オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

愉快・痛快・ママの乱〜『バーナデット/ママは行方不明』


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 KINOシネマ横浜みなとみらいにて、『バーナデット/ママは行方不明』鑑賞。

 

 シアトルに暮らす主婦のバーナデット(ケイト・ブランシェット)。夫のエルジービリー・クラダップ)はマイクロソフトで重要な仕事を任され、娘のビー(エマ・ネルソン)は成績優秀、自立心も強く、自分から選んだ寄宿制高校の入学を待つばかり。母と娘はまるで親友同士で、そんな生活にそれぞれ満足している……と、バーナデットもエルジーもビーも信じていた……筈でした。ところがビーが、寄宿舎に入る前のお祝いに、なんと「家族3人で南極旅行に行きたい❗」と言い出したから、さあ大変。じつはバーナデットは、(家族を除いて)極度の人間嫌い…というか、対人恐怖症。旅行中に他人と世間話を繰り広げることを想像しただけでもイヤすぎて不眠症になり、ネットで雇った私設秘書にグチをこぼしつつ(なぜならグチをこぼす友だちが一人もいないため 笑)それでも、目に入れても痛くない可愛い一人娘のために勇気を振り絞って南極旅行に出かけようとするバーナデットですが、焦れば焦るほど彼女の「社会の厄介者」(注・ヲタクが言っているわけではありません。バーナデットの自己評です、念のため)度❓が肥大していき、思わぬアクシデントが次々と彼女を襲います。ついには彼女の奇矯な言動を心配した夫のエルジーによって精神病院に送られそうになったバーナデット、すんでのところで逃げ出しますが、はて、そんな彼女が目指した先は……❗❓

 
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※他の作品同様、ケイトのファッションがステキすぎる😍しかしプライベートの彼女は着回しの名手。本年度の「グリーンカーペット・ファッション アワード」(ファッションとエンターテイメントにおけるサステナビリティな取り組みにおいて、ポジティブに活躍した人を称える賞)を、トム・フォードらと共に受賞しています。

 

 バーナデットはじつは、若くしてマッカーサー賞を受賞、フランク・ロイド・ライトミース・ファン・デル・ローエ等の巨匠と肩を並べるほどの天才建築家。環境配慮型建築の先駆者であった彼女でしたが、それがあるトラブルから建築界を引退、家庭に引きこもり子育てに専念してきた…という設定。…とこう書いてくると、家庭生活のために自らの才能を抑圧してきた主婦がそれに耐えきれなくなり、ついには爆発して自分探しの旅に出る……という「最近あるある」のストーリーかと思いきや、そんな単純なものではございません(笑)

 

 ……結局、バーナデットの生きる原動力だったのは、娘のビーに対する深い愛情だった……というお話しです。(……少なくとも、ヲタク的にはそこがポイント)彼女がビーを守るために孤軍奮闘する姿は時に滑稽なくらい(夫が心配するバーナデットのぶっ飛んだ行動も、じつはビーのためだったりすることが度々なのです)。しかしその愛の深さこそが、建築家としての彼女の第二の人生を開いてくれるきっかけとなるのです。「子育て」と「仕事」を対立して描くのではなく、互いに良きモチベーションとなり得る……というテーマはとても爽やかで前向きで、ヲタクは凄く好きです❗この映画😍まっ、それにはダンナの理解と協力が不可欠なんですけどね。そこもしっかり押さえてあります。



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 ビーがママを大好きな理由、それはママが献身的にビーを愛し、守ってくれている、ただそれだけではありません。ママが地球と人類を守るための建築に煌めく才能を発揮した偉大な人だから。バーナデットは同じ女性として、ビーの憧れの人なのです。2人が車の中でシンディ・ローパーの『Time After Time』を熱唱する場面、ヲタクは好きだなぁ…。

 

迷っても見えるはず あなたは私を見つけるの

何度でも 何度でも

あなたが倒れても受け止める

待っているわ 何度でも 何度でも

このサビの部分がね、ラストに効いてきます。

 

 直近の『TAR/ター』では、冷酷無比な天才モンスターを完璧に演じきったケイト・ブランシェットですが、今回は天才は天才でも、愛嬌ある「困ったちゃん」を軽妙に表現、一流のコメディエンヌぶりを遺憾なく発揮しています。……彼女の役の上の振り幅は非常に広く、歴史上の人物からヒーロー映画のヴィランファム・ファタールにセレブの人妻まで枚挙にいとまがありませんが、作品の中で泣いても叫んでもパニクっても決して下品にならず、滲み出る品性と優雅さはどうしたことでしょう。……これを書いている傍らのTVでは、さる日本の皇族が外国を訪問している様子が映っていますが、特に奥方の立ち振舞いがあまりにも品性がなく、いくら民間からお輿入れされたとはいえ余りにも№£℉¥§◑#@%&$(笑)次回海外公務をされる時には、ケイト・ブランシェットの映画をご覧になって、ちっとばかりお勉強されてはいかがでしょうか❓……同じ日本人として恥ずかしいです^^;

 

 ……とまあ、またもや脱線するヲタク(笑)

 

 自らをコミュ障で社会的不適格者と自嘲するバーナデットですが、彼女が「万事休す❗」な時に助けてくれるのは、今までさんざんいがみ合ってきたママ友のお隣さんだし、建築家としてセカンドチャンスをくれるのも女性科学者……と、なにげに「女縁」。というわけで、バーナデットは決してコミュ障などではなく、中身のないスモールトークが苦手なだけで、必要な時にはきちんと相手と向き合える人なんだということが、さりげなく描かれていて感動モノでした。


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※これも愛、あれも愛、きっと愛、たぶん愛……

な結末で、めでたし、めでたし😂

 

 笑いあり涙ありのハートフル・コメディ。バーナデットの悪戦苦闘ぶりがどこか他人事とは思えない、世代を超えて、ぜひ女性たちに見て欲しい作品です。

 

★ちょっと嬉しいジャポニズム

 最近の欧米の映画にはちょこちょこジャポニズムが散見されて、日本人としては嬉しいですね、やっぱり。今回はなんと、あの童謡「ゾウさん」(作詞・まどみちお、作曲・團伊玖磨)❗ビーがボランティアをしている子供会で、「ゾウさん」に合わせて子どもたちがダンスをするのですが、ビーはなんと尺八を吹いているというシブい演出(笑)