オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・コンサート鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログです。

ノンシャランと生きましょう🎵〜『白鍵と黒鍵の間に』


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 横浜駅直結のシネコン「Tジョイ横浜」にて、映画『白鍵と黒鍵の間に』鑑賞。

 

 ジャズピアニストを目指す博(池松壮亮)は、恩師の宅見(佐野史郎)から、彼のピアノは生硬との指摘を受けます。彼が言うには、ピアノの極意は「Nonchalant(ノンシャラン)」であると。「それはどうしたら身に付くのですか❓」と問う博に、宅見は「キャバレーへ行け❗あそこには全てがある」と答えます。恩師の言葉通りに銀座のキャバレーでピアノを弾き始めた博でしたが、変なお面を被せられて、ジャズコンボのアドリブを入れればバンマスに罵倒され、しかもストリッパーの伴奏をするような仕事ばかり。口答えをすれば殴られるし^^;……そんな鬱屈した日々を送る博の元に、ある夜フラリと「あいつ」(森田剛)がやって来ます。色々と人生の辛酸を舐めてきたらしい嗄れ声の「あいつ」。彼は、なぜか博に「ゴッドファーザー愛のテーマ」を弾いてくれと頼むのでした。しかしその曲は、辺り一帯を仕切る暴力団のボス(松尾貴史)がこよなく愛する曲で、ボスがお気に入りの南というピアニスト(池松壮亮…二役)しか弾いてはいけない禁断の曲。何人たりとも銀座界隈のキャバレーやクラブでリクエストをする猛者はいません。事情を知らない新参者の博はうっかり頼まれるままに弾いてしまいますが、それは地獄の一丁目。彼の人生は思わぬ方向に暴走し始めて……❗

 

 恩師のひと言でキャバレー行きを決意してしまうような、初心でナイーブな音楽青年が、銀座の夜の街で人生の哀歓や世の矛盾を知り、右往左往した末に自らの生き方を選択していくさまを、※軽妙洒脱なタッチで、また、時系列飛び交うファンタジックなコメディとして描いた作品です。全編を通じて何より魅力的なのは、原作者の南博その人を演じる池松壮亮は言わずもがな、コワモテに見えてそのじつ愛嬌たっぷりなヤクザ役の森田剛、オトコマエな先輩ピアニスト仲里依紗、ジョーカーばりの狂気のピエロ、バンマスの高橋和也、ヤクザのボス松尾貴史など、日本演劇界有数の芸達者たちが織りなす、「面白うて、やがて哀しき」人間模様の数々でしょう。

※銀座の夜の街角で博(池松壮亮)と「あいつ」(森田剛)が二人三脚をする珍妙なシーン、アメリカ留学を目指して英語のレッスンに励む博が、アメリカ人のジャズシンガー(クリスタル・ケイ)に「何その英語。18世紀の修道士みたい」と断罪❓されるシーン、またアメリカに行くのに母子手帳を頼んだはずがわけもわからずへその緒を持ってきちゃう博のお母さん(洞口依子)にはヲタク、思わず吹いてしまいました。

 

 銀座のクラブが舞台だし、主人公はジャズピアニストを目指す青年なので、もちろんジャズやブルースのスタンダードナンバーも満載🎵

『As Time goes by』、『East of the Sun』、そしてクライマックスは『Nobody Knows You When You’re Down and Out』❗クリスタル・ケイの歌声も素晴らしい😍

俺だって 昔は羽振りが良かったんだ
金を使い切ってスッテンテン、それがどうした
友達を引き連れちゃ大盤振る舞い
密造酒だってシャンパンやワインだって飲みまくったもんさ

……で始まるこの歌は、昔の栄光今いずこ、すっかり落ちぶれた男の歌。この映画の登場人物たちは多かれ少なかれ「人生負け組」、思い通りにはいかない焦燥感と虚しさをかかえ、その日その日を懸命に生きていますが、だからこそ、好きな歌、好きな音楽が、弱った心に染みてくる。この映画の

人生の隙間を音楽が埋める

というキャプションそのままに。  

 

 作品の中の季節は12月。

クリスマスシーズンになったらもう一度見直したい映画ですね。

 

★今日の小ネタ

Nonchalant(ノンシャラン)

 博の恩師・宅見の言うフランス語。宅見は「訳すのは難しい」と言っていますが、彼に逆らって❓無理やり訳すと「のほほんとした」「無頓着な」「無関心な」「冷淡な」という意味でしょうか。ヲタクが訳語を選ぶとしたら「のほほん」かなぁ。語感も似てるし。作品の舞台は1980年代の銀座ですが、日本でも当時、このノンシャランという言葉流行ったんですよね。今ではすっかり死語ですけども。

 ノンシャランと言えば、ジョージアからフランスへ渡って映画を作り続ける監督オタール・イオセリアーニでしょうか。さまざまな人生の辛酸をなめながらも、ふと笑って「ノンシャランと生きようよ」と言っているようなイオセリアーニ。「※人生、詩と音楽だっ❗」と叫ぶ風変わりなヤクザの「あいつ」(森田剛)。彼の人物像はイオセリアーニを彷彿とさせる…と思ったのはヲタクだけ❓(^o^;)

※自身も音楽学校出身のイオセリアーニの作品には、常に「詩と音楽」がありました。