オタクの迷宮

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したたかに生きよ女たち~『人間失格 太宰治と3人の女たち』

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 見たい見たいと思っていながら、なかなかタイミングが合わなかったこの映画。いやー、面白かったっすよ❗男と女の駆け引きが(笑)…でも題名ね、どう考えても「三人の女たちと太宰治」でしょう。主役は野心溢れる三人の女たち。太宰の正妻(…って、こーゆー言い方可笑しいか😅)津島美知子に宮沢りえ。彼女の野心は、作家である夫に超名作を書かせること。太宰は、沢尻エリカ扮する没落華族の太田静子の日記を失敬して、ベストセラー「斜陽」を書き上げ、一躍文壇の寵児となります。しかし賢い美知子はそんなことはお見通し。斜陽の有名な言葉「人は恋と革命の為に生まれてきた」は、元はと言えば静子のセリフなのに、それをシャアシャアと口にして悦に入っている情けない夫。それまで一度も彼の作品を誉めたことがない美知子は、フラフラしている太宰に「名作が書けるなら、私たち家族を捨て、壊しなさいッ👹」と迫ります。おお、こわ~😮外面如菩薩内面如夜叉とはまさにこの事ぢゃああ。しかし映画に出てきた弟思いの長女は、後の津島佑子。夫だけでなく娘まで大作家に育て上げた美知子の豪腕。アッパレというほかありますまい。

 

  「人は恋と革命の為に生まれてきた」と高らかに宣言し、自ら太宰の子を出産する没落名家の娘、太田静子(沢尻エリカ)。あの戦後の時代、周囲の目をモノともせず、天真爛漫にその大事業をやってのける剛胆さよ。しかも文才があり、太宰に「斜陽」を書かせたミューズで、太宰の死後は「斜陽の思い出」を書いてチャッカリ稼ぐしっかり者。娘の治子も後に作家となります。この静子役、綺麗で可愛くて、沢尻エリカは演技の新境地じゃないでしょうか。

 

  そして「愛する男と一緒に死ぬ」というとんでもない野心を貫く為、いわば自分に注目を集めるために「死ぬ死ぬ詐欺😅」の太宰を、じわじわと真綿で締め上げるように追い詰め、ついに本願成就の戦争未亡人、スタコラさっちゃんこと山崎富栄(二階堂ふみ)。昔読んだマンガの中に、母性愛のかたまりで好きな男をくるんで溶かしちゃうナメクジの妖怪が出てきたけど、それ思い出したなー。宮沢りえと違う意味で怖いわー。玉川上水に飛び込む前にお互いに紐で手首を縛るんだけど「絶対にほどけない縛りかたを研究した」って、「今日は死ぬの止めようよぅ」とグズる太宰の手首をグイグイ締め上げる富栄…((( ;゚Д゚)))

 

  またねぇ、太宰がなぜそんな女たちのエモノ❓に選ばれたかって言ったら、もうねぇ、真底ニブチンで真底優しいダメ男くんなんだわ。またね、小栗旬が巧いです。彼の生来の、人の良さが滲み出て、情けないのに人たらしで憎みきれない愛すべきクズな太宰を好演しています。ワタシ自身は三人の女たちみたいに大それた野心家ではないので、太宰みたいなオトコには魅力感じませんけど(笑)

 

  助演も大変豪華。中でも坂口安吾役の藤原竜也三島由紀夫役の高良健吾💕大好きな作家二人をこの上もなく魅力的に演じてくれて、もう、オタクは本望でございます(笑)あ、あとまるで娼館の女主人さながらのバァのマダム、壇蜜姐さんが色っぽくてステキ😍さすが蜷川実花監督の、特に女優さんの選び方がね…趣味がいいの。

 

  藤原竜也演じる坂口安吾。「『斜陽』の太田静子は社会を捨てた女。それが描ききれないのはお前の筆力不足」と、太宰にズバリと斬り込むカミソリのような男。「文学とは自分を切り刻み、ハラワタを引き摺り出す解剖のようなもの。それが出来たら死んでも悔いはない」と言って憚らない悪魔の天才。突き抜けたオトコ気。うーん、やっぱり藤原竜也はカッコいいっす😍藤原竜也小栗旬が、盟友坂口安吾と太宰に扮して「ルパン」で酒杯を傾け合う…💕このシーンだけでもクラクラして眩暈がしそう(笑)

 

  高良健吾三島由紀夫もね、太宰の狡さ、弱さをなじりながら、「ホントはオレのこと好きなんだろ」と図星を指されて狼狽える三島の若い清廉な感じが良く出てましたねぇ。マッチョに取り憑かれる前は、学習院のいいとこ坊っちゃんだったんだものね、三島も😅でも、テキトーなようでいて鋭い太宰の一言は、後年の三島を考えると感慨深いですね。道化とヒロイズムという表出の違いこそあれ、そのハンパない自己愛の強さ、太宰と三島って鏡のように表裏一体だと思うから😅

 

  学校帰りのJKのお嬢さんたちが大勢いらしてました。三人の女たちをお手本にして、強くしたたかに、自由に生きてちょうだい(笑)

 

  そしてそして最後に流れる東京スカパラダイスオーケストラfeat.チバユウスケカナリア鳴く空」(2001年)❗実花監督が最初からこの曲をイメージしただけあって監督の極彩色のデカダンの世界にぴったりハマってます❗最後の最後に流れるので、映画が終わっても席を立たないでね(笑)

 

 
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