桜木町駅前の「ブルグ13」にて、『ブルックリンでオペラを』鑑賞。
予告編によれば、舘ひろし✕柴田恭兵の『あぶデカ』が久しぶりに帰って来るとか。なんと「ブルグ13」が入っているビル・コレットマーレ爆破計画が持ち上がり、2人がそれを阻止する為に大暴れ……ってストーリーらしい。今は刑事を引退して探偵稼業らしいので、正しくは『あぶデカ』ならぬ『あぶタン』かな?(^_^;)昨年の映画『TOKYO MER〜走る緊急救命室』ではランドマークタワーが爆破されてたし、みなとみらいも近頃物騒でございます(笑)。
『ブルックリンでオペラを』。ニューヨークでオペラ…というと、ヲタク的にはどうしてもメトロポリタン歌劇場のあるアッパーサイド界隈を想像して、(ブルックリン?随分かけ離れてるなぁ……。ブルックリン出身でオペラを目指す人の話?)と思ったんだけど、原題は『She Came To Me(彼女が僕のもとに降りてきた)』で、ヲタクが勝手に想像していた、『テノール!人生はハーモニー』や『ふたりのマエストロ』のようないわゆる「音楽モノ」ではなかったんでした。
主人公は、才能に恵まれながらも神経がデリケートすぎて不安神経症に悩まされ、5年間どスランプ、全く新作が書けていないオペラ作曲家のスティーブ(ピーター・ディングレイジ)。彼は、美しくしかも家事能力も完璧な精神科医の妻パトリシア(アン・ハサウェイ)と、優秀で性格も良いイケメンの継子ジュリアン(エバン・エリソン)と何不自由ない3人暮らしでしたが、その「完全無欠さ」がかえって彼の創作意欲を減退させているようにもみえます。そんなある日、彼は立ち寄ったバーで、「曳き船」の船長をしているカテリーナ(マリサ・トメイ)と知り合い、一夜を共にします。性格も境遇も育ちも全く自分とはかけ離れた彼女でしたが、その日を境にスティーブの人生は激変して……!
※ヲタク的には『ゲースロ』以来のピーター・ディングレイジ(左)。スティーブは、並外れた知力と財力でサバイバルする逞しいティリオン・ラニスターとは真逆のキャラですが、そのセクシーな魅力は健在!妻であるパトリシアが彼に対して既に恋愛感情がなくなっていても母性本能をくすぐられて放っておけないのも納得。
甘くてほろ苦い、大人の為のロマンティックな寓話という感じ。スティーブをはじめとして、登場人物たちは皆、世間的には一応成功した部類に入っているのですが、それぞれ、過去の失敗やその時感じたトラウマを心の奥底に抱えて、前に進めないでいる設定。それが、ある出来事をきっかけに自らの来し方行く末を見つめ直し、大人たちが勇気を持って新たな人生へ踏み出していくストーリー。そのきっかけになるのが、スティーブの継子ジュリアンとGF(ハーロウ・ジェーン)の若く真剣な恋を応援する……というところにあるので、とても胸アツ、爽やかな後味です。しかし、過去にとらわれて右往左往している大人たちより、若い2人のほうがよほど冷静で客観的……というところが、ちょっぴり皮肉でスパイスが効いてます。脚本兼監督のレベッカ・ミラー(父親はあのアーサー・ミラー!)の手腕かな?
そして、1番の見所は、キャスティングの妙味。男の色気に溢れつつどこか甘えん坊で母性本能をくすぐる主人公にピーター・ディングレイジ。彼を巡る両極端の女性2人……何もかもパーフェクト、超潔癖症が高じて修道院生活に憧れるようになるパトリシアに、まるでAIみたいな美貌(注・褒めてます 笑)のアン・ハサウェイを、そして一見「どこにでもいるフツーのオバサン」ふうでありながら、愛と生への意欲に溢れたエネルギッシュな魅力を持つカテリーナにマリサ・トメイを配したのはまさにグッジョブ!でありました。
※まさに「降って湧いたように」スティーブのミューズとなるカテリーナ(右…マリサ・トメイ)。ヲタク世代だと、何と言っても『いとこのビニー』や『忘れられない人』(1993年)だよねぇ。若い人だったらスパイダーマンのメイおばさん…と言えば通りがいいかな?断続的にキャリアにブランクがある人だけど、気さくで人懐こいイタリア系女性の魅力は相変わらず。これからもどんどん活躍してほしい。
日本だとロマコメって若い人たちの専売特許で、40代の女優さんたちってとかく回ってくる役がお母さんや叔母さんばかりになっちゃうけど、こういう「大人たちが主役のロマコメ」が日本でも生まれるといいよね。