、恥ずかしそうな上目遣いで、眩しいものを見るように見詰められたら……ジェーンぢゃなくても、射抜かれちゃうよね(笑)

 

  大戦で二人の最愛の息子を亡くし、よりにもよって「母の日」に、親友の息子の婚約祝いのランチを企画する夫の鈍さかげんに苛立ち、憎しみさえ抱くニヴン夫人。母親の業の深さを演じ切るオリヴィア・コールマンがもう、圧巻❗コリン・ファースもそうだけど、英国のベテラン俳優たちって、若い人が主役の場合、ものの見事に「脇役化」しますよねぇ。またね、作家になったジェーンの現在の姿を、※グレンダ・ジャクソンが演じています。恬淡かつ静かな迫力はサスガ英国の名女優。これがハリウッド映画とかだと、脇役のベテラン俳優が若い人たちとライバルになっちゃって、「まだまだオレもイケる❗若いモンには負けないぜぃぃぃっ」ってムンムン熱くなりがちだけど(笑)英国の人たちってこう……恬淡としてるとゆうか、分をわきまえていると言うか、ナチュラルな年取り具合が良い感じ。

※労働者の家庭に育ち、高校卒業後数年働いてから王立演劇学校に入り直した苦労人。後年、労働党の下院議員としても活躍しました。

 

  原作小説をカズオ・イシグロが絶賛しただけあって、『日の名残り』や『モーリス』、『ダウントン・アビー』、ジェーン・オースティン原作の一連の映画が好きな人には絶対おススメ❗美しい自然と禁断の恋の融合という点では、『君の名前で僕を呼んで』を彷彿とさせるシーンも多々ありますね😉

 

★今日の小ネタ

分別のある大人の恋……ってヲタク言ったけど、それにしては官能シーンを大胆に描いているところがミソ😅ポールがランチに出かけた後、ジェーンが一糸纏わぬ姿で屋敷の中を歩き回るシーン、(ちょっとぉぉ、誰か来たらどーすんのぉぉ)って、おばさんドキドキしたわ~。映像はボッティチェリの「ビーナスの誕生」みたいで凄く綺麗だったけど。


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※こんな内気そうなクセして、演技はオデッサ・ヤングに負けず劣らず、めっちゃ大胆なジョシュ・オコナー😅そう言えば彼、インタビューで、「オデッサと僕、まる1日じゅう全裸で過ごす日もあった」って言ってたっけ。俳優さんって、大変な職業だわ……。