WOWWOWにて、2014年メトロポリタン歌劇場の『ラ・ボエーム』放映❗(本日)…これ、曰く付きの公演回なんですよね。
プッチーニの作品の中でも特に人気の高い作品で、METでも上演回数は群を抜いているそうです。時は1830年代のパリ、カルチェ・ラタン。貧しい芸術家のタマゴたちが、自分たちの才能を信じて切磋琢磨していた時代。(ラ・ボエームとはボヘミアンという意味で、当時パリで根なし草のような生活を送っていた若い芸術家たちを指します)売れない詩人のロドルフォと、不治の病に冒された貧しいお針子ミミの悲恋物語です。
このオペラ、その後さまざまな作品をインスパイアしたようで、本日WOWWOW放送時のナビゲーター、宮本亜門さんも仰っていましたが、2001年のミュージカル映画『ムーランルージュ』(主演 ニコール・キッドマン、ユアン・マクレガー…当時のキッドマン、夢のように綺麗でしたよね😍)は、このオペラがベースになっています。また、個人的にヲタクが好きなシャンソンに、その名もズバリ『ラ・ボエーム』という作品があるのですが(歌 シャルル・アズナブール)、「画家とモデルの恋人同士、1日おきにしか食事ができなかった…」とか、「僕たちはストーブの回りに集まって、冬の寒さも忘れて詩を朗唱したものだった」なんて下りは、プッチーニのオペラの場面そのままです😊
ヒロインのミミ役、本来はアニタ・ハーティッグが務める予定でしたが、前日になってインフルエンザで倒れてしまい、急きょクリスティーネ・オポライス(ラトビア生まれのソプラノ歌手)が代役に抜擢されました。オポライス、なんとその前日、同じプッチーニの『蝶々夫人』のタイトルロールを演じたばかり(それも彼女にとっては初役)。当日の朝の電話で代役が決まって、しかもその数時間後のマチネ出演❗😮聞いただけでも怖くて卒倒しそうです😅すごいなぁ…。プロ意識ここに極まれり。
おそらく指揮者のマエストロも、相手役のルドルフォ役ヴィットリオ・グリゴーロも、いやMETの関係者全員が緊張と不安に固唾を飲んで見守っていたのでしょうが、オポライスは、素晴らしく伸びやかな歌唱で見事代役を果たしました❗
(彼女はブロンドの美人歌手で、笑顔がちょっとニコール・キッドマンに似ています😊)
お客さんのほうもね、ちゃんと事情がわかっているから、第1幕のアリア『冷たい手を』(ロドルフォがミミの手に偶然触れ、「なんて冷たい手だ。僕に温めさせて…」と歌う)、そしてオポライスの『我が名はミミ』(「君のことを教えて」と言うロドルフォに、ミミが自分の慎ましやかな日常について歌うアリア)からもうすでに、カーテンコール時のようなやんやの拍手喝采😊会場全体が一体になった瞬間に、見ているこちら側も胸が熱くなりました。
演出はご存知、フランコ・ゼフィレッリ❗先日の『トゥーランドット』の記事でもちょっと触れましたけど、METの最新の舞台装置を駆使した、「豪華絢爛」という言葉が相応しい舞台。彼の場合人海戦術もハンパなく、この時の出演者の数はゆうに100人を超えていたそうです😅
ライブビューイングの日程は以前から決まっていたんでしょうから、こうやってハーティッグではなくオポライスのミミが永遠に映像に残されることになったのもまた、運命のなせるわざ。当時は新進のソプラノ歌手だったオポライスは見事、のちのディーバへ至るチャンスを掴んだのです。
…そんな不思議な巡り合わせに思いを馳せ、芳醇なプッチーニの世界に浸れる幸せをしみじみとかみしめた今日のヲタクなのでした😊