1970年代後半のイギリス。大英帝国の栄光今いずこ、経済破綻に瀕する国家の常として、移民排斥、ヘイト主義が横行。国民戦線(British National Front=通称NF)と呼ばれる白人至上主義の極右政党が不気味に勢力を伸ばしはじめていました。NFのイヤらしい所は、大学や高校で『布教活動』をし、若者の閉塞感や不満を煽ってシンパを増やす作戦に出たこと。それは警察権力を巻き込み、国会議員までもが「移民たちを拘束して母国に追い返してやる。18世紀の流刑みたいにね。そのほうが彼らも喜ぶだろ」と、TVのインタビューで公言するような由々しい事態に。
しかし、英国に根付くリベラリズムはそれに飲み込まれ、沈んでしまうことはなかった❗初めはほんの一握りの若者たちが、音楽やポップカルチャーの発信を通じて立ち上げた、人種差別撤廃を主張する運動“ロック・アゲインスト・レイシズム” 略称: RAR) 。それはやがて英国全土の若者たちを巻き込み、一大ムーブメントとなって1978年4月30日、約10万人による世紀の大行進、圧巻の音楽フェスティバルへと繋がっていきます。
当時のリーダーの言葉「初めは自分自身の心の中にも、自分たちの豊かさの為には、植民地から搾取しても仕方がないという帝国主義が存在していた。RARの運動は、そんな自分たち自身に対する暴動でもあるんだ」が胸に刺さります。
RARの活動の素晴らしいところは、当時黒人と見ると「暴動を意図した悪意ある徘徊」として無差別に逮捕し、たとえ無罪になっても何年も拘留するような国家権力の横暴に対して暴力で反撃するのではなく、音楽や文化を武器にして戦ったところ。パンクロックバンドやレゲエミュージシャンに声をかけ、繰り返しライブを開催、そこに人種差別や移民排斥撤廃のポスターを貼り、小冊子を置いて、若者の賛同者を徐々に増やしていったのです。クラッシュも伝説の10万人ライブの前に、NFの本部の前でプラカード持って抗議行動に出るんだけど、「手に持って上に上げるとカッコ悪いから、下に下げとく」って言って地面に下ろして持ってるとこが…なんか、可愛いかった(笑)
時に命の危険に晒されながらも、リベラリズムの為に立ち上がったきら星のごときミュージシャンたち…トム・ロビンソン、エイリアンカルチャー、シャム69、ミスティインルーツ、スティール・パルス❗そしてこのドキュメンタリーは、先に述べた10万人ライブ、当時セックス・ピストルズと並ぶパンクロックの雄、ザ・クラッシュの登場によって最高潮に達します。不揃いな歯並を剥き出しにして歌い、叫び、跳ぶジョー・ストラマー❗
権力はすべて金持ちの奴らの手の内
臆病で 挑戦することさえできずに
俺たちが通りを歩いてる間
それを買う金を持ってる奴だけが権力を握る
(ザ・クラッシュ~白い暴動)
混沌とした世の中でこそ、自身で考え、声をあげることの大切さを知ってもらいたい。たとえ自分一人だったとしても、声をあげることで仲間を見つることが出来る。共に行動し、乗り越えられるから
(監督・ルビカ・シャー)
監督のコメントが全てを物語る、BFIロンドン映画祭2019 で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞、第 70 回ベルリン国際映画祭「ジェネレーション部門14plus」で、スペシャルメンション賞準グランプリを受賞した秀作です😊
“ロック・アゲインスト・レイシズム”に迫った音楽ドキュメンタリー『白い暴動』映画館休館による<緊急>オンライン上映|UPLINK @uplink_jp #note #おうち時間を工夫で楽しく https://t.co/uNvz2Uc36T pic.twitter.com/UqPaDzgMTl
— UPLINK (@uplink_jp) 2020年4月22日