オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、映画・舞台・ライブ鑑賞後の感想をゆるゆると呟いたりする気ままなブログ。

響け、音楽の力〜『テノール❗人生はハーモニー』


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 今日は珍しく映画を2本、ハシゴしました。桜木町駅前のシネコン「ブルグ13」でこの映画を観た後、ダッシュで「KINOシネマ横濱みなとみらい」で『アフターサン Afterson』鑑賞。この2本がまたねぇ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 3』に負けず劣らず泣ける映画で、2本観終わった後トイレで顔見たらヒドイことになってました(笑)

 

 ……というわけで、まず最初は『テノール❗人生はハーモニー』。冒頭から、まるで映画『ファイト・クラブ』みたいな違法❓な激しい拳闘試合シーンがサクレツ、(あれ?映画間違えたかな)と思いましたが、後から、主人公アントワーヌ(MB14)の兄ちゃんの生活の糧だということがわかります。移民らしき兄弟は故郷に母親を残してパリの団地暮し。兄ちゃんは弟だけにはカタギな暮らしをさせようと、会計学校に通わせていますが、アントワーヌ本人は音楽好きでラッパーを目指していることもあり、勉強にはイマイチ身が入りません。そんなある日、バイト先のスシ屋の出前でオペラ座ガルニエ宮で開催されているオペラレッスンを訪れたアントワーヌは、そこに居合わせた見るからに育ちの良さげな金持ちボンボン、マキシム(ルイ・ド・ラヴィニエール)にさんざんバカにされ、カッとして、オペラの一節を見よう見まねで歌ってみせます。ところがその一瞬が彼の人生を大きく変えていくことになるとは、誰が予想したことでしょう。彼の声を聞きつけたオペラの講師マリー(ミシェル・ラロック)が「これこそ私が長い間探し求めていた不世出の歌声❗」と、彼の声にすっかり惚れ込んでしまい……。


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※アントワーヌのライヴァル、マキシム役のルイ・ド・ラヴィニエールがジェラール・フィリップ似のめちゃくちゃイケメンなんですけど❗…どうもプロのバリトン歌手っぽい。早速彼のインスタフォローしたけど、何せフランス語だからようわからん。苗字にドが付いてるってことは、もしかして元貴族出身❓新たなイケメン発・見〜〜〜❗

 

 日々の厳しい暮らしに疲れ果て、夢もとうに諦めかけた青年と、幼少期に両親から虐待を受け、「私はオペラによって救われた。オペラ座の人々は家族と同じ」と語る、中年の女性講師との奇跡のような出逢い。同じ移民問題を描くにしても、同じフランス映画の『ウィ、シェフ❗』のようなシニカルで苦い展開ではなく、あくまでも、アメリカン・ドリームならぬフレンチ・ドリーム的な展開の中に、家族愛と友情、夢を諦めないことの大切さと、何よりも音楽の偉大なる力を描いて、秀逸。主演のMB14がまた艶のあるびろうどのようなテノールで、ラスト、彼の『誰も寝てはならぬ』を聴いたヲタクは、全幕『トゥーランドット』彼のカラフ王子で観てみたい❗って思いましたよ。

 

 オペラ歌手を目指す青年が主人公ですから、もちろんオペラの名曲がズラリ。アントワーヌがオペラの素晴らしさに目覚めるきっかけとなる『蝶々夫人』の『ある晴れた日に』、アントワーヌがGFとデュエットする時の『椿姫』の『乾杯の歌』、らすとのクライマックス、オペラ・オーディションの時にアントワーヌが歌う『トゥーランドット』の『誰も寝てはならぬ』…等など。また、なんと❗オペラ座に初めて訪れたアントワーヌが舞台で目にするのが、偉大なるテノールロベルト・アラーニャなんですよ…ビックリ。映画館の片隅でヲタク、思わずコーフン(笑)『愛の妙薬』の『人しれぬ涙』、『リゴレット』の『女心の歌』を惜しげもなく披露してくれます。


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※MB14とアラーニャが『女心の歌』をデュエットするサービスも。アラーニャは芸大出身のエリートなどではなく、団地育ちでポップス歌手出身…という苦労人。アントワーヌと相通じるところがある経歴の持ち主なんです。

 

 ヲタクは当ブログでもご紹介した「METライブビューイング」で彼の『サムソンとデリラ』『トゥーランドット』を観ましたし、『カルメン』はDVD持ってます。……ホントのこと言うと、彼じゃなくてお目当ては「驚異のメゾソプラノエリーナ・ガランチャだったんですけどね(^_^;)


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※最高のゴールデン・コンビと称されるロベルト・アラーニャエリーナ・ガランチャ。『サムソンとデリラ』や『カルメン』等、妖艶なファム・ファタルと翻弄される男…というパターンがお似合い。

 

 「僕はスシ屋の店員ですよ。オペラなんてとんでもない」と言うアントワーヌに、パヴァロッティの写真を指差しながら、「彼はピザ屋だったのよ」といたずらっぽく笑うマリー。驚くアントワーヌに、「冗談よ。彼は教師だったの。畑違いという点では同じ」と答えるなど、オペラ絡みの小ネタも満載🎵

 

 オペラ・ファンはますますオペラが好きになるだろうし、これまで興味がなかった人も、映画の中で披露されるオペラの名曲の数々に、きっと心を動かされるハズ❗