オタクの迷宮

海外記事を元ネタに洋画の最新情報を発信したり、鑑賞後の感想を呟いたりしています。今はおうちで珈琲片手に映画やドラマを観る時間が至福。

ブロマンス愛好家と呼んで~「裏切りのサーカス」

 平成もあと僅か。どちらかのサイトで、「あなたにとって、平成の名画は何ですか?」ってアンケートやってたな。真っ先に頭に浮かんだのが、なぜかこの映画「裏切りのサーカス」。映画に行く前に少し、ブロマンスと少女漫画について呟かせて下さい(汗)

 

  ブロマンス(Bromance)」とは「兄弟(Brother)」と「ロマンス(Romance)」を合成した造語で、強い絆で結ばれた男性同士の関係を指します。非常に親密ではありますが、性的・恋愛的な要素のないプラトニックな関係であることが大きな特徴です。(Ciatr 1.18.2018)

 

  何しろプラトニックってところが大事で、いや別に実際のrelationshipがあっても構わないんだけど(汗)ワタシ的には、そのものズバリの、ミもフタもない表現はして欲しくないなぁ、さりげなく匂わせてほしい…っていう。なんで、BL好き、とか腐女子って呼ばれるのは少々抵抗あって。でも、ブロマンスという言葉を知って、良かった、これからは「ブロマンス愛好家」と自称しようかと(笑)

 

  その昔、少女漫画界でBLブームがありまして。当時はBLって言葉はなかったから、少年愛もの、とかお耽美主義とか呼ばれてました。少女漫画オタクの中では一大勢力だったなぁ。オタク友だちから強引に薦められて読んだ、とある少女漫画、ぶっ飛びました。これ、R15指定しなくちゃいかんでしょ❗って内容で、「リバーズエッジ」の山田くん読んだら怒るよ(笑)その頃から世阿弥の「秘すれば花」を信奉しているワタシとしては早々に脱落。それにさ…主人公の少年がナヨくて、何を目的に生きているのか見えなくて、ぶっ飛ばしたくなっちゃった(by ジャック・ロウデン=笑)それに、ああいうコトはねぇ、「秘め事」にしてほしいなぁ😅「君の名前で僕を呼んで」がギリかな(汗)でもあれは、ティモシー・シャラメの天才的演技と、主役の二人がともかく美しくて、性を超越した内容に昇華された青春映画だと思いますので、例外とさせて頂きます。

 

   森茉莉の随筆「贅沢貧乏」は大ファンなんですが、BLを芸術に高めたとされる「枯葉の寝床」。少年が弱々しくてね。描写も生々しくて(汗)主人公たちが食事する場面、ハムとかフランスパンの描写はとっても美味しそうだったんだけど(笑)

 

  あ、でも大島弓子の「つぐみの森」は良かったですねぇ。新撰組の土方と沖田が主人公の木原敏江「天まであがれ!」とかね。でも1番ハマったのが、青池保子の「エロイカより愛を込めて」世紀の怪盗エロイカと、それを追うNATOの軍人、エーベルバッハ少佐の虚々実々の駆引きを描いたコメディ🎵

 

  「ルパン三世」五右衛門のルパンに対する態度とかも好きですねぇ。余談ですが、この五右衛門のキャラって、ワタシの中学時代の二次元の恋人(笑)映画「七人の侍」(黒澤明監督)の剣豪・久蔵がモデルだとか。あの映画の中で、少年剣士(木村功)に慕われる久蔵。あの関係も今考えればブロマンスだったんだなぁ。

 

命ぎりぎりの状況の中で生まれる火花みたいな、それは味方同士の強烈な、友情を越えた情熱的なつながり、あるいは反対に、敵同士なんだけど、戦っていくうちに「敵ながらアッパレ」って相手に惚れちゃう…とか。

まさにブロマンスBromanceの世界!が好きなんだって自覚したんです。

 

