オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

推し活バンザイ❗〜『ロスト・キング/500年越しの運命』


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 KINOシネマ横浜みなとみらいにて『ロスト・キング 500年越しの運命』鑑賞。 

 

 スコットランドエディンバラに住むフィリパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)は、反抗期を迎えた2人の息子たちを抱えたシングルマザー。彼女は※筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)という難病を抱えながらも、自分の勤める広告代理店の仕事に生きがいを見出していました。ところが、会社が新たに立ち上げたプロジェクトから、年齢と病気を理由に外されてしまったことで、彼女の心は行き場を失い、何かがポッキリと折れてしまいます。

これまで健康に生活していた人が突然、強烈な全身倦怠感に襲われるようになり、休息をとっても回復せず、通常の日常生活が著しく困難になる病気です。 また微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感、思考力低下などさまざまな症状があらわれ、長期にわたって続きます。


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※妄想の中でリチャード3世と会話するのが、フィリパにとって至福の時間。キモチ、めっちゃわかるわ〜(笑)

 

 鬱々とした日々を送るフィリパはある日、エディンバラの劇場でシェイクスピアの『リチャード3世』を鑑賞します。リチャード3世と言えば、背中には大きな瘤、自らの醜悪な姿へのコンプレックスから人間不信となり、幼い甥の王子2人をロンドン塔で暗殺した極悪非道な君主として描かれています。しかし観劇しながらフィリパの頭の中には、(……本当にリチャード3世は、シェイクスピアが描いたような人物だったのか❓)という疑念がむくむくと湧いてきます。彼女は早速エディンバラの書店でリチャード3世関連の研究書を買い漁り、リチャード3世は決して甥の王子たちを惨殺するような人物ではないという説も存在しており、彼の名誉を守ろうとするリカーディアンという人々が存在することを知ります。そして、彼女が「リチャード3世協会」に入会したその夜から、度々彼女のもとにリチャード3世のまぼろし(ハリー・ロイド)が訪れるようになります。何か物を言いたげにフィリパを見つめるリチャード3世……。

 

 プランタジネット朝最後の王、リチャード3世は薔薇戦争最後の「ボズワースの戦い」で戦死し、遺体はレスターの修道院グレイフライアーズに運ばれ、敷地内に粗末な墓が建てられたと言われます。しかし、1538年の修道院解散と引き続いた取り壊しの過程で、リチャード3世の墓は取り壊され、この後、彼の遺骨は、「王位簒奪者」に相応しくソー川にかかるバウ橋 付近から流されたという風説が広く信じられていました。(もし彼が、私たちリカーディアンが信じるように名誉ある人物で、シェイクスピアが描いた彼の人物像は、プランタジネットに取って代わったテューダー朝が彼を貶めるために流した風説に基づいたものだとしたら……。彼の遺骨は川に流されてなどいない❗どこかに手厚く葬られているはず。彼の遺骨を見つけ出すことこそ、彼の名誉を取り戻す唯一の方法だ❗)と思ったフィリパは、「リチャード3世の遺骨発見」という大事業に、全精力をかけて取り組んでいきますが……。


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※リチャード3世を演じるハリー・ロイド。あの英国の大作家チャールズ・ディケンズの子孫で、オックスフォード大学卒の知性派イケメン😍

 

 もうねぇ、これ、フィリパの言動が徹頭徹尾「オタクあるある」で、ヲタクはまるでじぶんのこと見てるみたいでちょっと気恥ずかしかった(笑)動機がね、映画でははっきり言葉では表現されてないけど、見るからにフィリパはまず、劇でリチャード3世を演じた俳優ピート(ハリー・ロイド…リチャード3世のまぼろしと二役)に沼オチしちゃったんだわ^^; リチャード3世を演じる俳優さんは、醜悪な姿にするため特殊メークを施すことが多いのね。ドラマ『ホロウ・クラウン 嘆きの王冠』でリチャード3世を演じたベネディクト・カンバーバッチも、完ぺきにイケメン封印してて、「アンタ、誰❗❓」状態だったもんなぁ…。ところがフィリパが観たハリー・ロイドのリチャード3世は、ハル王子かリチャード2世か❓っていうくらい、背もすらっとした水も滴るイイ男。これですよ、そもそものフィリパのモチベーションは(笑)……でも、フィリパの推しに対する鋭い直感は、いざ実際に遺骨を発見する時に遺憾なく発揮されます。推し活恐るべし(笑)


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※遺骨発見の直前、フィリパはボズワースの戦いに発つリチャード3世の幻影を見ます。それは、彼との訣別のときでもありました…。

 

 映画の冒頭では、抱えている病気のせいでひどく具合の悪そうだったフィリパが、リチャード3世の遺骨探しに奔走するにつれ、みるみる元気に。そう言えば、あの韓流ブームの祖『冬のソナタ』のペ・ヨンジュンね、放送時には大勢の日本の中年やシニア女性が沼オチしたものですが、あるTVのインタビューで、中年の女性が「更年期がひどくてひどくて、死ぬほど辛かったんですけど…。ヨンさまに出逢ってから不思議と症状がすっかり治っちゃったんです」って言ってたっけ。フィリパもどんどんステキになって、別れた夫さんの、彼女を見る目が変わっていくのが面白かったし、生意気盛りの息子たちもママの一生懸命さに感化されて、遺骨探しを応援するようになる過程が胸アツ❗


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※結末わかっているはずなのに、遺骨発見に至るまでのドキドキ感、ハンパない。スティーヴン・フリアーズ監督の見事な演出。

 

 実際には、遺骨発見の手柄をスポンサーのレスター大学に横取りされちゃうような成り行きになっちゃうんだけど、何しろフィリパにとって1番の関心事は自分の野心じゃなくて、あくまでも「推しへの愛」「推しの名誉回復」。お金や名声を得ようと汲々としている周りの男たちの滑稽さと、フィリパの純粋な熱意の対比の皮肉さもまた、興味深かった。

 

 …でもって、ヲタクの結論。

推し活は、じぶんも周囲もシアワセにする😍

推し活、最高❗

推し活、万歳❗

……でございました、ぢゃん、ぢゃん❗