オタクの迷宮~映画と舞台と音楽と Chaos-α

変わり者よと言われても 今日もオタクで生きてゆく

ジャズピアノの詩人「ビル・エヴァンス~Time Remembered」


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  今横浜黄金町のミニシアター「ジャック&べティ」で開催されているジャズ映画祭。有名なジャズレコードレーベルであるブルーノートについてのドキュメンタリー「ブルーノート・レーベル ジャズを超えて」と、ジャズピアノの詩人と呼ばれ、未だ彼を超えるジャズピアニストは現れていないと言わしめたビル・エヴァンスのドキュメンタリー「タイム・リメンバード」が続けて上映されています。仕事帰りに「タイム・リメンバード」のみ観賞。 2本続けて4時間観てらっしゃるツワモノもけっこういらしたみたい😅

 

  ジャズピアノというと、個人的にはずっとビバップ(スウィングに飽きたらないジャズミュージシャンが、コードに沿いつつもアドリブで演奏する。時にはアドリブの方が主役になってしまう😅)が好きで、以前拙ブログでも取り上げましたバド・パウェル一辺倒だったワタシ。ジャズではピアノはずっと伴奏者の位置に甘んじていて、やはりサックスとかトランペットなどがスポットを浴びがちなんですが、バド・パウェルはその神業的超絶技巧でサックスのお株も奪っちゃう。ジャズ・セッション、オレサマ系のケンカ上等❗みたいなね。あとアドリブの帝王キース・ジャレットとか。…でも最近は、ビル・エヴァンスの、心に染みるような端正なピアノも 素晴らしいなぁ…って。アグレッシブなジャズではない、その真逆のお互いを生かすような競演。

 

  映画は当然のことながら、彼の作曲した珠玉のナンバー~「タイム・リメンバード」「ワルツ・フォア・デビー」「ブルー・イン・グリーン」「カインド・オブ・ブルー」「カンバセーション・ウィズ・マイセルフ」「フォア・ナネット」「ミザリー」等々…で彩られています。彼は生まれつきの天才で、小学生の頃からクラシックをはじめとして全ての譜面を読み、譜面の通り完璧に弾きこなしたと言われています。マッチョなビバップとは趣の全く異なる、端正でエレガントなエヴァンスのピアノ❤️その天才ぶりにいち早く気づいたのがあのジャズ界の巨人マイルス・デヴィスでした。彼のバンドに参加したエヴァンスは、めきめきと頭角を現します。いみじくも後年、このマイルス・デヴィスとエヴァンスのコンビネーションは、「天上の結婚式」と呼ばれました。

 

  しかしその華麗なる演奏とは裏腹に、彼の人生は壮絶極まりないものでした。弟か息子のように惚れ込んだベースのスコット・ラファロを25才の若さで事故で、10年同棲した恋人エレインや一卵性双生児のように仲が良く幼少期から励まし合って生きてきた兄ハリーを自殺で失い…。エヴァンス自身も、第二次世界大戦出征時に恐怖を忘れるために手を出し、抜けられなくなったヘロインやコカインの過剰摂取で身体はボロボロ…😢

 

  けれど、そんな荒んだ私生活はみじんも感じさせない彼の美しい演奏はどうしたことでしょう。あのバド・パウェルも晩年は薬物とアルコールに体を蝕まれますが、彼の場合は演奏にもその影響は顕著に表れ、中には聴くに耐えないバージョンもあるんです。ところが、エヴァンスの場合、肝臓がボロボロで全身に浮腫が出ている時の演奏も、全くその影響を感じさせない、音楽の神アポロンが奏でるかのごとき天上の調べ😿真の天才だったんですね…。歌手のトニー・ベネットのインタビュー「ビルは、いつも音楽に必要なものは美と真実だ、他には何も必要ないと私に言っていた。私はその言葉を頼りにここまでやって来た」が、しみじみ心に響きます。

 

 折しも今年はビル・エヴァンス生誕90周年。 これから深まる秋の夜長、しっとりと彼のピアノに耳を傾けてみませんか❔