  前置きが長くなりました(大汗)ゲイリー・オールドマンが長い俳優人生の中で初めてアカデミー賞にノミネートされた「裏切りのサーカスジョン・ル・カレの名高いスパイ小説三部作のうちの最初の1作で、元MI6(英国秘密情報部)のスパイ、ジョージ・スマイリー(演ゲイリー・オールドマン)が主人公。ル・カレは、実際にスパイ経験がある人で、実際のスパイの非情な、そして悲哀に満ちた世界が大変リアルに描かれています。なにせ英国政府は、1990年代まで秘密情報部の存在そのものも認めていなかった。映画の中で「戦争はまだ続いている。(スパイである我々が)体を張ってソ連の脅威から西側を守ってるんだ」というセリフがありますが、その裏で、どれだけ大勢のスパイたちが人知れず犠牲になったのでしょうか😢

 

  時は米ソ冷戦時代。当時MI6(サーカスとはMI6の別名として作者ル・カレが名付けた。ケンブリッジ・サーカスに本部があったから)では、重要情報がソ連側にダダ漏れしていることが疑われる事件が相次いでいた。米国からは「(情報垂れ流しの)水漏れ船」などとイヤミを言われ、MI6は「大英帝国の栄光よ、いまいずこ」状態。スマイリーはMI6の勢力争いに破れて引退したチーフの遺志(幹部の中に、2重スパイ「もぐら」がいるに違いない)を継いで、もぐらを突き止めようと動き始める。

 

  話始めると全てネタバレになりそうなんですが(笑)何しろ自分の命を賭けても報われない、無数のスパイたちの墓標が背後に見えるような映画で、そんなギリギリの状況の中で、男たちの火花が散るんです。まず、ソ連側の大物スパイ、通称「カーラ」が全ての黒幕ではあるんですが、スマイリーとは曰く因縁のある間柄。二人の間には、愛憎の絡み合う不思議な感情が存在します。

 

  スマイリーの腹心として働くMI6のピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)一歩間違えば職も命も失いかねない、資料室から重要書類を盗み出す極秘任務をスマイリーから命じられます。スマイリーを心から尊敬し、命を賭ける覚悟を決めたギラムに、スマイリーは「つかまっても私の名前は絶対に出すな」と冷酷な言葉を言い放ちます😢今は若きベテランの風格のベネ様ですが、この当時は青い情熱的な演技が初々しくて、ゲイリーの抑制のきいた、目の動きや手の動き一つでキャラを表現する老練さと好対照。二人の大ファンのワタシとしてはもう、このバディは最高で、いつまでも見ていたい❤️

 

  また、MI6の工作員ジム・プリドー(マーク・ストロング)は、幹部の一人であるビル・ヘイドン(コリン・ファース)を熱烈にプラトニックラブしてる設定。でも、その事実はセリフで語られるのと、ほんの一瞬、二人の視線が合って微笑み合う、たったそれだけ。余談ですが、スパイコメディ「キングスマン」でもこの二人共演してますね。絶対「裏切りのサーカス」のオマージュのような気がするなぁ。

 

  高村薫さんの「李欧」、「孤狼の血」の原作者柚月裕子さんの一連の小説、また吉田秋生さんの漫画「Banana Fish」なんて読むと、女性の中にもブロマンス愛好家っているんだなーって思いますね。

 

  「裏切りのサーカス」もぐらは誰か、というサスペンス要素に加えて、観客はその背後に潜む複雑な人間関係をも想像…いや、推理しなくてはならない。膨大な撮影フィルムの中から、編集でどんどん削っていって、ついには「観客も2度3度観ないと理解できない映画」になっちゃったらしい(笑)気に入った映画は何度も観るワタシには、全然アリですけどね😅

 

  「難解な、こじらせ映画&ブロマンス好き」そんな(おそらく)圧倒的少数のオタクにおススメの映画です(笑)